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258.ブラコンとシスコン〜ギディアスside
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「アドライド国とヒュイルグ国を挟む大河が見えるんだけど、気の所為かな?
ははははは」
風雪に見舞われる中、思わず乾いた笑いが出る。
寒!
外套薄!
城内だったから身につけている外套はこの舞い散る白1択の世界には似つかわしくない薄さなんだけど?!
「気の所為だと思っているなら頭がいかれてるぞ。
大丈夫か?」
いかれてるのは君だよ!
冷めた目を向けてちょっと引いてる感じを醸し出すのやめてくれないかな!
はっ、平常心、私は王太子········無理だ!
吹きつける雪が冷た過ぎて理性が吹っ飛ぶ!
と、とにかく温かい風····。
「って、バルトス?
何で私を雪除けにしてるのかな?!」
「丁度いいからだ。
さっさと温めたらどうだ?」
「って、自分はさっさと温めてるし?!
と、とにかくバルトスはルドとヒュイルグ国王に知らせ出して!」
酷いが過ぎている。
私、一応君の国の王太子なのに····。
でも知らせを出すの思い出して良かった。
さすがに王太子が密入国とか有り得ない。
私を盾にして雪を防ぐバルトスが魔法で鳥を作って飛ばした。
2羽の鳥が城の方へ飛んで行く。
体の前面に雪を感じながら途方に暮れつつ温風を····。
「もう、遅いんだから。
さっさとこっち来なよ」
先程の男の声だけがして、一瞬煮えたぎるような己以外の魔力が全身を覆う。
けれど次の瞬間には自身の魔力が強制的に消費されると同時にヒュイルグ国側の船着き場へと景色が変わった。
途端に今度は激しい暴風雪に見舞われる。
何が起こったんだろうね?!
私の魔力を勝手に使って魔法を発動させたんだろうけど、こんな芸当ができるなんて聞いた事ないからね?!
バルトスはちゃっかりついてきている。
そしてちゃっかり私の陰にいる。
ついでにちゃっかり自分の周りの温風の温度を上げている。
「····っ」
声にならない悲鳴が上がる。
さすが最北端の国!
寒さの種類が違う!
心も何だか極寒だ!!
でも泣かない!
泣いたら瞼も睫毛も凍りつく未来しか見えない!
「わー、良く人属なのにそんな薄着でいられるね」
呆れたような、感心したような男の声が真横から聞こえる。
しかし寒すぎて怒る気力は出ない。
体の前面に吹きつける雪で声すらも出ず、視線だけを向ければ、やはりあの赤髪の男が外套も羽織らず立っていた。
雪は男に当たる直前で溶けて消えている。
風も男の周囲で霧散し、長髪が少し揺れる程度だ。
「じゃ、死にたく無かったら俺の愛し子のいる部屋を頑張って思い浮かべておいてね。
行ってらっしゃーい」
「チッ」
男の軽い声と共に再び煮えたぎるような魔力に一瞬覆われ、己の魔力を強制的に奪われて転移の魔法が発動した。
バルトスが短く舌打ちして私の肩を掴み、よく知る彼の魔力が私を覆う。
恐らく不安定になりかけた魔法を安定させるためだろう。
そうしなければ私の体は時空に挟まり千々に引き裂かれたかもしれない。
そうして景色が変わり、魔力の大量消費でとんでもない脱力感に襲われつつも、温かな室内にほっと息を吐く。
思わず膝を着きそうになるのを何とか堪える。
しかしここは本当にヒュイルグ国の王城だろうか?
そう思って寒さで固まった体でぎこちなく見回せば、向こうに見知った少女がいた。
私の体の前面に降り積もってやや固まっている雪に驚いたのかな?
私と目が合うと優しげな垂れ目が大きく見開かれる。
実際に会うのは約1年ぶりだけれど、あの時より少しばかり大人びた顔つきになっている。
そして可哀想な事に、あの時よりも痩せてしまっていた。
「俺の可愛い天使!
会いたかった!」
「えっ、バルトス兄様?!
どうして?!」
と思えば、そんな兄妹の会話と共に何の遠慮もなく後ろから押し退けられてしまう。
弾みでパサ、と顔と体の前面に積もってた雪が一欠片絨毯に落ちちゃったよ。
私、一応君達の国の王太子なんだけどな。
さすがにしょげちゃうよ、本当に。
その後もバルトスは相変わらず妹にはデレデレとした表情を浮かべながら会話している。
「バルトスは相変わらずだよね」
ずっと無視されるのも虚しくなってきたから自分から声かけちゃったよ。
「え····っと、王太子殿下?」
おっと、この雪まみれの外見じゃ誰だかわからなかったか。
「そうだよ。
久しぶりだね。
あ、楽にして?
ちゃんとギディって呼んでね。
体調はどう?
気分は落ち着いてる?」
雪を体から飛ばし、すぐに落ちた雪を溶かして蒸発させる。
あの子の病み上がりの体を冷やしては大変だ。
「ギディ様、そちらにおかけになって下さい。
暖炉が近いので温まります」
「わあ、ありがとう。
久々にこの国に来たけど、さすが最北端の国だよね。
凍死するかと思った」
なんて言いながら、やっと人間らしい触れ合いと思いやりに涙ぐみそう。
バルトスは妹を膝に横向きに乗せてソファに腰かけ、私も暖炉に近いソファに腰かけた。
体の調子を聞けば、アリーが倒れてからやっと最近になって微熱程度には下ったみたいだけど、1ヶ月以上寝たきりだったせいで体力がかなり落ちてしまったらしい。
歩けなくなるのが怖くて少しずつ動くようにしていると言っていた。
顔色もまだ優れないようだし、無理だけはしてほしくないな。
「ていうか、聞いてくれる?!
バルトスが私を盾にしたせいで吹雪が全部私を攻撃したんだよ!
アリーからも叱ってよ!」
でも私に働いた兄の無体は彼の天使に言いつけてやる!
なんて言ってみたものの、この兄妹の仲の良さは伊達じゃなかった。
「だ····大好き!
ぎゅってして、兄様!
会いたかったの!」
「もちろんだよ!
俺の天使!」
とか言いながらしっかり抱擁するんだ。
私は魔力を強制消費させられた末に何を見せられているんだろうね。
「ブラコンにシスコン····」
思わずそう呟いてしまっても仕方ないよね。
その後はまたフルネーム呼びになったから愛称呼びをお願いしたら、今度こそ心の狭い兄が邪魔をする。
それでもちゃんと愛称を呼んでくれるんだから、兄と違って妹は優しいよ。
父上がつまらない怒りを彼らの父から買って王族接近禁止なんて約束しなければ、もっとこの子と仲良くできるのに。
まあバルトスを軽くいなしてそろそろ本題に入ろう。
ははははは」
風雪に見舞われる中、思わず乾いた笑いが出る。
寒!
外套薄!
城内だったから身につけている外套はこの舞い散る白1択の世界には似つかわしくない薄さなんだけど?!
「気の所為だと思っているなら頭がいかれてるぞ。
大丈夫か?」
いかれてるのは君だよ!
冷めた目を向けてちょっと引いてる感じを醸し出すのやめてくれないかな!
はっ、平常心、私は王太子········無理だ!
吹きつける雪が冷た過ぎて理性が吹っ飛ぶ!
と、とにかく温かい風····。
「って、バルトス?
何で私を雪除けにしてるのかな?!」
「丁度いいからだ。
さっさと温めたらどうだ?」
「って、自分はさっさと温めてるし?!
と、とにかくバルトスはルドとヒュイルグ国王に知らせ出して!」
酷いが過ぎている。
私、一応君の国の王太子なのに····。
でも知らせを出すの思い出して良かった。
さすがに王太子が密入国とか有り得ない。
私を盾にして雪を防ぐバルトスが魔法で鳥を作って飛ばした。
2羽の鳥が城の方へ飛んで行く。
体の前面に雪を感じながら途方に暮れつつ温風を····。
「もう、遅いんだから。
さっさとこっち来なよ」
先程の男の声だけがして、一瞬煮えたぎるような己以外の魔力が全身を覆う。
けれど次の瞬間には自身の魔力が強制的に消費されると同時にヒュイルグ国側の船着き場へと景色が変わった。
途端に今度は激しい暴風雪に見舞われる。
何が起こったんだろうね?!
私の魔力を勝手に使って魔法を発動させたんだろうけど、こんな芸当ができるなんて聞いた事ないからね?!
バルトスはちゃっかりついてきている。
そしてちゃっかり私の陰にいる。
ついでにちゃっかり自分の周りの温風の温度を上げている。
「····っ」
声にならない悲鳴が上がる。
さすが最北端の国!
寒さの種類が違う!
心も何だか極寒だ!!
でも泣かない!
泣いたら瞼も睫毛も凍りつく未来しか見えない!
「わー、良く人属なのにそんな薄着でいられるね」
呆れたような、感心したような男の声が真横から聞こえる。
しかし寒すぎて怒る気力は出ない。
体の前面に吹きつける雪で声すらも出ず、視線だけを向ければ、やはりあの赤髪の男が外套も羽織らず立っていた。
雪は男に当たる直前で溶けて消えている。
風も男の周囲で霧散し、長髪が少し揺れる程度だ。
「じゃ、死にたく無かったら俺の愛し子のいる部屋を頑張って思い浮かべておいてね。
行ってらっしゃーい」
「チッ」
男の軽い声と共に再び煮えたぎるような魔力に一瞬覆われ、己の魔力を強制的に奪われて転移の魔法が発動した。
バルトスが短く舌打ちして私の肩を掴み、よく知る彼の魔力が私を覆う。
恐らく不安定になりかけた魔法を安定させるためだろう。
そうしなければ私の体は時空に挟まり千々に引き裂かれたかもしれない。
そうして景色が変わり、魔力の大量消費でとんでもない脱力感に襲われつつも、温かな室内にほっと息を吐く。
思わず膝を着きそうになるのを何とか堪える。
しかしここは本当にヒュイルグ国の王城だろうか?
そう思って寒さで固まった体でぎこちなく見回せば、向こうに見知った少女がいた。
私の体の前面に降り積もってやや固まっている雪に驚いたのかな?
私と目が合うと優しげな垂れ目が大きく見開かれる。
実際に会うのは約1年ぶりだけれど、あの時より少しばかり大人びた顔つきになっている。
そして可哀想な事に、あの時よりも痩せてしまっていた。
「俺の可愛い天使!
会いたかった!」
「えっ、バルトス兄様?!
どうして?!」
と思えば、そんな兄妹の会話と共に何の遠慮もなく後ろから押し退けられてしまう。
弾みでパサ、と顔と体の前面に積もってた雪が一欠片絨毯に落ちちゃったよ。
私、一応君達の国の王太子なんだけどな。
さすがにしょげちゃうよ、本当に。
その後もバルトスは相変わらず妹にはデレデレとした表情を浮かべながら会話している。
「バルトスは相変わらずだよね」
ずっと無視されるのも虚しくなってきたから自分から声かけちゃったよ。
「え····っと、王太子殿下?」
おっと、この雪まみれの外見じゃ誰だかわからなかったか。
「そうだよ。
久しぶりだね。
あ、楽にして?
ちゃんとギディって呼んでね。
体調はどう?
気分は落ち着いてる?」
雪を体から飛ばし、すぐに落ちた雪を溶かして蒸発させる。
あの子の病み上がりの体を冷やしては大変だ。
「ギディ様、そちらにおかけになって下さい。
暖炉が近いので温まります」
「わあ、ありがとう。
久々にこの国に来たけど、さすが最北端の国だよね。
凍死するかと思った」
なんて言いながら、やっと人間らしい触れ合いと思いやりに涙ぐみそう。
バルトスは妹を膝に横向きに乗せてソファに腰かけ、私も暖炉に近いソファに腰かけた。
体の調子を聞けば、アリーが倒れてからやっと最近になって微熱程度には下ったみたいだけど、1ヶ月以上寝たきりだったせいで体力がかなり落ちてしまったらしい。
歩けなくなるのが怖くて少しずつ動くようにしていると言っていた。
顔色もまだ優れないようだし、無理だけはしてほしくないな。
「ていうか、聞いてくれる?!
バルトスが私を盾にしたせいで吹雪が全部私を攻撃したんだよ!
アリーからも叱ってよ!」
でも私に働いた兄の無体は彼の天使に言いつけてやる!
なんて言ってみたものの、この兄妹の仲の良さは伊達じゃなかった。
「だ····大好き!
ぎゅってして、兄様!
会いたかったの!」
「もちろんだよ!
俺の天使!」
とか言いながらしっかり抱擁するんだ。
私は魔力を強制消費させられた末に何を見せられているんだろうね。
「ブラコンにシスコン····」
思わずそう呟いてしまっても仕方ないよね。
その後はまたフルネーム呼びになったから愛称呼びをお願いしたら、今度こそ心の狭い兄が邪魔をする。
それでもちゃんと愛称を呼んでくれるんだから、兄と違って妹は優しいよ。
父上がつまらない怒りを彼らの父から買って王族接近禁止なんて約束しなければ、もっとこの子と仲良くできるのに。
まあバルトスを軽くいなしてそろそろ本題に入ろう。
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