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34.おれの物なのに。
しおりを挟むよし、昨日焼いたクッキーはバスケットに入れて持った。
私が持っていくのはこれだけでいいはず。
ってことで出発だ!!
今日も歩きじゃなくてしっかり馬車を頼んでくれた私の旦那さんは優しい。
冷静に考えると、旦那の職場に行くって結構迷惑な気もするんだけど……
まあ考え始めたらわからなくなるしいいや。
本人達がいいって言ってくれてるし。
「ちなみに、魔術師団ってどんなところ?
こっちに転移してきた一番最初の頃に行ったと思うんだけど、あんまよく覚えてなくって。
正直あの時は自分のことでいっぱいいっぱいだったし」
「そうだなぁあの時にいたところは応接室とかで、結構綺麗なところが多かったからなぁ。
師団は普通にめちゃめちゃ汚いから」
カイルは何気なくそう答えるけど。
「汚いの?」
「いや、汚れてる訳じゃないんだけが、物が多い上に整理しない奴が多いから。
まあツィリムなんかそういう奴の代表格みたいなもんだ」
「あー、ツィリムはあんまりお片付けできない人だもんね」
「うるさい」
ホントにツィリムの部屋の汚さはネタになるレベルだから。
「こっちの家に引っ越してくる時も、寮の部屋を片付けるのに必死だったしね。
今の家のツィリムの部屋もほとんど魔界みたいになってるし」
「ああ、そうそう。ツィリムの部屋みたいなもんだ。
師団の事務所は全部あんな感じ」
「えっそれはさすがに汚すぎない?」
そんな雑談をしている間に、目的地に着いた。
カイルに連れられて入った建物は言われていたよりは綺麗だった。
別に普通の事務所って感じ。
でも、作りは一昨日に行った図書館と同じで結構ヨーロピアンなオシャレ系の建物。
女子がキャッキャしそうな感じだ。
「全然綺麗じゃない!」
「まぁ、外はな。一応ここは部外の人や偉い人も通るから綺麗にしてるが、ドアを開けて一歩中に入ったら魔境ができあがってる」
なるほど。それよりも困るのがすっごく視線を感じる。
「なんでこんなに見られてるの? 別にこの世界の女の人みたいに、他の男の人は怖いとかそういうことはないんだけど、正直引くというか……
そんなに注目しないでほしい」
ちょっとカイルの影に隠れるようにしたけど、そんなことで逃げられるほどの人数じゃなくて。
「まぁ、なんだかんだと噂になってたからなぁ」
カイルは笑ってるけど……
ちょっとは注目される側の気持ちにもなって。
「あっ、そうだ忘れてた」
カイルの影に隠れてたのをそっと前に出てみる。
「あのー、すいませんどなたか、えっとー……
クッキー食べる方いらっしゃいませんか?」
そっと声をかけてみると、皆わらわらと近づいてきた。
本当にワラワラって感じ。
「クッキー!?」
「クッキー、ありがとうございまーす!!」
ツィリムより若いんじゃないかっていう人もいるくらいで、上の人は35歳位かな?
思ってるより若い人が多いイメージ。
「あのー、私が作ったので美味しくないかもしれないんですが、口に合う方がいらっしゃったら食べてください」
「手作り!?」
「手作りだ!!」
「まじか、手作りだ!女性の手作りだ!」
何か手作りでめっちゃ喜んでもらえてるのは良かったと思う。
横でツィリムがすごい顔してるのが気になるんだけど。
「ツィリム? あのさ、またツィリムには別で作ってあげるから」
「イズミの作った物は俺のなのに」
「今度作ってあげるから、ね?」
そんなことを言ってる間に凄まじい勢いでクッキーはなくなった。
男の人ってあんまり甘党な人がいないイメージだったんだけど。
「ここは若い奴が多いから、独身の奴も多い。女性からの手作りクッキーなんだ初めて食べてる奴も多いだろうし、憧れなんじゃねえのか?」
そんなものか……
ちょっと怖いくらいの勢いでなくなったけど。
それに、絶対忘れずにツィリムの分を作ってあげなきゃいけないよね。
今日帰ったら焼こうっと。
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