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7 職業に貴賤なし、です。
7ー1 王の使者
しおりを挟むマリアンヌが僕のもとを去ってから数ヵ月がたった頃。
僕が前世のことについていろいろ思い悩んでいることは、誰にも言っていなかった。
ハヅキ兄さんたちを前世でのことに巻き込みたくはない。
兄さんたちは、僕のために戦ってくれたとはいえ、言霊使いというわけではなかった。
言霊使いの問題に、今、幸せに暮らしている兄さんたちを巻き込むわけにはいかなかった。
新しい家族を作っているハヅキ兄さん。
それに、ナツキ兄さんだって、最近、なんか、アリーといい雰囲気だし。
カヅキ兄さんも歌姫サリアと噂になってるし。
それぞれの人生を送っている兄さんたちには、このことは、話せなかった。
「この頃、ユヅキ、様子がおかしいで」
魔界を出る前に会ったときに、アルゼンテにも言われた。
「うちらの仲やないか。なんでも相談してや」
「うん」
僕は、アルゼンテに微笑んで言った。
「ありがとう。行ってくるね、アル」
僕は、アルゼンテの頬に軽くキスをした。
アルゼンテは、ぽぅっと頬を染めて言った。
「オルガたちも、待ってるんやさかい、気を付けて、はよう帰ってきてや」
僕は、王都グリニッジに向かって旅だった。
王都グリニッジは、冬の最中で、一面の雪景色だった。
僕は、仕事のことでカスケード王国の王都グリニッジの商業ギルド内にある『カンパニュラ』のオフィスに来ていたのだが、打ち合わせが終わると、ハヅキ兄さんが切り出した。
「どうしたんだ?ユヅキ。最近、おかしいぞ」
「ええっ?」
僕は、ギクッとしていた。
さすが、ハヅキ兄さん、鋭いな。
僕は、慌てて答えた。
「そんなことないよ。兄さんの気のせいだよ」
「いや、気のせいなんかじゃ」
「ハヅキ支部長」
そのとき、支部長室に事務の仕事をしてくれている女の子が駆け込んできた。
「表に王の使者が来ています」
はい?
王の使者?
僕らの間の空気がピンと空気が張りつめていく。
「わかった。すぐに、行く」
ハヅキ兄さんが答えた。
王の使者。
僕は、悪い予感がしていた。
ハヅキ兄さんが、僕の頭をポンと撫でると言った。
「大丈夫だ。あまり心配するな、ユヅキ」
「兄さん」
僕は、頷いた。
ハヅキ兄さんの言う通りだ。
心配してても仕方がない。
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