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98.強敵だらけ~フォンデアス夫人side
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「ブルグル公爵令嬢、お聞きしてもよろしいかしら?」
「あら、何事かしら?」
すました微笑みを浮かべる様は既に貴婦人とお呼びして差し支えない程堂々としてますわね。
その様子からも社交界での場数を色々と踏んでいるのを窺い知る事が容易にできますわ。
この卓より先に王妃様とお話されていた様子を観察していたけれど、経験から来る余裕が無ければ貴族女性の頂点とも言える王妃様とあのように気後れせずに振る舞うのは難しいでしょうから。
「姪とはいつからあのようなやり取りをされる仲に?」
「ふふふ、何年か前に私のお出ししたお手紙にアリアチェリーナ様がお返事を下さったの。
交流を持たせていただいたのはその時からですけれど、お会いしたのは本日で2度目になりますわ」
「まあ。
もしかして王子殿下の夏のお茶会以来という事ですの?」
姪が領以外でこのご令嬢とお会いするとすれば、それくらいしか考えられませんわね。
「ええ、その通りでしてよ。
その時に私と双子の兄があの方にとても失礼な事をしてしまいましたの。
かなりの枚数の謝罪のお手紙をお送りしたのだけれどあの後すぐに体調を崩されたようで、実際のお返事は数ヵ月後にいただく事となりましたわ。
ええ、私がお送りしたお手紙の枚数分だけきっちりと····」
目が黄昏たように見えたのだけれど何故かしら?
「その時から何度もお手紙でのやり取りをさせていただいて、本日お会いする事をとても楽しみにしておりましたのよ」
その表情からは嬉しさが滲みでていて嘘ではなさそうね。
「そうでしたの。
そちらの扇は姪にお手紙でご依頼下さったのね」
「ええ」
「身内の贔屓目を無しにしても、とても良く出来ておりますわ。
ですがこのように人目につくような会場で直接お渡しするなんて不躾な事をしてしまい、ご気分を害されてはおりませんか?」
「もちろん、そのような事はありませんわ。
夫人もお分かりではないかしら?」
ええ、もちろんよ。
魔力がない事や滅多に顔を出さないグレインビル侯爵家の養女という、本日のこのお茶会でも貴婦人達の1番関心を集める存在。
そんな幼い子供が誰も作った事のない美しく、かつ繊細なレースを間違いなく目立つ状況を作り上げて渡したのだもの。
とんでもない宣伝となった事は分かっているわ。
けれど聞きたいのはそれではない····。
「ではやはり····」
「細かい事情はお聞きしておりませんし、興味はありませんことよ。
ただ、私はあの方をご年齢通りの深窓の令嬢とは思っておりませんし、夫人のご令息と同じように、このまま公私共により良い関係になれる事を願っておりますのよ」
間違いなく確信犯ね。
恐らくは娘への何らかのフォローを姪は先にお願いしていたのだわ。
それも一昨日から昨日までのごくごく短時間で。
どうやって連絡したのかは謎ね。
少なくともわが家の影の目はすり抜けたみたい。
「ええ、私も息子共々これからより良い関係を築き上げたいと感じておりますわ」
できれば息子と婚約して欲しかったけれど、それは昨日断られてしまったものね。
予想通りだけれどその後のあの2人の保護者の怒りようは凄かったわ。
あそこで護衛している保護者まで転移魔法を使って職務中に来て客間から使用人が使う通路まで凍りづけにしたのは予想外だったけれど。
小心な夫と息子はひたすら謝っていたけれど、私はまだ諦めきれないのよ。
「ふふふ、そのようにお聞きしてしまうと、私の双子のお兄様も焦ってしまうかもしれませんことよ」
あらあら、牽制と宣戦布告かしらね。
恐らく既に打診してヘルトが握り潰しているわね。
あの姪を狙う令息がこんな所で見つかるなんて。
それに王子殿下のあの反応。
きっと気づいたのはあの子のすぐ隣にいた私と護衛役の筈なのに護衛対象に殺気立っていたあの義兄だけね。
あら、考えてみれば強敵だらけじゃない。
まあ最強の敵はヘルトでしょうけれど。
「レイチェル様?」
噂をすれば、ね。
そちらへ視線を向けてうっかり板についた筈のポーカーフェイスが崩れそうになったわ。
振り返ったご令嬢もそうよ。
どういう精神攻撃を仕掛けてくるのかしら、この子は?!
「あなた····バトラーも顔負けでしてよ····」
力なく呟くブルグル公爵令嬢····あなたに同意するわ。
ケーキの乗ったお皿を小柄な11才が手から腕にかけて合計6枚乗せて器用にバランスを保っているわ。
あちらの娘は両手で1枚ずつ····盛られてる量は最初の1.5倍だけれど、妥当ね。
というか、それ、本当に全て食べきれるのかしら。
「他の皆様が並んでいるのを見るとつい」
へにゃりと気恥ずかしそうに笑うお顔は年相応で可愛らしいわね。
「あら、何事かしら?」
すました微笑みを浮かべる様は既に貴婦人とお呼びして差し支えない程堂々としてますわね。
その様子からも社交界での場数を色々と踏んでいるのを窺い知る事が容易にできますわ。
この卓より先に王妃様とお話されていた様子を観察していたけれど、経験から来る余裕が無ければ貴族女性の頂点とも言える王妃様とあのように気後れせずに振る舞うのは難しいでしょうから。
「姪とはいつからあのようなやり取りをされる仲に?」
「ふふふ、何年か前に私のお出ししたお手紙にアリアチェリーナ様がお返事を下さったの。
交流を持たせていただいたのはその時からですけれど、お会いしたのは本日で2度目になりますわ」
「まあ。
もしかして王子殿下の夏のお茶会以来という事ですの?」
姪が領以外でこのご令嬢とお会いするとすれば、それくらいしか考えられませんわね。
「ええ、その通りでしてよ。
その時に私と双子の兄があの方にとても失礼な事をしてしまいましたの。
かなりの枚数の謝罪のお手紙をお送りしたのだけれどあの後すぐに体調を崩されたようで、実際のお返事は数ヵ月後にいただく事となりましたわ。
ええ、私がお送りしたお手紙の枚数分だけきっちりと····」
目が黄昏たように見えたのだけれど何故かしら?
「その時から何度もお手紙でのやり取りをさせていただいて、本日お会いする事をとても楽しみにしておりましたのよ」
その表情からは嬉しさが滲みでていて嘘ではなさそうね。
「そうでしたの。
そちらの扇は姪にお手紙でご依頼下さったのね」
「ええ」
「身内の贔屓目を無しにしても、とても良く出来ておりますわ。
ですがこのように人目につくような会場で直接お渡しするなんて不躾な事をしてしまい、ご気分を害されてはおりませんか?」
「もちろん、そのような事はありませんわ。
夫人もお分かりではないかしら?」
ええ、もちろんよ。
魔力がない事や滅多に顔を出さないグレインビル侯爵家の養女という、本日のこのお茶会でも貴婦人達の1番関心を集める存在。
そんな幼い子供が誰も作った事のない美しく、かつ繊細なレースを間違いなく目立つ状況を作り上げて渡したのだもの。
とんでもない宣伝となった事は分かっているわ。
けれど聞きたいのはそれではない····。
「ではやはり····」
「細かい事情はお聞きしておりませんし、興味はありませんことよ。
ただ、私はあの方をご年齢通りの深窓の令嬢とは思っておりませんし、夫人のご令息と同じように、このまま公私共により良い関係になれる事を願っておりますのよ」
間違いなく確信犯ね。
恐らくは娘への何らかのフォローを姪は先にお願いしていたのだわ。
それも一昨日から昨日までのごくごく短時間で。
どうやって連絡したのかは謎ね。
少なくともわが家の影の目はすり抜けたみたい。
「ええ、私も息子共々これからより良い関係を築き上げたいと感じておりますわ」
できれば息子と婚約して欲しかったけれど、それは昨日断られてしまったものね。
予想通りだけれどその後のあの2人の保護者の怒りようは凄かったわ。
あそこで護衛している保護者まで転移魔法を使って職務中に来て客間から使用人が使う通路まで凍りづけにしたのは予想外だったけれど。
小心な夫と息子はひたすら謝っていたけれど、私はまだ諦めきれないのよ。
「ふふふ、そのようにお聞きしてしまうと、私の双子のお兄様も焦ってしまうかもしれませんことよ」
あらあら、牽制と宣戦布告かしらね。
恐らく既に打診してヘルトが握り潰しているわね。
あの姪を狙う令息がこんな所で見つかるなんて。
それに王子殿下のあの反応。
きっと気づいたのはあの子のすぐ隣にいた私と護衛役の筈なのに護衛対象に殺気立っていたあの義兄だけね。
あら、考えてみれば強敵だらけじゃない。
まあ最強の敵はヘルトでしょうけれど。
「レイチェル様?」
噂をすれば、ね。
そちらへ視線を向けてうっかり板についた筈のポーカーフェイスが崩れそうになったわ。
振り返ったご令嬢もそうよ。
どういう精神攻撃を仕掛けてくるのかしら、この子は?!
「あなた····バトラーも顔負けでしてよ····」
力なく呟くブルグル公爵令嬢····あなたに同意するわ。
ケーキの乗ったお皿を小柄な11才が手から腕にかけて合計6枚乗せて器用にバランスを保っているわ。
あちらの娘は両手で1枚ずつ····盛られてる量は最初の1.5倍だけれど、妥当ね。
というか、それ、本当に全て食べきれるのかしら。
「他の皆様が並んでいるのを見るとつい」
へにゃりと気恥ずかしそうに笑うお顔は年相応で可愛らしいわね。
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