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57.懐かしの香辛料
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「これはミン。
ブランドゥールでは各家庭でリーに入れるものは少しずつ違うんだけど、どの家庭もこれは必ず入れてるんだ。
最初に入れて、じっくり火を通してね。
こっちの黄色いのがメウ。
リーに色をつけたり、苦味がある。
これも大体の家庭で入れてるよ。
これはナモ。
苦味と甘味がある····」
落ち着いた低音ボイスに少しふわってした白虎なお耳がピコピコ動く優しげなお顔····とっても癒される。
うっとりしちゃうね。
はっ····じゃなかった!
今のお話は僕の前いた世界で言うと、クミン、ターメリック、シナモン、カルダモン、クローブ、ローレル、ナツメグ、コリアンダー、カイエンペッパーだ。
ニンニク、生姜、ブラックペッパーはうちの領でも採れるので買うのをやめたんだ。
リーは僕の中ではカレーの事だよ。
ウィンスさんが丁寧に説明してくれたおかげで、僕のあっちの世界での記憶とちゃんと融合した。
あっちでいた時、一時期ルーから手作りしたカレーにこりまくって毎日食べてたのが良かったね。
当時の幼馴染み達は最後は飽きてたまにしか食べてくれなくなっちゃったけどさ。
「じゃあ、それを全部4袋ずつ下さい」
「····そんなに買うのか?
ブランドゥールの住民でも数ヶ月分になるぞ」
ギザ耳のペルジアさんが呆れたように止めようとしてくれる。
「ふふふ、大丈夫です。
単体でも他の料理に使えそうですし、最初は失敗もすると思うので。
追加購入する時は、アボット商会に問い合わせしますね」
「良いお得意さんになってね。
ペルジアが学園にいる間は、ペルジアに連絡してくれてもかまわないよ」
「わかりました。
その時はペルジアさんもお願いします」
「ああ、もちろん」
僕はマジックバッグに香辛料を入れていく。
2人とも不思議そうに眺めているけど、やっぱり猫科の獣人さんは好奇心が強いんだろうなぁ。
兄弟だからかな。
雰囲気は違うのに、そういうお顔はよく似てるね。
支払いも済ませたので脱いでいた帽子に髪の毛を隠して立ち上がる。
「それじゃ、私はこれで失礼しますね」
「あ、待って。
ペルジア」
次の行く宛てが待ってる僕はすぐに出ようとしたんだけど、ウィンスさんが引き止める。
「わかってる。
アリー嬢、この後東の商会に行くなら送って行く。
昼間の祭りなら問題ないだろうが、最近行方不明事件が起きていて王都でも物騒なんだ。
そもそも祭りの時はスリや子供を狙った犯罪も起きやすいから出店側も注意するように言われてるしな。
それに大会で····その、君もかなり目立っていたし」
言い淀むペルジアさんに思わず苦笑しちゃった。
「あー、まぁ確かに。
行方不明事件て、犯人はまだ捕まってないんですか?」
「そうらしい。
事件は夜から朝方にかけて、この通りの3本向こうの通り周辺で起こってるって耳にした。
子爵家令息含めて中年の男女が数ヶ月で3人、服だけ残して忽然と消えるって新聞にも書いてたな。
心配する事はないとは思うけど、念の為だ」
「わかりました、ありがとうございます。
あの、気になるお店があったら寄りながらでもかまいませんか?」
何かあってもいけないし、お耳と尻尾の申し出を断るなんて無粋な真似をするほど僕は礼儀知らずではないのだ。
ここは素直に甘えよう。
あわよくばハプニングで尻尾の先っちょがぶつかるかもしれないなんて期待してる訳ではないよ。
「もちろんだ。
俺も兄貴達の代わりに見て周りたいしな」
「じゃあ、決まりだね。
お買い上げありがとう。
お口に合ったらご贔屓にしてくれると嬉しいな。
気をつけて楽しんでね」
素直に甘える僕にほっとしたのかお顔を綻ばせたウィンスさんに店先まで見送られる。
貴族令嬢なら獣人さんで、それも平民だと大体は断りそうだもんね。
僕達は西のブースを出て東のブースに向かった。
····あー、ちょっとふわってした白い虎耳と尻尾に心残りしか感じないよ····内緒だけど僕のとっても素敵な義兄様がちょこっとだけ恨めしい····本当にちょこっとだけだよ。
ブランドゥールでは各家庭でリーに入れるものは少しずつ違うんだけど、どの家庭もこれは必ず入れてるんだ。
最初に入れて、じっくり火を通してね。
こっちの黄色いのがメウ。
リーに色をつけたり、苦味がある。
これも大体の家庭で入れてるよ。
これはナモ。
苦味と甘味がある····」
落ち着いた低音ボイスに少しふわってした白虎なお耳がピコピコ動く優しげなお顔····とっても癒される。
うっとりしちゃうね。
はっ····じゃなかった!
今のお話は僕の前いた世界で言うと、クミン、ターメリック、シナモン、カルダモン、クローブ、ローレル、ナツメグ、コリアンダー、カイエンペッパーだ。
ニンニク、生姜、ブラックペッパーはうちの領でも採れるので買うのをやめたんだ。
リーは僕の中ではカレーの事だよ。
ウィンスさんが丁寧に説明してくれたおかげで、僕のあっちの世界での記憶とちゃんと融合した。
あっちでいた時、一時期ルーから手作りしたカレーにこりまくって毎日食べてたのが良かったね。
当時の幼馴染み達は最後は飽きてたまにしか食べてくれなくなっちゃったけどさ。
「じゃあ、それを全部4袋ずつ下さい」
「····そんなに買うのか?
ブランドゥールの住民でも数ヶ月分になるぞ」
ギザ耳のペルジアさんが呆れたように止めようとしてくれる。
「ふふふ、大丈夫です。
単体でも他の料理に使えそうですし、最初は失敗もすると思うので。
追加購入する時は、アボット商会に問い合わせしますね」
「良いお得意さんになってね。
ペルジアが学園にいる間は、ペルジアに連絡してくれてもかまわないよ」
「わかりました。
その時はペルジアさんもお願いします」
「ああ、もちろん」
僕はマジックバッグに香辛料を入れていく。
2人とも不思議そうに眺めているけど、やっぱり猫科の獣人さんは好奇心が強いんだろうなぁ。
兄弟だからかな。
雰囲気は違うのに、そういうお顔はよく似てるね。
支払いも済ませたので脱いでいた帽子に髪の毛を隠して立ち上がる。
「それじゃ、私はこれで失礼しますね」
「あ、待って。
ペルジア」
次の行く宛てが待ってる僕はすぐに出ようとしたんだけど、ウィンスさんが引き止める。
「わかってる。
アリー嬢、この後東の商会に行くなら送って行く。
昼間の祭りなら問題ないだろうが、最近行方不明事件が起きていて王都でも物騒なんだ。
そもそも祭りの時はスリや子供を狙った犯罪も起きやすいから出店側も注意するように言われてるしな。
それに大会で····その、君もかなり目立っていたし」
言い淀むペルジアさんに思わず苦笑しちゃった。
「あー、まぁ確かに。
行方不明事件て、犯人はまだ捕まってないんですか?」
「そうらしい。
事件は夜から朝方にかけて、この通りの3本向こうの通り周辺で起こってるって耳にした。
子爵家令息含めて中年の男女が数ヶ月で3人、服だけ残して忽然と消えるって新聞にも書いてたな。
心配する事はないとは思うけど、念の為だ」
「わかりました、ありがとうございます。
あの、気になるお店があったら寄りながらでもかまいませんか?」
何かあってもいけないし、お耳と尻尾の申し出を断るなんて無粋な真似をするほど僕は礼儀知らずではないのだ。
ここは素直に甘えよう。
あわよくばハプニングで尻尾の先っちょがぶつかるかもしれないなんて期待してる訳ではないよ。
「もちろんだ。
俺も兄貴達の代わりに見て周りたいしな」
「じゃあ、決まりだね。
お買い上げありがとう。
お口に合ったらご贔屓にしてくれると嬉しいな。
気をつけて楽しんでね」
素直に甘える僕にほっとしたのかお顔を綻ばせたウィンスさんに店先まで見送られる。
貴族令嬢なら獣人さんで、それも平民だと大体は断りそうだもんね。
僕達は西のブースを出て東のブースに向かった。
····あー、ちょっとふわってした白い虎耳と尻尾に心残りしか感じないよ····内緒だけど僕のとっても素敵な義兄様がちょこっとだけ恨めしい····本当にちょこっとだけだよ。
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