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9 Shall We Dance?(2)

9ー4 お任せあれ!

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 9ー4 お任せあれ!

 その蜘蛛女は、慌ててわたしの口許を押さえた。
 『止めなさいな!あなたの他の人間たちにはわたしたちの姿は見えていないのだから』
 はい?
 わたしは、ぐるりと周囲を見回した。
 「どうしたの?トガー」
 心配そうにわたしのことを覗き込むエミリアさんとライザ。
 ジェイムズさんは、きょろきょろと辺りを見回していた。
 「何もいませんよ、トガー」
 振り向いたジェイムズさんの肩の上に大きな蝶の羽を持つ少女がちょこんと腰かけている。
 『待っていたわよ、こん世の聖女よ』
 はいぃっ?
 わたしは、蜘蛛女に口許を押さえられたまま悲鳴をあげ続けていた。
 『ちょっと、静かにしなさいな、精霊女王!』
 困惑しているらしい蜘蛛女にかまわず蝶娘は、話を続けた。
 『あなたは、我らに何を望む?』
 『さあ、言ってごらんなさいな!あなたの望みを!』
 蜘蛛女が自棄になったようにわたしにきいた。
 いや。
 手を離してくれないと話しもできないって!
 はっと気づいた蜘蛛女が手を離した。
 わたしは、迷わずに声をあげた。
 「ぎやぁぁああぁっ!!!」
 慌てた蜘蛛女が再びわたしの口をふさいだ。
 『ちょっと!この子、おかしいわよ?

 蜘蛛女が言うのに、蝶娘が首を傾げる。
 『変ねぇ』
 しばらく、わたしたちは、身動きもとれずにその場にかたまっていた。
 「トガー、出発するわよ!」
 業を煮やしたエミリアさんが歩き出したのでわたしもその後をついて歩きながらちらっと横目で自分の口許を押さえている蜘蛛女を睨み付ける。
 蜘蛛女は、ふわふわと空中を浮遊しながらわたしの口許を押さえて、ちらちらと蝶娘をうかがっていた。
 『ちょっと、どうにかしてよ!』
 『どうにかって』
 蝶娘は、ふかふかと飛びながらわたしのことを困ったように眺めてきいた。
 『もう、騒がない?』
 わたしは、頷いた。
 すると、蜘蛛女はホッとしたようにわたしの口許から手を離した。
 『やっと、落ち着いたようだわね、聖女よ』
 蜘蛛女に話し掛けられてわたしは、そっと小声で呟く。
 「なんだよ?あんたたちは」
 『わたしたちは、このダンジョンを司る精霊よ』
 蝶娘がわたしの肩に止まった。
 『この度、長らく待っていた聖女であるあなたが来たのでこうしてお迎えしているのです』
 『なんでも我らに命じなさいな!』
 蜘蛛女がなぜかうきうきした様子で命じてきた。
 『さあ、さあ!』
 「わたしは」
 わたしは、小声で囁く。
 「このダンジョンをさくっと攻略してしまいたいんだよ!」
 『ほう!』
 『お任せあれ!』
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