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7 魔王と聖者と浄化の旅
7ー4 特別な日ですか?
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7ー4 特別な日ですか?
そこは、酒だけでなく食事も提供している様で僕らが店のすみのテーブルにつくと店の犬の獣人らしい女の子がすぐに肉ののった皿と酒を運んできた。
それは、いい匂いがする焼いた獣の肉と、肉と野菜を煮込んだスープのようだた。
「マッドボアの黒胡椒焼きとシチューです」
マッドボアというのは、たしか巨大な猪のような魔物だ。
僕は、街暮らしだったので魔物の肉は初めてだったが、辺境に暮らしていたロイや騎士団の面々は、うまそうに肉に食いついていた。
ロイは、ためらっている僕に声をかけた。
「食べてみろ、ラムダ。うまいぞ」
僕は、骨のついた肉を一つ手に取るとおっかなびっくり噛りついた。
「おいしい!」
肉は、思ったほど臭みはなくて柔らかく、ぴりっと黒胡椒がきいていてすごくおいしかった。
僕は、朝からほとんど何も食べていなかったので夢中でかぶり付いていた。
「このハチミツ酒もなかなかいけますよ」
ルドさんがコップを差し出したので僕は、受け取ると一口飲んだ。
それは、甘くて喉ごしがいい酒だった。
僕は、喉が乾いていたのでごくごくと一気に飲み干した。
「おい!あまり無茶をするなよ、ラムダ」
ロイが慌てて止めようとするのに僕は、ペロッと唇を舐めた。
「平気だよ、ロイ」
すると、隣の席に座っていたオークの客が僕には声をかけてきた。
「いい飲みっぷりだね、あんた」
オークは、僕の空になったコップに持っていた瓶の中に入っていた酒を注ぐとっ笑った。
「飲みな!今日は、特別な日だからな」
「特別な日?」
「ああ」
オークは、豪快に笑い声をあげた。
「聖者が街にやってきたのさ」
僕らは顔を見合わせた。
「聖者って?」
ロイがオークの客に訊ねた。
オークは、ふん、と鼻を鳴らした。
「お前たち、知らないのか?」
オークたちの話によると昨日、突然現れた聖者の一行が街の井戸の水を浄化したのだという。
「こんな話、伝説でしかきいたことねぇし、びっくりしたぜ」
オークが語った。
「まさか、聖者様なんてものが実際にいるとはな」
「その聖者様は、今、どこにいるんだ?」
ロイは、オークの杯にハチミツ酒を注ぎながらきいた。
オークは、ご機嫌で答えた。
「ああ?今は、この要塞の主、イグルト様のところに招かれているよ」
要塞の主、イグルト?
その名をきいてロイの顔色が変わった。
「魔王軍の四天王が1人、戦鬼イグルド、か?」
そこは、酒だけでなく食事も提供している様で僕らが店のすみのテーブルにつくと店の犬の獣人らしい女の子がすぐに肉ののった皿と酒を運んできた。
それは、いい匂いがする焼いた獣の肉と、肉と野菜を煮込んだスープのようだた。
「マッドボアの黒胡椒焼きとシチューです」
マッドボアというのは、たしか巨大な猪のような魔物だ。
僕は、街暮らしだったので魔物の肉は初めてだったが、辺境に暮らしていたロイや騎士団の面々は、うまそうに肉に食いついていた。
ロイは、ためらっている僕に声をかけた。
「食べてみろ、ラムダ。うまいぞ」
僕は、骨のついた肉を一つ手に取るとおっかなびっくり噛りついた。
「おいしい!」
肉は、思ったほど臭みはなくて柔らかく、ぴりっと黒胡椒がきいていてすごくおいしかった。
僕は、朝からほとんど何も食べていなかったので夢中でかぶり付いていた。
「このハチミツ酒もなかなかいけますよ」
ルドさんがコップを差し出したので僕は、受け取ると一口飲んだ。
それは、甘くて喉ごしがいい酒だった。
僕は、喉が乾いていたのでごくごくと一気に飲み干した。
「おい!あまり無茶をするなよ、ラムダ」
ロイが慌てて止めようとするのに僕は、ペロッと唇を舐めた。
「平気だよ、ロイ」
すると、隣の席に座っていたオークの客が僕には声をかけてきた。
「いい飲みっぷりだね、あんた」
オークは、僕の空になったコップに持っていた瓶の中に入っていた酒を注ぐとっ笑った。
「飲みな!今日は、特別な日だからな」
「特別な日?」
「ああ」
オークは、豪快に笑い声をあげた。
「聖者が街にやってきたのさ」
僕らは顔を見合わせた。
「聖者って?」
ロイがオークの客に訊ねた。
オークは、ふん、と鼻を鳴らした。
「お前たち、知らないのか?」
オークたちの話によると昨日、突然現れた聖者の一行が街の井戸の水を浄化したのだという。
「こんな話、伝説でしかきいたことねぇし、びっくりしたぜ」
オークが語った。
「まさか、聖者様なんてものが実際にいるとはな」
「その聖者様は、今、どこにいるんだ?」
ロイは、オークの杯にハチミツ酒を注ぎながらきいた。
オークは、ご機嫌で答えた。
「ああ?今は、この要塞の主、イグルト様のところに招かれているよ」
要塞の主、イグルト?
その名をきいてロイの顔色が変わった。
「魔王軍の四天王が1人、戦鬼イグルド、か?」
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