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6 聖者なんかじゃありません!
6ー4 神殿からの使者(2)
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6ー4 神殿からの使者(2)
翌日、俺は、エルガーナ辺境伯邸の応接室で神殿からの使者と会っていた。
当然のように母上と父様も一緒に立ち会ってくれた。
神殿からの使者は、若い金髪の神官でバイオレット・フォル・ローティルという名の女だった。
彼女は、俺に魔力を測定するための魔道具を差し出した。
それは、透明な水晶玉のようなものだった。
「この玉にあなたの魔力を注ぎ込んでもらえますか?」
俺は、受け取った水晶玉を両手に持つとそれに魔力を注入した。
水晶玉は、最初青く輝いていたがしばらくして弾けとんだ。
割れた水晶玉の破片が飛んでバイオレットの頬に小さな傷ができた。
「あっ、すみません」
俺は、謝るとバイオレットに治癒の魔法をかけた。
白い光に包まれたバイオレットの頬の傷はあっという間に消えてしまった。
バイオレットは、自分の頬に指先で触れると俺に微笑んだ。
「すごい!こんなに簡単に傷を癒せるなんて!」
「まさか、本当に治癒魔法が使えるとは!」
母上が考え込んだ。
父様が俺の肩に手を置いて神官に訊ねた。
「でも、治癒魔法といってもほんの弱い魔法なのでは?」
「弱くても治癒魔法は、治癒魔法です。治癒魔法使いは、みな、神殿の管理下に入っていただくことになります」
バイオレットの言葉に母上が声をあげる。
「しかし、オルナムは、このエルガーナ辺境伯家の跡取りですし、なによりまだ魔法学園の学生です。もう少し、猶予を与えていただけませんか?」
「もちろん、神殿もオルナム殿に無理強いするつもりはありません。しかし、治癒魔法使いであるということは、それだけで危険なことでもあるのです」
バイオレットが応じた。
「事実、オルナム殿は、何者かに襲われたそうではないですか」
「それは、そうですが」
俺が反論しようとするとバイオレットがそれを遮った。
「あのときの犯人は、異国の奴隷商人でした。治癒魔法使いとしてのオルナム殿を商品として高値で他国に売ろうとしていたのです」
マジですか?
俺は、驚いていた。
騎士団ですらまだ、首謀者を掴めていなかったのにすでに神殿は、犯人を突き止めていたのか?
バイオレットは、母上に畳み掛けた。
「このままだとまた、同じようなことが起こるかもしれません。神殿なら、ご子息の安全を保証できます」
翌日、俺は、エルガーナ辺境伯邸の応接室で神殿からの使者と会っていた。
当然のように母上と父様も一緒に立ち会ってくれた。
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彼女は、俺に魔力を測定するための魔道具を差し出した。
それは、透明な水晶玉のようなものだった。
「この玉にあなたの魔力を注ぎ込んでもらえますか?」
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「あっ、すみません」
俺は、謝るとバイオレットに治癒の魔法をかけた。
白い光に包まれたバイオレットの頬の傷はあっという間に消えてしまった。
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「すごい!こんなに簡単に傷を癒せるなんて!」
「まさか、本当に治癒魔法が使えるとは!」
母上が考え込んだ。
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「事実、オルナム殿は、何者かに襲われたそうではないですか」
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マジですか?
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