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14 忘却と罪

14ー4 タリアさんの望む未来

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 14ー4 タリアさんの望む未来

 「タリアも帰ってきたら社交界デビューかしら。楽しみね、レイア」
 王妃様の言葉にレイアさんは、首を左右に振った。
 「あの子は、ここには帰ってきませんわ、アリアンナ」
 「なんですって?」
 王妃様が驚いたようにレイアさんに訊ねた。
 「なぜ?どうしてタリアが帰ってこないなんて」
 「ここに来る前にタリアが私に言ったのです。自分は、本当なら死ぬはずだったのに新しい命をいただいた、と」
 レイアさんは、少し寂しげにため息をついた。
 「あの子は、フェブリウス領の治療院で働くつもりです」
 はい?
 わたしも王妃様と同じくハトマメ状態だった。
 初めてきく話だった。
 「ま、本当ですか?レイアさん?」
 わたしが訊ねるとレイアさんが頷いた。
 「本当ですわよ、トガー様。あの子は、もう、私たちだけのかわいい娘ではなくなってしまったんです」
 レイアさんが静かに微笑む。
 「あの子は、トガー様のようにみなのために役立ちたいと決意したんです」
 マジですか?
 それから、レイアさんと王妃様とわたしは、何人もの人々に囲まれて話の中心にいることになった。
 わたしは、レイアさんのことが心配でちらちらと様子を観察していた。
 レイアさんは、まったく普段と変わることなく社交の場でにこやかに過ごしている。
 わたしは、今のうちにレイアさんの部屋を片付けるようにメイドたちに指示を出していた。
 だが、さっきまでとは別人のレイアさんにわたしは、首を傾げていた。
 一時的にでもレイアさんが発狂したとは思えない。
 では、あのタリアさんがどうとかいうのは、一体なんだったのか?
 考えられる原因はいくつかあったが、わたしは、これをレイアさんの作話だと判断した。
 レイアさんは、嘘をついている。
 それも、自分自身をも騙す類いの嘘だ。
 こういう状況をわたしは、何度も見たことがあった。
 主に認知症の患者さんを相手しているときにな。
 しかし。
 レイアさんが認知症?
 そんなこと。
 だが、レイアさんはああ見えても実は100才近い年齢だと言うし、あり得ないことではない。
 
 
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