48 / 230
4 地獄の淵で
4ー7 ご褒美ですか?
しおりを挟む
4ー7 ご褒美ですか?
屋敷に戻るとわたしたちを使用人たちが並んで出迎えてくれた。
「お帰りなさいませ、ご主人様」
口々に彼らは、そう言いお辞儀をする。
その様子を満足げに見つめていたジェイムズさんがご主人様のそばへと歩み寄る。
「お帰りなさいませ、旦那様」
声が微かに震えている。
「夕食の準備ができておりますが、いかがなさいますか?」
「ああ、すまない、ジェイムズ」
ご主人様は、そんなのいつものことみたいな態度で偉そうに答える。
「外で食べてきてしまった」
「そうでございますか」
感極まったジェイムズさんがそっと横を向いてポケットから取り出したハンカチで鼻をかんだ。
「失礼いたしました。少し風邪をひいてしまいまして」
「そうか」
ご主人様が微笑んだ。
「体をいとえよ、ジェイムズ」
「はっ、ありがとうございます、マクシミリアン様」
部屋へと戻ったご主人様をベッドの上に移乗して体を清めてから夜着に着替えさせるとわたしは、食堂へと向かった。
ライザをわたしの部屋へと運んで寝かせてくれたジェイムズさんと合流してしまう。
わたしたちは、あたりさわりのない世間話をしながら食堂まで歩いた。
「街はどうでしたか?トガー様」
「うん。知らないな」
わたしが答えるとジェイムズさんが何か問いたげにこちらをうかがってくるのでわたしは、ため息をついた。
「わたしは、街には行けなかったんだよ。治療院の見学してたから」
「それでは、いったいご主人様はどなたと街へ行かれたのでございますか?」
ジェイムズさんがきいてくるのでわたしは、答えた。
「ロブさんとライザだけど」
「そうなのですか?」
ジェイムズさんがまたハンカチを出して目尻を押さえる。
「申し訳ございません。目にゴミが入ってしまって」
マジですか?
わたしは、そっぽを向いて歩きながら思っていた。
執事も大変だな。
食堂にいって席につくとサラさんが夕食を出してくれた。
「ええっ?」
出された料理にわたしは驚いていた。
これは!
それは、数週間前にわたしがひそかに出入りの商人から仕入れていた米を炊いて握っただけの塩にぎりだった。
「なんで?」
「あんたが時々、夜中にこれを作ってるのを見かけたからね」
サラさんがにっこりと微笑んだ。
「ちょっとしたご褒美みたいなもんさ」
屋敷に戻るとわたしたちを使用人たちが並んで出迎えてくれた。
「お帰りなさいませ、ご主人様」
口々に彼らは、そう言いお辞儀をする。
その様子を満足げに見つめていたジェイムズさんがご主人様のそばへと歩み寄る。
「お帰りなさいませ、旦那様」
声が微かに震えている。
「夕食の準備ができておりますが、いかがなさいますか?」
「ああ、すまない、ジェイムズ」
ご主人様は、そんなのいつものことみたいな態度で偉そうに答える。
「外で食べてきてしまった」
「そうでございますか」
感極まったジェイムズさんがそっと横を向いてポケットから取り出したハンカチで鼻をかんだ。
「失礼いたしました。少し風邪をひいてしまいまして」
「そうか」
ご主人様が微笑んだ。
「体をいとえよ、ジェイムズ」
「はっ、ありがとうございます、マクシミリアン様」
部屋へと戻ったご主人様をベッドの上に移乗して体を清めてから夜着に着替えさせるとわたしは、食堂へと向かった。
ライザをわたしの部屋へと運んで寝かせてくれたジェイムズさんと合流してしまう。
わたしたちは、あたりさわりのない世間話をしながら食堂まで歩いた。
「街はどうでしたか?トガー様」
「うん。知らないな」
わたしが答えるとジェイムズさんが何か問いたげにこちらをうかがってくるのでわたしは、ため息をついた。
「わたしは、街には行けなかったんだよ。治療院の見学してたから」
「それでは、いったいご主人様はどなたと街へ行かれたのでございますか?」
ジェイムズさんがきいてくるのでわたしは、答えた。
「ロブさんとライザだけど」
「そうなのですか?」
ジェイムズさんがまたハンカチを出して目尻を押さえる。
「申し訳ございません。目にゴミが入ってしまって」
マジですか?
わたしは、そっぽを向いて歩きながら思っていた。
執事も大変だな。
食堂にいって席につくとサラさんが夕食を出してくれた。
「ええっ?」
出された料理にわたしは驚いていた。
これは!
それは、数週間前にわたしがひそかに出入りの商人から仕入れていた米を炊いて握っただけの塩にぎりだった。
「なんで?」
「あんたが時々、夜中にこれを作ってるのを見かけたからね」
サラさんがにっこりと微笑んだ。
「ちょっとしたご褒美みたいなもんさ」
21
お気に入りに追加
756
あなたにおすすめの小説
大草原の小さな家でスローライフ系ゲームを満喫していたら、何故か聖女と呼ばれるようになっていました~異世界で最強のドラゴンに溺愛されてます~
うみ
ファンタジー
「無骨なドラゴンとちょっと残念なヒロインの終始ほのぼの、時にコメディなおはなし」
箱庭系スローライフが売りのゲームを起動させたら、見知らぬ大草原に!
ゲームの能力で小屋を建て畑に種を撒いたりしていたら……巨大なドラゴンが現れた。
「ドラゴンさん、私とお友達になってください!」
『まあよい。こうして言葉を交わすこと、久しく忘れておった。我は邪黒竜。それでも良いのだな?』
「もちろんです! よ、よろしくお願いします!」
怖かったけど、ドラゴンとお友達になった私は、訪れる動物や魔物とお友達になりながら牧場を作ったり、池で釣りをしたりとほのぼのとした毎日を過ごしていく。
似非聖女呼ばわりされたのでスローライフ満喫しながら引き篭もります
秋月乃衣
恋愛
侯爵令嬢オリヴィアは聖女として今まで16年間生きてきたのにも関わらず、婚約者である王子から「お前は聖女ではない」と言われた挙句、婚約破棄をされてしまった。
そして、その瞬間オリヴィアの背中には何故か純白の羽が出現し、オリヴィアは泣き叫んだ。
「私、仰向け派なのに!これからどうやって寝たらいいの!?」
聖女じゃないみたいだし、婚約破棄されたし、何より羽が邪魔なので王都の外れでスローライフ始めます。
遺棄令嬢いけしゃあしゃあと幸せになる☆婚約破棄されたけど私は悪くないので侯爵さまに嫁ぎます!
天田れおぽん
ファンタジー
婚約破棄されましたが私は悪くないので反省しません。いけしゃあしゃあと侯爵家に嫁いで幸せになっちゃいます。
魔法省に勤めるトレーシー・ダウジャン伯爵令嬢は、婿養子の父と義母、義妹と暮らしていたが婚約者を義妹に取られた上に家から追い出されてしまう。
でも優秀な彼女は王城に住み、個性的な人たちに囲まれて楽しく仕事に取り組む。
一方、ダウジャン伯爵家にはトレーシーの親戚が乗り込み、父たち家族は追い出されてしまう。
トレーシーは先輩であるアルバス・メイデン侯爵令息と王族から依頼された仕事をしながら仲を深める。
互いの気持ちに気付いた二人は、幸せを手に入れていく。
。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.
他サイトにも連載中
2023/09/06 少し修正したバージョンと入れ替えながら更新を再開します。
よろしくお願いいたします。m(_ _)m
魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”
どたぬき
ファンタジー
ある日乗っていた飛行機が事故にあり、死んだはずの井原は名もない世界に神によって召喚された。現代を生きていた井原は、そこで神に”ダンジョンマスター”になって欲しいと懇願された。自身も建物を建てたい思いもあり、二つ返事で頷いた…。そんなダンジョンマスターの”はじまお”本編とは全くテイストの違う”普通のダンジョンマスター物”です。タグは書いていくうちに足していきます。
なろうさんに、これの本編である”はじまりのまおう”があります。そちらも一緒にご覧ください。こちらもあちらも、一日一話を目標に書いています。
【完結】人々に魔女と呼ばれていた私が実は聖女でした。聖女様治療して下さい?誰がんな事すっかバーカ!
隣のカキ
ファンタジー
私は魔法が使える。そのせいで故郷の村では魔女と迫害され、悲しい思いをたくさんした。でも、村を出てからは聖女となり活躍しています。私の唯一の味方であったお母さん。またすぐに会いに行きますからね。あと村人、テメぇらはブッ叩く。
※三章からバトル多めです。
精霊の森に捨てられた少女が、精霊さんと一緒に人の街へ帰ってきた
アイイロモンペ
ファンタジー
2020.9.6.完結いたしました。
2020.9.28. 追補を入れました。
2021.4. 2. 追補を追加しました。
人が精霊と袂を分かった世界。
魔力なしの忌子として瘴気の森に捨てられた幼子は、精霊が好む姿かたちをしていた。
幼子は、ターニャという名を精霊から貰い、精霊の森で精霊に愛されて育った。
ある日、ターニャは人間ある以上は、人間の世界を知るべきだと、育ての親である大精霊に言われる。
人の世の常識を知らないターニャの行動は、周囲の人々を困惑させる。
そして、魔力の強い者が人々を支配すると言う世界で、ターニャは既存の価値観を意識せずにぶち壊していく。
オーソドックスなファンタジーを心がけようと思います。読んでいただけたら嬉しいです。
転生令嬢の食いしん坊万罪!
ねこたま本店
ファンタジー
訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。
そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。
プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。
しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。
プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。
これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。
こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。
今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。
※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。
※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。
転生先の異世界で温泉ブームを巻き起こせ!
カエデネコ
ファンタジー
日本のとある旅館の跡継ぎ娘として育てられた前世を活かして転生先でも作りたい最高の温泉地!
恋に仕事に事件に忙しい!
カクヨムの方でも「カエデネコ」でメイン活動してます。カクヨムの方が更新が早いです。よろしければそちらもお願いしますm(_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる