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1 異世界でも介護はじめました。

1ー2 最低底職ですか?

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  1ー2 最低底職ですか?

 ジェイムズさんは、つとめて平静な態度を崩さない。
 だが声の主は、そんなジェイムズさんの態度が気に入らなかったのか、激昂した。
 「この役立たずどもが!」
 声の主は、がなりたてた。
 「どいつもこいつも、この私をばかにして!」
 「申し訳ございませんが、ご主人様」
 ジェイムズさんはそれでも顔色ひとつ変えることなく応じている。
 ほんと、偉いよ、ジェイムズさんは。
 わたしは、ジェイムズさんのことをじっと見つめて2人のやり取りをきいていた。
 あきらかにこの部屋の主である人物は、精神を害している。
 こんなやからにも実直な執事として対応しているジェイムズさんは、執事の鏡だよ。
 それに比べて、このご主人様ときたら、最低だな!
 わたしの考えをよそにジェイムズさんは、静かな声でご主人様に告げた。
 「今度ご主人様にお仕えするトガー様は、こういった任務に詳しい方ですからご安心を」
 「はっ!」
 声の主は、バカにするように笑った。
 「その者が少しは役に立つ者であることを祈っているぞ、ジェイムズ」
 「お任せください、ご主人様」
 ジェイムズさんは、わたしを振り向くとにっこりと微笑んだ。
 「では、トガー様。よろしくお願い致します」
 ジェイムズさんは、そう言うとわたしに小さくお辞儀をしてそのまま部屋を出ていってしまった。
 マジですか。
 わたしは、なぞのご主人様と2人きりになった。
 声の主は、不気味な沈黙を保っていた。
 どうやら深く静かに怒っているようだ。
 うん。
 わたしは、はぁっとため息をつくとベッドの方へと立ち向かった。
 ようするにわたしは、ここでこのご主人様のお世話をすればいいわけね。
 うう。
 わたしは、奥歯を噛み締めたままで微笑みを浮かべる。
 異世界まできても相変わらずの最低底職か。
 だがしかし!
 何もしないでホームレスになるよりかはずっとましだし。
 わたしがそう思っているとご主人様がわたしを罵り始めた。
 「この、愚鈍な、馬の骨が。はやく給料分の仕事をしたらどうだ?」
 「はいはい」
 わたしは、ベッドに向かうと天蓋のカーテンを引き開けた。
 ムッとする嫌な臭いが鼻をついてわたしは、思わず顔をしかめる。
 「どうした?この役立たずが」
 面白がるような声でご主人様がわたしを煽った。
 「何もせずに逃げ帰るか?」
 「失礼します」
 わたしは、声をかけると掛布に手をかけ、そして思わず言葉を失った。
 
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