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4 地獄の淵で
4ー1 地獄
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4ー1 地獄
わたしは、さっそくライナス先生に頼んで治療院の中を案内してもらうことになった。
イケメンと2人きりで軽いデートみたいなもん?
いつもがんばってるわたしへの精霊からのご褒美か?
わたしは、少しドキドキ胸が高鳴っていた。
こんなの久しぶり!
ライナス先生は、優しいし頭も悪くない。
しかもイケメンだしな!
うきうき気分でライナス先生の執務室を出たわたしだったが、すぐに後悔した。
まず、わたしは、この治療院のことを舐めていた。
国王陛下が作った福祉施設だし、ライナス先生のようなボンボンが院長先生をしているんだからとか思っていた。
だが、それは、わたしの間違いだった。
ここは、正しく地獄だった。
「いいかな?トガーさん」
ライナス先生は、建物の奥に続く廊下を進んでいきながらわたしに告げた。
「ここは、あなたのような淑女にはけっこう衝撃的なところかもしれないのでそれだけは、心しておいてださい」
「大丈夫です」
わたしは、満面の笑みで答えた。
もとの世界で老人介護やってたわたしがびびるなんてことよっぽどじゃないとありえないし。
奥へと続く扉には、なぜか何重にも鍵がかけられていた。
うん?
わたしは、イヤな予感中だった。
ライナス先生は、重い石の扉を押し開いた。
その途端、だ。
中から獣の呻き声が聞こえてくる。
苦しそうな、悲しげな声は、わたしにとっては聞き覚えのある声だった。
それは、かつて勤めたことがある精神病院の認知症の老人たちが入れられていた病棟できいたことがある声だ。
なんで?
ここは、老人じゃなく比較的若い障害者施設じゃねぇの?
それに。
鼻をつく悪臭。
ここは、いったいなんなんだ?
ライナス先生は、その隔離された場所の中の一室の扉を開けた。
その広い石造りの部屋には、何十人もの障害者たちが押し込まれていた。
窓もない部屋の中、汚染された床の上に彼らはぐったりと横たえていた。
まさに死んだ魚みたいな目をしている。
というか、なんというか。
すべての希望を捨て去った者たちの目だ。
わたしは、さっそくライナス先生に頼んで治療院の中を案内してもらうことになった。
イケメンと2人きりで軽いデートみたいなもん?
いつもがんばってるわたしへの精霊からのご褒美か?
わたしは、少しドキドキ胸が高鳴っていた。
こんなの久しぶり!
ライナス先生は、優しいし頭も悪くない。
しかもイケメンだしな!
うきうき気分でライナス先生の執務室を出たわたしだったが、すぐに後悔した。
まず、わたしは、この治療院のことを舐めていた。
国王陛下が作った福祉施設だし、ライナス先生のようなボンボンが院長先生をしているんだからとか思っていた。
だが、それは、わたしの間違いだった。
ここは、正しく地獄だった。
「いいかな?トガーさん」
ライナス先生は、建物の奥に続く廊下を進んでいきながらわたしに告げた。
「ここは、あなたのような淑女にはけっこう衝撃的なところかもしれないのでそれだけは、心しておいてださい」
「大丈夫です」
わたしは、満面の笑みで答えた。
もとの世界で老人介護やってたわたしがびびるなんてことよっぽどじゃないとありえないし。
奥へと続く扉には、なぜか何重にも鍵がかけられていた。
うん?
わたしは、イヤな予感中だった。
ライナス先生は、重い石の扉を押し開いた。
その途端、だ。
中から獣の呻き声が聞こえてくる。
苦しそうな、悲しげな声は、わたしにとっては聞き覚えのある声だった。
それは、かつて勤めたことがある精神病院の認知症の老人たちが入れられていた病棟できいたことがある声だ。
なんで?
ここは、老人じゃなく比較的若い障害者施設じゃねぇの?
それに。
鼻をつく悪臭。
ここは、いったいなんなんだ?
ライナス先生は、その隔離された場所の中の一室の扉を開けた。
その広い石造りの部屋には、何十人もの障害者たちが押し込まれていた。
窓もない部屋の中、汚染された床の上に彼らはぐったりと横たえていた。
まさに死んだ魚みたいな目をしている。
というか、なんというか。
すべての希望を捨て去った者たちの目だ。
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