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8 恋か、愛か

8ー3 異変

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 8ー3 異変

 その女は、めちゃくちゃ強かった。
 過去に二人の魔族を倒してきた俺がローエルタールを携えてもまだ敵わない。
 しかも、5回目に俺が死んだ辺りでその魔族の女は、首を傾げた。
 「おかしい。もう、とっくにお前は、死んでいる筈なのになぜ、生きている?」
 女は、俺を更衣室の壁に縫い付けてまじまじと俺のことを見つめた。
 「よくはわからんが、私は、お前を殺した。しかも、一回ではない。もう何度も私はお前を殺しているような気がする」
 女は、俺の顎に指をかけて俺の顔を覗き込んだ。
 「お前は、なんの力を隠し持っている?」
 こんなことを言い出した者は、初めてだから俺は、どうするべきか考えていた。
 この女は、俺の力にどこまで気づいているんだ?
 俺が考えていると女は、口をがばっと開いて俺の右肩にその鋭い牙で食らいついてきた。
 痛みに俺は、意識が飛びそうになるのを堪えていた。
 女は、俺の肩を食いちぎった。
 くちゃくちゃ肉を食みながら女は、目を細めた。
 俺は、死にかけていた。
 死ねば、もう一度、リトライできる。
 次こそは、この女を倒せるかもしれない。
 だが。
 女は、死にかけた俺に自分の魔力を分け与えて命を繋ごうとした。
 「な、にを・・」
 「喜ぶがいい」
 その女がにぃっと不気味に笑った。
 「お前を私の夫にしてやろう」
 はい?
 俺は、女の言葉の意味がわからなかった。
 夫?
 どういうことだ?
 俺は、女を睨んだ。
 「お前のものになるぐらいなら死を選ぶ」
 「いや、もう、これ以上は死なせない」
 女が裂けた口で笑った。
 その魔族は、俺の頬を分厚い舌でぺろりと舐めた。
 「私は、な。ずっと探していたんだよ。死なない男を」
 女が語った。
 「私が何をしても死なない男を、な。お前は、私の理想の男、だ」
 「り、そう?」
 俺が霞んできた目でぼんやりとその女を見ていたら、女は、俺の唇にしゃぶりついてきた。
 気持ちが悪い。
 俺は、女の唇が離れると嘔吐していた。
 女が声をあげて笑った。
 「これぐらいのことに耐えられないでどうする。我が夫となればさらにその身に我を刻み付けられるのだからな」
 
 
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