聖女なんかじゃありません！～異世界で介護始めたらなぜか伯爵様に愛でられてます～

18 人生はさんまの味

18ー10 ジャッシュ

　18ー10　ジャッシュ

　その翌週のことだ。
　わたしが授業に向かうとジャッシュの姿がなかった。
　「ジャッシュは？」
　「しばらく前から休学してます」
　カティが答えた。
　休学？
　あの超がつくほど真面目なジャッシュが？
　わたしは、なんだが胸騒ぎがしていた。

　放課後、わたしは、ジャッシュの家庭訪問をすることにした。
　なぜか、シーラさんがついてきたのだが気にしない。
　ジャッシュは、学園の寮には入っていなかった。
　たぶん、二人暮らしになることが多いというばあちゃんのためだろうな。
　だが、ジャッシュの住む下町まではかなりの距離があった。
　「また、騙された・・・」
　わたしは、ひいふういいながら歩いていった。
　シーラさんが苦笑していた。
　「だから、無理せずに馬車を雇おうって言ったのに」
　「だって、ジャッシュがいつも歩いて来るっていってたからさ」
　わたしが恨めしそうに見上げるとシーラさんがふっと鼻で笑った。
　「若い子と同じように考えちゃだめよ、トガー」
　確かにな！
　王城の近くから緩やかな坂道を下っていくと徐々に生活感が見えてくるようになる。
　商人たちの小さな店が並び、それと同じように古びた長屋のような家々が並んでいる。
　その辺りは、どうやら一般的な平民たちが暮らす地区のようだ。
　道には、遊んでいる子供たちの群れが駆け回り、通りの端にある井戸には、水を汲む人々の姿があった。
　「この辺の住人の中には、水魔法が使えない人たちも多いからね」
　シーラさんが説明してくれる。
　「火魔法は、魔道具もあるけど、水魔法は魔道具があまりないから」
　なるほど。
　わたしは、帰ったらすぐにラーズさんに指示を出すようにすることにした。
　必要なら開発すれば売れるはずだし。
　通りをしばらくいくと、ジャッシュの家はあった。
　外れそうになっているドアをそっとノックするが返事がない。
　「ジャッシュ？」
　呼び掛けるが誰も出てこない。
　うん。
　嫌な感じだ！
　「ルゥ！」
　わたしは、ルゥの名を呼んだ。
　ルゥは、すぐにやってきた。
　「ちょっと中を見てきてくれる？」
　「らじゃ！」
　ルゥは、空中を飛んですぅっと建物の中へと消えた。
　少し待っていると、ガタン、と音がして玄関のドアが開いた。
　ルゥだった。
　「トガー、なんかまずい感じだよ。様子が変だ」
　わたしは、急いで中へと駆け込んだ。