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2 新しい人、新しい世界
2ー5 外から来た女の子
しおりを挟むフランシスは、おおむね村の人々から歓迎された。
特にオークのみなさんは、盛り上がっていた。
「お、女の子だぁ!」
「すげぇ、本物だ!」
狩りから帰ってきたオークのみなさんは、フランシスを遠くから見つめながら僕にきいた。
「あれは、ユヅキの嫁か?」
「それは・・」
僕が否定しようとすると、オルガが横から口を挟んだ。
「そうだ。この子は、ユヅキのもんだ。あんたたち、手を出すんじゃないよ」
ええっ?
オルガがそっと僕に耳打ちした。
「こう言っとけば、あの連中がフランシスに手を出そうとしないだろ?」
ああ。
僕は、納得した。
なるほどな。
オークの性欲は、すごい。
種族が違っていても、なんでも、女ならいいという連中だ。
というか、かわいければ男でもいいとか言う奴もいるしな。
僕もハヅキ兄さんたちがいなかったらヤバかったかも。
オークたちは、残念そうな目でフランシスのことを見つめていた。
フランシスは、震えながら僕にしがみついてきた。
「オ、オークの群れ?ここは、オークの村なのか?」
「いや、違うよ」
僕は、フランシスに向かって笑いかけた。
「あの人たちもちゃんとした村人だよ」
「村人?」
フランシスは、この村が魔族と人間が共に暮らす村だと知って驚きを隠せなかった。
「あの、猫耳族の少女は、ともかく、オークは・・奴等は、魔物だぞ?」
「でも、ここではみんな、仲間なんだ」
僕は、言った。
「君が・・君の国が魔物と戦っていても、それは、僕らには関係ない。僕たちは、ここでは、みんな、仲間だ」
フランシスは、この状況になかなか馴染めない様子だった。
まあ、仕方ないか。
今まで、敵として戦ってきた連中と、急に、仲間になれと言っても難しいだろう。
徐々に、馴れていってくれるのを祈るしかない。
その夜は、村の広場で新しい村の仲間を歓迎するための宴が開かれた。
ハヅキ兄さんたちが狩ってきた巨大な猪みたいな魔物 ポルクの肉を焼いたり、シチューにしたりして、僕らは、食べた。
ラック爺や、ホブゴブ、オークのみなさんは、森の酒の木のウロに出来ていたドブロクみたいな酒を回し飲みして盛り上がっていた。
歌を歌ったり、躍りを舞ったりしている彼らを見て、フランシスは、溜め息をついた。
「どうしたの?フランシス」
「いや」
フランシスは、苦笑いを漏らしていた。
「私たちの戦い殺してきた連中も、こんな風に仲間と過ごしていたんだろうなと思って」
「そうか・・」
僕は、フランシスに訊ねた。
「なんで、フランシスの国は、魔族と戦っているの?」
「それは・・」
フランシスが一瞬、答えることを躊躇した。
「魔族は、人に害を与えるもの、だから、討伐しなくてはいけない、と、兄様が」
「兄様?」
僕は、フランシスにきいた。
「フランシスにもお兄さんがいるんだ?」
「ああ」
フランシスが俯く。僕は、フランシスに言った。
「じゃあ、きっと、君のことを探しているね。この森に入ったと知れば、心配するだろうな」
「兄が、私のことを心配することなど、ない」
フランシスがきっぱりと言い放った。
「兄にとって、私は、使い勝手のいい兵士にすぎん」
なんか・・
僕は、フランシスの頑なな横顔を見つめて思っていた。
すごく根深いものがありそうな兄妹だな。
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