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8 愛は、死にますか?
8ー2 彼女は、彼を愛していると言った。
しおりを挟む僕は、アウデミスと会ったときに話したことを思い出していた。
奴は、言っていた。
アリアも、僕も、あの人を生き返らせるために必要だと。
そして、マリアンヌも。
アウデミスは、奴は、いったい何をしようとしているんだ?
僕が考えていたときに、不意に、部屋のドアが開いてアリアンヌが食事ののったトレイを持って入ってきた。
「マリアンヌ!」
僕は、マリアンヌに駆け寄ると、彼女の両腕を掴んだ。
「ユヅキ?」
マリアンヌが持っていたトレイが床に落ちて、陶器の皿が割れる音がきこえた。
僕は、かまわず、マリアンヌにきいた。
「奴は、アウデミスは、何を企んでいる?」
「離して・・ユヅキ・・痛い」
マリアンヌの言葉に、僕は、はっとして、彼女の腕を離した。彼女は、赤くなった両手首を擦りながらうつ向いた。
僕は、もう一度、マリアンヌに訊ねた。
「教えてくれないか、マリアンヌ。奴は、何をするつもりなんだ?」
「アウデミス様は」
マリアンヌが小さな声で言った。
「わたしの祖母を甦らせようとしておられるのだ」
祖母?
ええっ?
僕は、マリアンヌにきいた。
「祖母って?あの女の子のこと?」
「そうだ」
マリアンヌが頷いた。
僕は、ハトマメ状態だった。
マジか?
年の差カップルなんてもんじゃないだろ?
「甦るって、どうやってだよ?」
僕は、マリアンヌに訊ねた。
「あの子は・・君のお祖母さん?は、もう、死んでるんだろう?」
「ああ」
マリアンヌは、答えた。
「祖母の肉体は、もう、10年以上前に死んでしまった。今は、死んだ肉体に魂が取り憑いているにすぎない。だから、アウデミス様は、祖母の魂を新しい、生きた肉体に移そうとしておられるのだ」
「はい?」
僕は、きいた。
「いったい、誰の肉体にお祖母さんの魂を移そうというんだ?」
「それは」
マリアンヌの瞳が初めて泳いだ。
彼女は、僕から目をそらして言った。
「わたしの体、だ」
「そんな、まさか・・」
僕が言おうとした言葉を遮って、マリアンヌは言った。
「アウデミス様は、祖母の魂をわたしの肉体へと移すつもりだ。そのためには、『生命の書』の鍵である光の御子 ユヅキと、輸魂の術の生け贄である聖女 フランシス様が必要なのだ」
「そんな・・ばかなこと」
僕は、言った。
「君は、承諾しているのか?マリアンヌ」
「もちろんだ」
マリアンヌは、答えた。
「あの方と初めてお会いしたのは、わたしの祖母が亡くなるときだった。わたしは、まだ幼かったが、そのときからあの方は、そう決めておられたのだ」
マリアンヌが口許に笑みを浮かべた。
「祖母があの方の死人になったときから、わたしの運命は決まっていた。それでも、わたしは、あの方を・・あの方だけを愛している。あの方は、わたしを引き取り名前を与えてくださったのだから」
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