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13 婚約とドレスと女の戦い(2)
13ー9 愚者の聖女
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13ー9 愚者の聖女
「やはり、君には、見えているんだね?トガー」
わたしと二人っきりになったそれは、わたしにお茶を入れながらにやりと笑った。
わたしは、急遽、ラーズさんに船から降りるようにと頼んだ。
理由は、いえない。
ただ、船から出てほしい。
こんなあいまいな要領を得ない頼みをラーズさんは、すぐに了承して船から出ていった。
わたしは、その白髪の精霊に渡された白磁のカップを受け取りその精霊を睨んだ。
「どういうつもりだ?」
「どういう、とは?」
その精霊は、わたしに 訊ねた。
わたしは、ちらっとそいつを見た。
それは、大きな白い翼を持った白髪の美しい男だった。
少し線の細い感じのする、男というよりも少年という方が近いかも。
その白衣の男は、わたしにイシスと名乗った。
「この船の真の持ち主となりうる者がこの世界には現れたのはかれこれ300年ぶりだな」
イシスは、わたしと向かい合ってソファに腰をおろした。
「前に来た聖女のお愛様のこと、きいてる?」
「そんなの知らねぇし!」
「そうなの?」
イシスは、見下すようにわたしを見つめた。
「君は、自分のことには興味がないわけ?これからどうなっちゃうのか、とかさ」
「どうなるってんだよ?」
わたしがきくとイシスは、答えた。
「君は、新しい聖女として女神の教団のリーダーとなり人々を導くことになる。正しい方向へね」
「却下だな」
わたしは、冷たく言い放った。
「わたしには、やりたいこともあるし、やらなきゃいけないこともある。とてもじゃないが、このうえ女神の教団の活動までは無理だ」
「暇じゃないってこと?」
イシスは、すぅっと目を細めた。
「それって女神を敵にまわすってことかな?」
「そんなことはいってないし」
わたしがイシスの方を見ると、イシス満面の笑顔を浮かべていた。
「よかった!君がバカじゃないってわかって。てっきり君は、愚者の聖女になるつもりかと思って心配してたんだよ、トガー」
「愚者の聖女?」
「ああ」
イシスは、わたしの前に身を乗り出してわたしを覗き込んだ。
「前の聖女であるお愛様みたいに一部の人間たちのために命を捨てるようなタイプの聖女ってことだよ」
はい?
わたしは、ほげっとイシスを見ていた。
どうやらお愛様とやらは、女神の気に入らないタイプの人だったらしい。
「お愛様って何をしたわけ?」
突然、興味を示したわたしにイシスは、ぎょっとしながらも話し出した、
「愚者の聖女 お愛様は、かつてこの船の持ち主でもあった人物だが、本当にいろいろ手を焼かせられたよ。その頃は、世界の全ては女神の統率のもと精霊たちの力を使ってコントロールされていた。人々も、もっと幸福だったし豊かだった。それをお愛様は、破壊した。そのせいで世界は、こんなにも衰退してしまった」
「やはり、君には、見えているんだね?トガー」
わたしと二人っきりになったそれは、わたしにお茶を入れながらにやりと笑った。
わたしは、急遽、ラーズさんに船から降りるようにと頼んだ。
理由は、いえない。
ただ、船から出てほしい。
こんなあいまいな要領を得ない頼みをラーズさんは、すぐに了承して船から出ていった。
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「どういうつもりだ?」
「どういう、とは?」
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イシスは、わたしと向かい合ってソファに腰をおろした。
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「そんなの知らねぇし!」
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イシスは、見下すようにわたしを見つめた。
「君は、自分のことには興味がないわけ?これからどうなっちゃうのか、とかさ」
「どうなるってんだよ?」
わたしがきくとイシスは、答えた。
「君は、新しい聖女として女神の教団のリーダーとなり人々を導くことになる。正しい方向へね」
「却下だな」
わたしは、冷たく言い放った。
「わたしには、やりたいこともあるし、やらなきゃいけないこともある。とてもじゃないが、このうえ女神の教団の活動までは無理だ」
「暇じゃないってこと?」
イシスは、すぅっと目を細めた。
「それって女神を敵にまわすってことかな?」
「そんなことはいってないし」
わたしがイシスの方を見ると、イシス満面の笑顔を浮かべていた。
「よかった!君がバカじゃないってわかって。てっきり君は、愚者の聖女になるつもりかと思って心配してたんだよ、トガー」
「愚者の聖女?」
「ああ」
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「前の聖女であるお愛様みたいに一部の人間たちのために命を捨てるようなタイプの聖女ってことだよ」
はい?
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どうやらお愛様とやらは、女神の気に入らないタイプの人だったらしい。
「お愛様って何をしたわけ?」
突然、興味を示したわたしにイシスは、ぎょっとしながらも話し出した、
「愚者の聖女 お愛様は、かつてこの船の持ち主でもあった人物だが、本当にいろいろ手を焼かせられたよ。その頃は、世界の全ては女神の統率のもと精霊たちの力を使ってコントロールされていた。人々も、もっと幸福だったし豊かだった。それをお愛様は、破壊した。そのせいで世界は、こんなにも衰退してしまった」
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