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37. 面白いことやろう
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37. 面白いことやろう
ツィリムにお姫様抱っこをされて、演習場だという所まで連れて行ってもらった。
エスサーシャさんも付いてきているからちょっとツィリムの機嫌は悪めだけど気にしない。
私が思ってたよりも貧相な建物で、一番近いイメージとしては地面が土のままの体育館、って感じかな。
むしろちょっと頑丈なテントっぽいかも。
そんなことを思いながら辺りを見回していると、カイルが合流してきてくれた。
「ツィリムの方の用事は終わったのか?」
こくり。無言で頷くツィリム。
「イズミが魔術が見たいって言うから、連れてきた。面白いこと、やろう」
「なるほどな。確かに、見せたことは無かったな。俺とツィリムはそれぞれ火と水の魔術を使うから、やろうと思えば派手なこともできるぞ!」
「ありがと!楽しみ!」
カイルやツィリムの言う『派手なこと』ってどんなのだろう?
私を隅のベンチに座らせて、2人は中央へ歩いていく。
「となり、失礼しますね~」
エスサーシャさんがそう言って隣に座ろうとしたら、ツィリムが全力で戻ってきた。
「ダメ。お前はこっち」
うん、ツィリムに引きずられて逆側のベンチに投げ捨てられるエスサーシャさんはちょっと面白かったよ。
2人は広い体育館の真ん中よりちょっと奥に並んで立ち、何か打ち合わせをしている。
……ふ、とツィリムと視線が合う。
いつもと違う、いつもよりもっともっと、綺麗で澄み切った瞳。
次の瞬間。
水で出来たドラゴンが、突然現れた。
その周りを鬼火のような色とりどりの炎が飛び回り非常に幻想的な光景に思わず大きく拍手をした。
「すごい、すごーい!」
紫色の鬼火が大きくなり、水のドラゴンを蒸発させる。
その大量の蒸気がスモークのようになり、それが晴れた時には汗だくの2人が立っていた。
「えっ、大丈夫!?」
「ん、大丈夫」
もうこれ以上ないくらいのドヤ顔のツィリムはめっちゃ可愛いんだけどそれはともかく。
「ちょ、こっち座って休んで!」
慌てて2人に椅子を勧めて、並んで座った2人の汗をハンカチで拭う。
「ありがとう。ツィリムと俺、比べないでくれよ?」
苦笑気味のカイルにそう言われて初めて、2人の負担の大きさを考えてみると、確かにツィリムの方が大変そうだ。なんとなくだけど。
「あ、比べただろ?あいつは別格だよ。師団でも勝てる奴はほとんどいない」
「そうなの?」
「出現させるものの質量は魔素の量が直接影響してくるから、ツィリムに勝てる奴も何人かいるが」
「えっ、あのドラゴンよりも大きいものって、スゴすぎない!?」
思わず途中で口を挟んでしまった。
「そこなんだよ、ツィリムのすごい所は。
実はあのドラゴンの中身は空っぽなんだ。
魔素の質が良いのを活かして、とても緻密なコントロールをしている。だから一番効果的な使い方が出来るし、まるで誰よりも沢山の物を出現させられるかのように見せられるんだ」
まるで自分の事のように自慢するカイルを見ていると、こっちまで嬉しくなってくる。
「ツィリムすごい……ちょ、大丈夫!?じゃないよね!?」
すごいね!と言おうと振り返ったらツィリムが真っ青な顔をして座っていた。
「カイル、どうしたらいい?寝かせる?」
「張り切り過ぎて魔素切れを起こしているんだ。しばらく寝かせておけば治ると思う」
「分かった」
2人で協力してツィリムをベンチに寝かせる。
気が抜けたからか意識を失ってしまったようで、ますます心配になる。
そうしていると、エスサーシャさんが近づいてきた。
「邪魔しない方がいいと思って見てたけど、カセスターニャがヤバい感じ?」
「ああ。魔素切れだ。しばらく寝かせるしかないだろうな」
「んじゃ、医務に行ってポーション貰ってくるわ。ないよりマシだろ」
小走りで去って行くエスサーシャさんを見て、ふと思った。
「あの人、あんな話し方だった?」
「普段はあんな感じだな」
「結構軽い感じの方なんだね。いつも丁寧に話してくれるからちょっと違和感あったよ」
「セラルシオなりに、イズミルに気に入られたいんだろうな」
「……なるほど」
アピールの一環だったのか……
いつも思うけど、婚活に必死過ぎないかなぁ……
ツィリムにお姫様抱っこをされて、演習場だという所まで連れて行ってもらった。
エスサーシャさんも付いてきているからちょっとツィリムの機嫌は悪めだけど気にしない。
私が思ってたよりも貧相な建物で、一番近いイメージとしては地面が土のままの体育館、って感じかな。
むしろちょっと頑丈なテントっぽいかも。
そんなことを思いながら辺りを見回していると、カイルが合流してきてくれた。
「ツィリムの方の用事は終わったのか?」
こくり。無言で頷くツィリム。
「イズミが魔術が見たいって言うから、連れてきた。面白いこと、やろう」
「なるほどな。確かに、見せたことは無かったな。俺とツィリムはそれぞれ火と水の魔術を使うから、やろうと思えば派手なこともできるぞ!」
「ありがと!楽しみ!」
カイルやツィリムの言う『派手なこと』ってどんなのだろう?
私を隅のベンチに座らせて、2人は中央へ歩いていく。
「となり、失礼しますね~」
エスサーシャさんがそう言って隣に座ろうとしたら、ツィリムが全力で戻ってきた。
「ダメ。お前はこっち」
うん、ツィリムに引きずられて逆側のベンチに投げ捨てられるエスサーシャさんはちょっと面白かったよ。
2人は広い体育館の真ん中よりちょっと奥に並んで立ち、何か打ち合わせをしている。
……ふ、とツィリムと視線が合う。
いつもと違う、いつもよりもっともっと、綺麗で澄み切った瞳。
次の瞬間。
水で出来たドラゴンが、突然現れた。
その周りを鬼火のような色とりどりの炎が飛び回り非常に幻想的な光景に思わず大きく拍手をした。
「すごい、すごーい!」
紫色の鬼火が大きくなり、水のドラゴンを蒸発させる。
その大量の蒸気がスモークのようになり、それが晴れた時には汗だくの2人が立っていた。
「えっ、大丈夫!?」
「ん、大丈夫」
もうこれ以上ないくらいのドヤ顔のツィリムはめっちゃ可愛いんだけどそれはともかく。
「ちょ、こっち座って休んで!」
慌てて2人に椅子を勧めて、並んで座った2人の汗をハンカチで拭う。
「ありがとう。ツィリムと俺、比べないでくれよ?」
苦笑気味のカイルにそう言われて初めて、2人の負担の大きさを考えてみると、確かにツィリムの方が大変そうだ。なんとなくだけど。
「あ、比べただろ?あいつは別格だよ。師団でも勝てる奴はほとんどいない」
「そうなの?」
「出現させるものの質量は魔素の量が直接影響してくるから、ツィリムに勝てる奴も何人かいるが」
「えっ、あのドラゴンよりも大きいものって、スゴすぎない!?」
思わず途中で口を挟んでしまった。
「そこなんだよ、ツィリムのすごい所は。
実はあのドラゴンの中身は空っぽなんだ。
魔素の質が良いのを活かして、とても緻密なコントロールをしている。だから一番効果的な使い方が出来るし、まるで誰よりも沢山の物を出現させられるかのように見せられるんだ」
まるで自分の事のように自慢するカイルを見ていると、こっちまで嬉しくなってくる。
「ツィリムすごい……ちょ、大丈夫!?じゃないよね!?」
すごいね!と言おうと振り返ったらツィリムが真っ青な顔をして座っていた。
「カイル、どうしたらいい?寝かせる?」
「張り切り過ぎて魔素切れを起こしているんだ。しばらく寝かせておけば治ると思う」
「分かった」
2人で協力してツィリムをベンチに寝かせる。
気が抜けたからか意識を失ってしまったようで、ますます心配になる。
そうしていると、エスサーシャさんが近づいてきた。
「邪魔しない方がいいと思って見てたけど、カセスターニャがヤバい感じ?」
「ああ。魔素切れだ。しばらく寝かせるしかないだろうな」
「んじゃ、医務に行ってポーション貰ってくるわ。ないよりマシだろ」
小走りで去って行くエスサーシャさんを見て、ふと思った。
「あの人、あんな話し方だった?」
「普段はあんな感じだな」
「結構軽い感じの方なんだね。いつも丁寧に話してくれるからちょっと違和感あったよ」
「セラルシオなりに、イズミルに気に入られたいんだろうな」
「……なるほど」
アピールの一環だったのか……
いつも思うけど、婚活に必死過ぎないかなぁ……
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