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76.計画通り〜晨光side

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「そうですか。
それでは守銭奴娘が。
ご苦労様です。
息が止まるぎりぎりのところで止めに入りましょう」
「丞相として、それはいいのか?」

 報告にきた間諜は、物陰に身を潜ませたまま怪訝そうに尋ねてくる。

「死なれるのは困りますが、とはいえ彼女が自ら選んでくれた事ですからね。
それに貴方も絞殺を勧めたのでしょう」
「外傷があれば他殺を疑われるが、絞殺なら見つかっても、自殺や事故で誤魔化せるとは言っといたからな。
元々他にも女官を何人か殺してるから、殺しに慣れてるようだった。
いざとなっても刃物や毒を使う可能性は低いさ」
「ええ。
ですがもしそうなった時は、私が止めに入ります。
貴方もなるべく近くで注意しておいて下さい」
「そりゃ俺としてもそうするつもりだったが、まだあの娘はガキだろう。
荷が重いんじゃないか」

 彼が危惧するのもわからなくはない。
だが相手はあのふてぶてしい守銭奴娘だ。
それに元々餌として使う事は本人の了承を得ている。

「この国で定めた成人にはなっていますよ。
それに私に何の報告もせず餌が勝手に動くなら、多少痛い目を見させ、今の内に少しは身の程を解らせておく必要もあります」

 そう、あの娘は契約者たる私に、この件を何も報告していない。

 大方、梳巧玲シュー チャオリンが自分への嫌がらせか、もしくは暴力を振るう為に、下級女官を使って置き落とすよう仕向けたとしか考えて居ない。

 あの嬪も昔から義妹同様、性根が悪い。
癇癪を起こして身近な者に暴力を振るうところもよく似ていて、それを隠したつもりで俺の前では猫を被っている。
程度は義妹よりマシだが、普通に気づくくらいには酷かった。

 ファンというあの女官も大概、気の毒に。
無理矢理に筆頭女官へ召し上げて周囲から孤立させ、悪意に曝して守銭奴娘の良心に訴えるよう仕向けたのは間違いない。

 聡明な娘である事は認めるが、ここは謀りに長けた者達が巣食う処。
そして高位貴族は、下位の者の命の重さなど見向きもしないのが常だ。

 暴力を振るわれるならば、それはそれで良い機会だ、命までは取られないと軽く考えたようだが、後宮においてそのような浅はかさは危険極まりない。

 今の内に家の歴史の浅い伯家の娘の命など、軽いものでしかないと身をもって解らせてやらねばならない。

「どちらにしても、これで私に見せたいものがあると文を寄越した梳巧玲シュー チャオリンが何をしたいのかわかりました。
恐らく守銭奴娘をおびき出し、そこに凜汐リンシー貴妃__義妹を会わせて殺させるつもりでしょう。
自尊心の強い義妹は、自分が過ごせなかった夫との初夜を内心では気にしていたはず。
なのに守銭奴娘は過ごしてしまった事で、義妹の恨みと妬みを煽っています。
更にあの席で、小娘は皇貴妃に成り代わったかのように、陛下との仲を見せつけましたからね。
直接手にかける事を選ぶはず」

 まったく、あの陛下の被りきれていない仲の良い夫の仮面は今思い出しても笑ってしまいそうだ。

「貴方が報告に行く前、義妹を春花宮に呼びつけたのは、性悪守銭奴娘と内密に会う約束を取りつけたと伝える為だったのでしょう。
あの嬪を宮に監禁すれば、何かしら短絡的な行動に出ると踏んで、監視を金でどうとでもしそうな女官に任せた甲斐がありました」
「はっ、あんたも無駄にあの娘に微笑んだりして煽っていたじゃねえか」
「おや、何の事です?」

 わざとしたように言われても、はうっかりだ。

「あんたはそれで良いのか?
2人共あんたに惚れてて、1人は一応義妹なんだろう、フォン丞相」
「くだらない。
どちらも私の見た目に惹かれているだけです。
それに相手にもされない陛下への当てつけと自分への慰めに、都合良く勘違いしているだけですよ。
義妹とは血も繋がっていませんし、だからこそ、その鬱憤を晴らそうと執拗に石をぶつけてきておいて、私の見てくれが気に入ったからとしなだれかかられても、気持ち悪いんですよね。
それに、明日には私とフォン家との縁は切れるよう手続きしています。
現在の義妹が何をして、あの家にどのような咎めがあっても関係しませんよ」
「はっ、か」
「ええ」
「まあいい。
もう行く」

 言うだけ言って、気配が消える。

「ええ、やっと……」

 1人残った執務室は、思いのほか独り言が響いた。


※※後書き※※
いつもご覧いただきありがとうございます。
日頃の感謝をこめて初、TikTokとAI画像生成を利用した短い動画を作ってます。
興味があれば、ご覧下さいm(_ _)m
嵐華子で検索していただけると出てきます。
こちらにアドレス貼るのはまずいかもなので(^_^;)
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