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48.誓約魔法の解除方法

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「小娘……さすがに酷くないか……」
「暴力娘……」

 殿方2人のわたくしへの評価とドン引いた視線が酷いですね。

「はあ、ひとまず説明せよ」

 何でしょうね、その脱力感満載での質問を妻に投げる夫の態度は。

「ずっと探していた殿方を見つけたので、勧誘したまでです。
隷属の誓約によって激痛に苛まれてらしたので、ひとまず気を失って頂きました。
というわけで、この者は本日付けで私の部下なので、この宮での事は不問に致します」
「はぁ、認めると?」

 せっかく答えたのに、今度はため息混じりで反論ですか。
でも半ば諦めてらっしゃいますよね?

「元より私が雇い入れた者をこの宮に使用人として置くと話してありましたよ。
それにこの者から色々と話を聞きたかったのでは?
諜報の一端を担っていたなら、単なる暗殺者よりも情報に通じているのではありませんか?」
「つまり貴女はその者を懐柔できると?
しかしその者は隷属の誓約があるのでは?」
「はい。
ですから隷属の魔法もちょちょいと解除してしまうしかありませんね。
もちろんこのように激痛をもってして支配されていた憐れなる者に慈悲と、有益なる情報をもたらせば余罪はあっても減刑なさってくれるでしょう?」
「誓約に使っている体の一部を切り取るという事か?
隷属の誓約は切り離せば死ぬ体の部分を使うだろう。
後宮に入る者の首だとかな。
本当にそなたの言う通りならば……まあ、それも熟慮しよう」

 そうですね、誓約魔法の中でも隷属に関わる類の紋は必ず急所となる部分につけられます。
大抵は奴隷につける紋ですからね。
犯罪奴隷や不法所持された未登録奴隷になる程に解除は難しくなり、紋を他者に洩らそうとするだけでも先程のように激痛を与えます。
自らで切り取って自殺する事もできません。

 後宮に入る際の紋は関わる場所が皇帝の女達が住まう場所なので急所となっていますが、解除は隷属のものより容易ですよ。

「そのような暴力的な事は致しません。
少し骨は折れますが、五体満足なまま、丞相なら解除できますよね」
「ほう?」

 おや、誓約魔法をかけた者以外での解除方法を私が知っているのはそんなに警戒する事ですか?
そういえば誓約魔法を扱える者は特殊な扱いとなっておりましたね。

 丞相は目を細めて私を窺います。

「もしくは陛下ですね」
「どういう意味で申している」

 今度は軽く睨まれてしまいます。

「まったく、過剰反応が過ぎます。
誓約魔法の完全解除は圧倒的な魔力の差があれば、解除者がいなくとも力技で解除できるはずですよ」
「何故知っている?
それは秘匿されている」
「昔解除したのを直に見たからです」

 それこそ2代目である前世で出会ったジャオの族長がやってのけました。
元々誓約魔法の発祥はジャオという東亜の部族です。

 族長と知り合った私は芸事の肥やしにしようと解除について学んでいますから、私にも解除は可能です。
解除に魔力は必要ですが、コツというものが1番物を言うので今より魔力の少ない2代目でもできましたよ。
その後魔力を使い過ぎて寝こみましたが。

 鍵が無ければ錠前が開けられない人もいれば、針金で錠前を開けられる人もいる。
解除もそんなようなものです。

「なるほど。
ならばその後その者が廃人のようになってしまう事も知っているか?」
「そうなのですか?
それは……」

 下手くそなのでは?

「今失礼な事を考えたであろう」

 うっかりジトリとした目で見つめてしまいましたね。

「いいえ、特には。
試された事は?」
「あるはずがない。
誓約をかける者にそう代々伝わって……できるのか?」
「私が見た時はそうでしたよ?
という事でやってみましょう」
「おい、軽すぎるだろう。
もし失敗すれば……」
「いいじゃないですか。
どのみち死する運命だったのでしょう?」

 尋問中、確かそのように聞きましたよ。

「だからとて命を軽んじるな、小娘!」

 正論ですが、どの口で言っているのでしょう?
思わず呆れた目を向ければ、たじろぎましたね。
わかっているならかまいませんが、少々イラッとしてしまいましたよ。
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