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4 地獄の淵で

4ー7 ご褒美ですか?

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 4ー7 ご褒美ですか?

 屋敷に戻るとわたしたちを使用人たちが並んで出迎えてくれた。
 「お帰りなさいませ、ご主人様」
 口々に彼らは、そう言いお辞儀をする。
 その様子を満足げに見つめていたジェイムズさんがご主人様のそばへと歩み寄る。
 「お帰りなさいませ、旦那様」
 声が微かに震えている。
 「夕食の準備ができておりますが、いかがなさいますか?」
 「ああ、すまない、ジェイムズ」
 ご主人様は、そんなのいつものことみたいな態度で偉そうに答える。
 「外で食べてきてしまった」
 「そうでございますか」
 感極まったジェイムズさんがそっと横を向いてポケットから取り出したハンカチで鼻をかんだ。
 「失礼いたしました。少し風邪をひいてしまいまして」
 「そうか」
 ご主人様が微笑んだ。
 「体をいとえよ、ジェイムズ」
 「はっ、ありがとうございます、マクシミリアン様」
 部屋へと戻ったご主人様をベッドの上に移乗して体を清めてから夜着に着替えさせるとわたしは、食堂へと向かった。
 ライザをわたしの部屋へと運んで寝かせてくれたジェイムズさんと合流してしまう。
 わたしたちは、あたりさわりのない世間話をしながら食堂まで歩いた。
 「街はどうでしたか?トガー様」
 「うん。知らないな」
 わたしが答えるとジェイムズさんが何か問いたげにこちらをうかがってくるのでわたしは、ため息をついた。
 「わたしは、街には行けなかったんだよ。治療院の見学してたから」
 「それでは、いったいご主人様はどなたと街へ行かれたのでございますか?」
 ジェイムズさんがきいてくるのでわたしは、答えた。
 「ロブさんとライザだけど」
 「そうなのですか?」
 ジェイムズさんがまたハンカチを出して目尻を押さえる。
 「申し訳ございません。目にゴミが入ってしまって」
 マジですか?
 わたしは、そっぽを向いて歩きながら思っていた。
 執事も大変だな。
 食堂にいって席につくとサラさんが夕食を出してくれた。
 「ええっ?」
 出された料理にわたしは驚いていた。
 これは!
 それは、数週間前にわたしがひそかに出入りの商人から仕入れていた米を炊いて握っただけの塩にぎりだった。
 「なんで?」
 「あんたが時々、夜中にこれを作ってるのを見かけたからね」
 サラさんがにっこりと微笑んだ。
 「ちょっとしたご褒美みたいなもんさ」
 
 
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