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1 異世界でも介護はじめました。

1ー10 タイプなんだ。

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 1ー10 タイプなんだ。

 翌日、朝早くフェブリウス伯爵邸を出発し町中へと出掛けたわたしは、なぜか、途中で家畜をつんだ荷馬車に拾われて御者台のおじさんの横に腰かけていた。
 「ほんとにフェブリウス伯爵のお屋敷から歩いて工業ギルドまで行くつもしだったわけかい?」
 おじさんは、ロブさんというボア飼いだ。
 ボアというのは、食用の魔物らしい。
 ロブさんは、時々、フェブリウス伯爵邸に加工した肉を届けてくれている。
 わたしは、世界を変えるために意気揚々と出発したが、何十分歩いても町にはつかなかった。
 屋敷を出るときにアエラさんにきいたことによれば、町までは徒歩で行けるし、工業ギルドは、町の入り口辺りにあるということだった。
 「そりゃ、この辺の連中なら半日もあれば歩いていくけどな。あんたは、噂じゃ都会の出だっていうじゃねぇ?」
 ロブさんは、にかっと笑った。
 あっ。
 前歯が抜けてる。
 「ほんとに、都会のモンは足腰が弱いからな。俺が偶然通りかかってよかったな、おい」
 ははは。
 わたしは、間が抜けた笑い声を上げた。
 「ほんと、助かりました」
 「ホントにね」
 ついてきていたルゥがにゃははっと笑った。
 ちなみにこいつは、外の人には見えないらしい。
 なにしろ精霊様だからな。
 だいたい、そんなこと、さきに言ってくれよな!
 まあ、わたしは、馬車なんか使える身分じゃないし、結局は、町まで行く誰かに乗せて貰うことになるわけだけど。
 ロブさんは、もう嫌だ。
 なんか、こういうタイプ苦手なんだよ!
 ちなみにこの人と会うのは二度目なんだが、初めて会ったときに言われたんだよ。
 「旦那様のような人のお世話をするぐらいなら、俺の妾になる方がいいんじゃねぇ?」
 何が、妾だ!
 バカにするな!
 しかし、この人に悪気はないらしい。
 この世界じゃ、妾とか当たり前のことらしいしな。
 なにしろ男の数が少ないらしくって、男だというだけで甲斐性があれば何人でも愛人を囲えるらしい。
 恐ろしい世界だな!
 といっても、妾や本妻が争うなんてことはめったにないらしい。
 それが当然のことだから。
 しばらくわたしは、ロブさんの独り語りを微笑ましくきいていた。
 たぶん、この世界じゃ、こういう男がモテるんだろうな。
 甲斐性があって、そこそこに男前。
 しかし、わたしは、お断りだが!
 そうこうしているうちに工業ギルドへと到着してわたしは、ロブさんにお礼を言って荷馬車から降りた。
 ロブさんは、にやっと笑うとわたしに告げた。
 「あの話、マジに考えといてくれよ、トガー。あんた、マジで俺のタイプなんだわ」
 わたしは、笑うしかなかった。
 
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