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373.つまらない物を噛じってからの、ムササビキック
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「シェリ、悪かった。
どこの宿も泊めて貰えなかったばかりか、俺様のせいでこんな場所で一夜を過ごさせる事になるとは····」
ふぶっ。
肉球の手の平を咄嗟に口元にやる。
ヤバい、不意打ち俺様ヤバい。
真剣に謝罪する声で俺様ヤバい。
思わず吹き出しそうになるのを何とか堪える。
「私の方こそ、申し訳ありません。
前回は何とかひと晩だけ泊めてくれる宿を見つけられたんですが、今回はそこからも断られてしまって····」
また明かりをつけた子分も加わって色々喋りだしたけど、俺様で頭に入ってこなくなった。
「いいのよ。
野宿といってもここは雨風がしのげたもの」
あ、やっぱり宿泊拒否されたんだ。
そりゃあれだけ町中で平民や流民や獣人をこけにすれば、そうなるよね。
結局ここで一夜を明かしたみたいだ。
あの焚き火跡はこの3人のもので、多分そうして正解だったろうね。
それこそ町中の路地裏で野宿なんかしたら何かしら被害を受けたかもしれない。
暴行か窃盗かはわからないけど。
魔光苔が光ったのは、こうやって明かりを魔法で出して探索してたからじゃないかな?
「それよりも····足りないのかしら?」
ん?
またアレから魔法陣に供給される魔力が増えた?
「仮にもあの光の精霊王が守護をしてきた国の王族と貴族ですものね。
あの国からいなくなってるのに、邪魔してくれちゃって。
でも時間がかかり過ぎでいるし、打ち消そうとして副作用的に性格が荒くなるのはいただけないわ。
このままだと足を引っ張られ続けるだけね?
見込み違いだったかしら」
更に供給量が増えた?!
「ああ····美しいな。
俺の····シェリ」
「エリュウ、私にも愛しい人を愛でさせて下さい····」
そう言いながら少年2人がアレの髪や頬や手の甲にスリスリしたり、口づけたりし始める。
またぼうっとなってる?
どうでもいいけど、ぼうっとしてる時は俺様が封印される仕様なのかな?
確か昨日もそうだった。
というかちょっと、ううん、かなり異様な光景だ。
場所的にも暗がりだし、雰囲気が大人なR指定入りそうになってない?
それに一気に進めようとしてるせいか、蔦が伸びて色も赤と赤黒さがそれぞれ増してるけど、どちらの魔法陣にも揺らぎが出てる。
失敗しても良いと思ってるのかな?
確かに足手まといなんだろうけど、これで失敗すると精神を壊されて廃人コースだよ?
うーん····今回は出血大サービスだからね。
まあ一応、あの小チンピラ俺様王子なりに庇おうとしてくれたみたいだし?
ペンダントトップをトントントンと叩いてムササビ姿になる。
ムササビの鳴き声ってどんなだっけ?
確か····。
「グルルルァァー!
グルルルァァー!」
ちょっとカラスっぽいんだよね。
我ながら似てる。
「え、何?!」
「ああ····驚くそなたも可愛らしい····」
「ええ、本当に····」
洞窟だから僕の鳴き声もよく響く。
「2人共、警戒して!」
あ、アレの魔力供給が完全に切れた。
今だ!
「グルルルァァー!」
そう鳴き声を出しながら、まずは山吹色の頭に滑空する。
そのまま頭に軽く前歯をたてる。
「イター!!!!」
ふっ、つまらない物を噛じってしまった。
「何なの?!」
「はっ、エリュウ?!」
咄嗟にアレは後ろへ下がり、子分はハッとしたように自分の親分を見る。
パシュン····。
よし、背中の巾着越しに絶対ガード君(改)が発動した。
胸元を見れば、蔦が消えて魔法陣がだいぶ薄くなった。
色も赤黒くなってたのが蛍光ピンクに変わってる。
「なっ、白い魔獣?!
いや、狸?!」
「グルルルァァー!」
失礼な!
ムササビだ!
「コッへ!
殺しなさい!」
「シェリは下がって!
それは引き剥がしてからです!」
「う、あ····」
いたいけな動物の抹殺をやり取りする2人を尻目に、王子の体がグラグラ揺れる。
一気に解呪間際までいったからか、意識混濁を起こしてる。
子分は僕を捕まえようと手を伸ばすけど、僕は山吹色の頭にムササビキックをお見舞いした反動を使って橙頭に跳びつく。
「エリュウ?!」
と見せかけて、真後ろの壁にまずは跳び、予想通り咄嗟に素早く横に避けて地面にあたまをぶつけて崩れ落ちた王子に駆け寄った橙色に今度こそ跳びついた。
「んぶっ」
でも彼が咄嗟に振り向いたから、それなりに整った顔立ちの顔面を腹毛で覆う事になった。
でも気にせず頭をガブリ。
あ、ちょっと前歯が刺さり過ぎちゃった。
「うぐぁ!!!!」
パシュン····。
こっちは王子よりは進行してなかったのか、魔法陣も蔦も完全に消えてしまう。
ふふふ、やっぱりうちのレイヤード義兄様の魔具は凄い。
巾着リュックにつけてた絶対ガード君(改)は外からの攻撃をガードしてくれるだけじゃない。
あれから更に改良されてて内側への物理攻撃に加えて精神系に作用する魔法も含めてガードしてくれる優れものだ。
前にルドルフ王子とシル様と3人で拐われた時に変態狂魔法学者が作った懐中時計型の魔具で体を退行させた時もこの魔具で助けたのと、理由は同じだね。
「う、あ····」
こっちもグラグラし始めたからムササビキックで地面に沈めてやる。
ふっ、またもつまらない物を噛じってしまった。
なんて華麗に着地して悦に入っていたら、背後に殺気を感じて本能的に横へ跳ぶ。
いくつかの黒い刃が僕のいた所に刺さって····周りに生えていた苔を溶かして蒸発したように消えた。
どこの宿も泊めて貰えなかったばかりか、俺様のせいでこんな場所で一夜を過ごさせる事になるとは····」
ふぶっ。
肉球の手の平を咄嗟に口元にやる。
ヤバい、不意打ち俺様ヤバい。
真剣に謝罪する声で俺様ヤバい。
思わず吹き出しそうになるのを何とか堪える。
「私の方こそ、申し訳ありません。
前回は何とかひと晩だけ泊めてくれる宿を見つけられたんですが、今回はそこからも断られてしまって····」
また明かりをつけた子分も加わって色々喋りだしたけど、俺様で頭に入ってこなくなった。
「いいのよ。
野宿といってもここは雨風がしのげたもの」
あ、やっぱり宿泊拒否されたんだ。
そりゃあれだけ町中で平民や流民や獣人をこけにすれば、そうなるよね。
結局ここで一夜を明かしたみたいだ。
あの焚き火跡はこの3人のもので、多分そうして正解だったろうね。
それこそ町中の路地裏で野宿なんかしたら何かしら被害を受けたかもしれない。
暴行か窃盗かはわからないけど。
魔光苔が光ったのは、こうやって明かりを魔法で出して探索してたからじゃないかな?
「それよりも····足りないのかしら?」
ん?
またアレから魔法陣に供給される魔力が増えた?
「仮にもあの光の精霊王が守護をしてきた国の王族と貴族ですものね。
あの国からいなくなってるのに、邪魔してくれちゃって。
でも時間がかかり過ぎでいるし、打ち消そうとして副作用的に性格が荒くなるのはいただけないわ。
このままだと足を引っ張られ続けるだけね?
見込み違いだったかしら」
更に供給量が増えた?!
「ああ····美しいな。
俺の····シェリ」
「エリュウ、私にも愛しい人を愛でさせて下さい····」
そう言いながら少年2人がアレの髪や頬や手の甲にスリスリしたり、口づけたりし始める。
またぼうっとなってる?
どうでもいいけど、ぼうっとしてる時は俺様が封印される仕様なのかな?
確か昨日もそうだった。
というかちょっと、ううん、かなり異様な光景だ。
場所的にも暗がりだし、雰囲気が大人なR指定入りそうになってない?
それに一気に進めようとしてるせいか、蔦が伸びて色も赤と赤黒さがそれぞれ増してるけど、どちらの魔法陣にも揺らぎが出てる。
失敗しても良いと思ってるのかな?
確かに足手まといなんだろうけど、これで失敗すると精神を壊されて廃人コースだよ?
うーん····今回は出血大サービスだからね。
まあ一応、あの小チンピラ俺様王子なりに庇おうとしてくれたみたいだし?
ペンダントトップをトントントンと叩いてムササビ姿になる。
ムササビの鳴き声ってどんなだっけ?
確か····。
「グルルルァァー!
グルルルァァー!」
ちょっとカラスっぽいんだよね。
我ながら似てる。
「え、何?!」
「ああ····驚くそなたも可愛らしい····」
「ええ、本当に····」
洞窟だから僕の鳴き声もよく響く。
「2人共、警戒して!」
あ、アレの魔力供給が完全に切れた。
今だ!
「グルルルァァー!」
そう鳴き声を出しながら、まずは山吹色の頭に滑空する。
そのまま頭に軽く前歯をたてる。
「イター!!!!」
ふっ、つまらない物を噛じってしまった。
「何なの?!」
「はっ、エリュウ?!」
咄嗟にアレは後ろへ下がり、子分はハッとしたように自分の親分を見る。
パシュン····。
よし、背中の巾着越しに絶対ガード君(改)が発動した。
胸元を見れば、蔦が消えて魔法陣がだいぶ薄くなった。
色も赤黒くなってたのが蛍光ピンクに変わってる。
「なっ、白い魔獣?!
いや、狸?!」
「グルルルァァー!」
失礼な!
ムササビだ!
「コッへ!
殺しなさい!」
「シェリは下がって!
それは引き剥がしてからです!」
「う、あ····」
いたいけな動物の抹殺をやり取りする2人を尻目に、王子の体がグラグラ揺れる。
一気に解呪間際までいったからか、意識混濁を起こしてる。
子分は僕を捕まえようと手を伸ばすけど、僕は山吹色の頭にムササビキックをお見舞いした反動を使って橙頭に跳びつく。
「エリュウ?!」
と見せかけて、真後ろの壁にまずは跳び、予想通り咄嗟に素早く横に避けて地面にあたまをぶつけて崩れ落ちた王子に駆け寄った橙色に今度こそ跳びついた。
「んぶっ」
でも彼が咄嗟に振り向いたから、それなりに整った顔立ちの顔面を腹毛で覆う事になった。
でも気にせず頭をガブリ。
あ、ちょっと前歯が刺さり過ぎちゃった。
「うぐぁ!!!!」
パシュン····。
こっちは王子よりは進行してなかったのか、魔法陣も蔦も完全に消えてしまう。
ふふふ、やっぱりうちのレイヤード義兄様の魔具は凄い。
巾着リュックにつけてた絶対ガード君(改)は外からの攻撃をガードしてくれるだけじゃない。
あれから更に改良されてて内側への物理攻撃に加えて精神系に作用する魔法も含めてガードしてくれる優れものだ。
前にルドルフ王子とシル様と3人で拐われた時に変態狂魔法学者が作った懐中時計型の魔具で体を退行させた時もこの魔具で助けたのと、理由は同じだね。
「う、あ····」
こっちもグラグラし始めたからムササビキックで地面に沈めてやる。
ふっ、またもつまらない物を噛じってしまった。
なんて華麗に着地して悦に入っていたら、背後に殺気を感じて本能的に横へ跳ぶ。
いくつかの黒い刃が僕のいた所に刺さって····周りに生えていた苔を溶かして蒸発したように消えた。
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