476 / 491
9
475.心臓病の一種〜ギディアスside
しおりを挟む
「ひとまずバルトスは、多分来ないだろうけどこの部屋に人が入らないよう見張っておいて」
「チッ、運の良い奴らだ」
奴らって、いつの間にかナグも彼の可愛い天使を狙う輩に認定されているよね?
もちろんナグが天使を見つけてしまったら、間違いなく興味を示したはずだけど。
だって私達は幼い頃からの互いの性格を、目標を知る同士だからね。
ナグが興味を惹かれる事くらいはわかる。
「幼い頃に誓い合った事を、今でも覚えているかい?」
もっとも彼の妹であるスティリカ第1王女が、幼いながらも品行方正だとナグの口から直接耳にした頃から、徐々に親交が減っていった。
私と王女が婚約した頃には、個人的な親交はほぼなくなっている。
「無論だ。
互いの国に良い発展をもたらそう、大きな紛争はないものの、良好とも言えない両国の関係を良好にしていこう」
「そうだよ。
本来なら私とスティリカ王女が婚約を結ばなくとも、私達の代でアドライド国もイクドゥラシャ国も実のある関係を築いていけるはずだった」
「ああ、そうだ……すまな……」
「イクドゥラシャ国王の状態は?」
「まるで狂信者のようにあの女に従っている」
「……そうか。
状況次第で強制的に譲位させなければならない。
覚悟は?」
「……とうにできている。
だが残された時間は短い。
急がなければならないだろう」
この国の国王は、間違いなくルドルフの伝えてきた魅了に侵されている。
魅了は魅縛へと変われば、解除できないと聞いた。
もし国王が魅縛されているなら、王太子であるナグが自らの手で国王を引きずり降ろし、国王の座に就かなければならない。
「幸いなのは、あの女がいない事。
国民も諸外国も国内外の平穏を望んでいる事。
そして君のその心臓病は、不治の病ではなくなったという事だ」
「…………は?」
ポカンとするナグを見つめながら、懐から小瓶を取り出す。
ミシェリーヌ第2王女てあり、スティリカ第1王女でもある何者かが探していた心臓病の特効薬。
それがこの小瓶に入った液体。
アリアチェリーナ=グレインビルがファムント領の洞窟で採取したという、光る苔を原料にして精製された薬。
何百万人に1人の割合で発症する、心臓病の一種。
それはグレインビル夫人やヒュイルグ国の王弟が患っていた、心臓の形状由来から起こるものとは特徴が異なる。
史上3人しか存在していないとされる、体内の魔力が全くない者を除き、全ての者の体には魔力が常に循環している。
その機能が損なわれて循環不全を起こし、心臓に魔力が蓄積して負担をかけてしまう。
それがこの心臓病だ。
そうやる理由は魔法の酷使であり、魔力の大きさに体の循環機能が追いついていない事から起こるとされている。
多くは遺伝とも言われるが、それは定かとは言い難い。
しかし幼少期よりその兆候が現れ、しかし重篤になる前に自然と緩解する事も多い。
稀にナグのように後天的に現れる場合もあるが、そうした場合は日常生活にさえ注意し、魔力を過度に練り上げるような魔法さえ使わなければ、重篤になりにくい。
なのにここまで酷くなった。
ずっと疑問だったが、当初は実の妹だと思っていたミシェリーヌ第2王女が現れた事から、遺伝性だったのだろうと思いこんでいた。
けれど先ほどバルトスが掃除ついでに消した、体内の魔力を狂わせる類の魔法陣。
あんな物を部屋に設置していたせいに違いない。
本来なら今のナグのような状態であれは、間違いなく治癒は不可能となる。
だから後継者をナグからスティリカ第1王女に交代させる話がでていたんだ。
「その、薬は?」
どこかほの暗く、焦燥を感じていた表情に、希望の火が灯ったようだ。
「とある天使からの贈り物。
ただ私はこの薬を試した事はないし、とはいえ、これ1本しか持っていない」
「……信じる価値が、ハァ、あると?」
「私は効果を信じる価値があると思っているよ。
けどナグが拒否して、ひとまずの王位の奪取と国の平和を望むなら……」
「そなたを……信じるしかある、まい」
ナグは私に向かって気怠げに手を差し出した。
「チッ、運の良い奴らだ」
奴らって、いつの間にかナグも彼の可愛い天使を狙う輩に認定されているよね?
もちろんナグが天使を見つけてしまったら、間違いなく興味を示したはずだけど。
だって私達は幼い頃からの互いの性格を、目標を知る同士だからね。
ナグが興味を惹かれる事くらいはわかる。
「幼い頃に誓い合った事を、今でも覚えているかい?」
もっとも彼の妹であるスティリカ第1王女が、幼いながらも品行方正だとナグの口から直接耳にした頃から、徐々に親交が減っていった。
私と王女が婚約した頃には、個人的な親交はほぼなくなっている。
「無論だ。
互いの国に良い発展をもたらそう、大きな紛争はないものの、良好とも言えない両国の関係を良好にしていこう」
「そうだよ。
本来なら私とスティリカ王女が婚約を結ばなくとも、私達の代でアドライド国もイクドゥラシャ国も実のある関係を築いていけるはずだった」
「ああ、そうだ……すまな……」
「イクドゥラシャ国王の状態は?」
「まるで狂信者のようにあの女に従っている」
「……そうか。
状況次第で強制的に譲位させなければならない。
覚悟は?」
「……とうにできている。
だが残された時間は短い。
急がなければならないだろう」
この国の国王は、間違いなくルドルフの伝えてきた魅了に侵されている。
魅了は魅縛へと変われば、解除できないと聞いた。
もし国王が魅縛されているなら、王太子であるナグが自らの手で国王を引きずり降ろし、国王の座に就かなければならない。
「幸いなのは、あの女がいない事。
国民も諸外国も国内外の平穏を望んでいる事。
そして君のその心臓病は、不治の病ではなくなったという事だ」
「…………は?」
ポカンとするナグを見つめながら、懐から小瓶を取り出す。
ミシェリーヌ第2王女てあり、スティリカ第1王女でもある何者かが探していた心臓病の特効薬。
それがこの小瓶に入った液体。
アリアチェリーナ=グレインビルがファムント領の洞窟で採取したという、光る苔を原料にして精製された薬。
何百万人に1人の割合で発症する、心臓病の一種。
それはグレインビル夫人やヒュイルグ国の王弟が患っていた、心臓の形状由来から起こるものとは特徴が異なる。
史上3人しか存在していないとされる、体内の魔力が全くない者を除き、全ての者の体には魔力が常に循環している。
その機能が損なわれて循環不全を起こし、心臓に魔力が蓄積して負担をかけてしまう。
それがこの心臓病だ。
そうやる理由は魔法の酷使であり、魔力の大きさに体の循環機能が追いついていない事から起こるとされている。
多くは遺伝とも言われるが、それは定かとは言い難い。
しかし幼少期よりその兆候が現れ、しかし重篤になる前に自然と緩解する事も多い。
稀にナグのように後天的に現れる場合もあるが、そうした場合は日常生活にさえ注意し、魔力を過度に練り上げるような魔法さえ使わなければ、重篤になりにくい。
なのにここまで酷くなった。
ずっと疑問だったが、当初は実の妹だと思っていたミシェリーヌ第2王女が現れた事から、遺伝性だったのだろうと思いこんでいた。
けれど先ほどバルトスが掃除ついでに消した、体内の魔力を狂わせる類の魔法陣。
あんな物を部屋に設置していたせいに違いない。
本来なら今のナグのような状態であれは、間違いなく治癒は不可能となる。
だから後継者をナグからスティリカ第1王女に交代させる話がでていたんだ。
「その、薬は?」
どこかほの暗く、焦燥を感じていた表情に、希望の火が灯ったようだ。
「とある天使からの贈り物。
ただ私はこの薬を試した事はないし、とはいえ、これ1本しか持っていない」
「……信じる価値が、ハァ、あると?」
「私は効果を信じる価値があると思っているよ。
けどナグが拒否して、ひとまずの王位の奪取と国の平和を望むなら……」
「そなたを……信じるしかある、まい」
ナグは私に向かって気怠げに手を差し出した。
0
お気に入りに追加
414
あなたにおすすめの小説
このやってられない世界で
みなせ
ファンタジー
筋肉馬鹿にビンタをくらって、前世を思い出した。
悪役令嬢・キーラになったらしいけど、
そのフラグは初っ端に折れてしまった。
主人公のヒロインをそっちのけの、
よく分からなくなった乙女ゲームの世界で、
王子様に捕まってしまったキーラは
楽しく生き残ることができるのか。
異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~
樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。
無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。
そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。
そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。
色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。
※この作品はカクヨム様でも掲載しています。
異世界母さん〜母は最強(つよし)!肝っ玉母さんの異世界で世直し無双する〜
トンコツマンビックボディ
ファンタジー
馬場香澄49歳 専業主婦
ある日、香澄は買い物をしようと町まで出向いたんだが
突然現れた暴走トラック(高齢者ドライバー)から子供を助けようとして
子供の身代わりに車にはねられてしまう
転生貴族のスローライフ
マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた
しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった
これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である
*基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる