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32.図書館
しおりを挟む明日行こうと言いつつ、ツィリムとカイルの予定が合わなかったから、後日に持ち越された。
私はちょっと文句を言ったけど、無理だってことがちょっとわかってたから大人しく待ってた。
そうして迎えた、お出かけの日。
普段みんなは歩いて通勤しているし、全然歩ける範囲だとは思うんだけど、うちの過保護な旦那様達は少しでも外を歩かせようとはしない。
わざわざ馬車を呼んでくれた。
そして着いた図書館は。
「うわあぁー!」
すごくカッコイイ建物だった。
よく考えたらこの世界に来た時にお城を見て以来あんまりこちらの大きい建物を見たことはなかったけれど、お城の中にある図書館はとってもかっこよかった。
ヨーロッパ系で建物自体がかっこいい感じの図書館。
中に入ると体育館の半分くらいの建物の中に、本棚が林立していた。
2階は吹き抜けになっていて、壁際にびっちり本棚が並んでいる。
本が高級だというこの世界なのに、私ですら見たことのないような本の量だった。
「ああ、すごくかっこいい! ハリーポッターみたい!」
「ハリーポッターってなんだ?」
「私の前の世界にあった物語のことで、魔法学校のお話なの。物語の中の世界に来たみたいってこと!」
ひとしきり建物や図書館自体に感動した後は、やっぱり本の中身が気になる。
端から一冊ずつ、背表紙を眺めていくだけでもとっても楽しくなってくる。
色んな言語で書かれているそうだけれど、私には文字の苦労はない。
だけど固有名詞や自分が知らない単語はわからないからいちいちカイルやツィリムに聞いてみる。
2人も、そんなに嫌そうな顔しないで答えてくれるし、何よりもテンションがめちゃくちゃ上がる。
昔から図書館好きなんだよね。
気になった本を1冊取り出してみる。
中をパラパラ開くと、魔法回路の基礎の本で丁寧に絵付きで説明してくれていた。
「あっ、これ読みたい」
そう言って自分の手元に抱え込む。
「これ、借りれるの?」
「俺とツィリムと合わせて4冊借りれる」
「じゃあこれ借りようっと」
まだまだ楽しく図書館を探検していると。
「えっ!? この本、本棚に鎖で繋がれてる」
「あぁ、それは古代の古文書だから、貸出もできないしなんなら持ち出しもできない。ここで読むだけっていう制度だから、持ち出されないように鎖で繋いであるんだ」
「へぇ、そんなものがあるんだ」
私のイメージする図書館って普通の公立の図書館だから、こんなものが私不思議でたまらない。
「ここで読むのは別にいいの?」
「問題ない。立って読むことになるが……」
「別にそれは構わないんだけど。何書いてるのかなぁ?」
「古文書だから読むのは面倒だぞ? 読めるか?」
「私、そもそもこの世界の文字知らないから、全然大丈夫だよ。普通に読めてる」
「それは便利だなぁ」
カイルと2人で話していると
「イズミ、今度俺の研究書類読んで?」
ツィリムにそう言われる。
「そっか、みんなは読めないけど私が読めるものがあるんだ。なんだか不思議だね。みんなの方がこの国の人なのに」
そうやってフラフラと図書館の中を歩いて回るだけでもすごく楽しかったんだけど。
「あっそうだ! 文化とかマナーとか、この国のことについて書いてる本ってあるかなぁ?」
何ともなしに放った独り言にツィリムが答えてくれた。
「探したことないから知らない」
「そっかじゃあ誰かに聞いてみよう」
「聞いてくる」
ツィリムが行ってくれようとするけど。
「いや、いいよ。自分で行くから。
さっき入口に、司書さんみたいな人がいたし、あの人に聞いたらわかるんじゃないかな?」
そう思ってカウンターへ行ってみる。
自分で行った方が早いし、思った物を聞けるから。
「あの、すいません。今、よろしいですか?」
「はい、如何しましたか?」
少し驚いたような顔をされたけれど、気にせず聞いてみる。
「この国の文化とかマナーについて書いてる本を探してるんですが、ここにはありますでしょうか?」
司書さんは少し考えるように宙を見てから答えてくれた。
「ここは主に魔術に関する本を扱っているところですので、そのような本は置いておりません」
「あー、そうですか」
ちょっと残念。
「その様な本でしたら、むしろ世俗の物語本などがいいんじゃないでしょうか?
文化についてだけ書いている本というのはあんまり聞いたことがないので」
「そうですか、ありがとうございます。
だってさ、ツィリム、今度また探しに行こう?」
思ったような本がなかったのは残念だけど、他の所に探しに行く楽しみが出来たと思おう。
「この本、魔法陣がいっぱい書いてる!」
私がイメージするような魔法陣。
今まで見たことがなかったんだけれど、ここの本の中には書いてた。
「というか、『魔術陣』じゃないんだ」
「魔法陣は、魔法しか使えない人が大きな魔術を打てるために使うものなんだ。
魔術を使える人が編んでおいて、それを使う。
でも準備にすごく手間がかかるからあんまり早く打てないのが問題かな。
でも、時間をかけて数を揃えればかなりの戦力になる」
私の疑問に、ツィリムがスラスラと答えてくれる。
「面白そう、読んでみようっと」
そうやって自分の好みで選んでみて、上限の4冊まで借りた。
「連れてきてくれてありがとう。めちゃくちゃ楽しかった!」
「あんまり普通の女性が喜ぶところじゃないとは思ったが、思ってたより喜んでくれてよかった。
ここならいつでも来れる」
「じゃあ、また連れてきてね」
「どちらかが勤務時間なら、俺かツィリムの片方だけでも来れる。またいつでも言ってくれ」
「ホントに!? じゃあこれ読み終わったらまた連れてきてね!」
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