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11.エルフの騎士

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とにかく次々とやってくる人に挨拶していく。

「はじめまして、俺はケインテット隊長の下で副隊長を務めています、ディスティアス・カルセンタです。よろしくお願いします」

おお、イケメンの爽やかな笑顔。
いつもカイルとツィリムが着ているような裾の長いローブを着ていて、オレンジ色の髪と瞳。
この世界の人は基本的に髪と瞳の色は同じみたい。
配色はファンタジーすぎるけどね。


ただでさえ他の部隊長さんやカイルの部下の方など、覚えきれないくらいたくさんの人がいるし、西洋っぽい顔だから正直判別がつかない。
イケメンなんだけどねえ……

向こうも私に顔覚えてもらおうとは思っていないみたいで、自己紹介をさらっと流してくれるけど、なんだか申し訳ないなぁ。

あっ、ちなみにケインテット隊長ってカイルのことね?
違和感すごいけど、お仕事のカイルを見れたみたいでちょっと嬉しい。



私がこんなに色々考えている理由はみんな私を空気のように扱ってて、誰も私に挨拶以外話しかけないから。
この国の文化は女性は座ってニコニコしてるだけっていう、お人形さんみたいな扱いらしい。




副団長さんとカイルが話しているのを聞きながら料理をつまんでいるけど、正直暇だ。
ツィリムが隣にいてくれるけど何か話すわけでもないし……


暇を持て余していると、黄緑の髪と瞳の人がやってきた。
部分的な鎧みたいなのを身につけていて、この国では珍しい、あまり起伏の大きくない顔。
でも切れ長の目と整った顔のイケメンさんで、スケート選手の羽生〇弦みたいな感じ。
でも一番気になるのはそこじゃなくて……

この人耳が尖ってるの!
めっちゃファンタジーだ!

髪や瞳の色には徐々に慣れていた私だけど、新たなファンタジー要素を見つけてテンションが上がった。

「耳がかっこいいですね、妖精さんみたい!」

カイルと話すのを待ってるようだったので声をかけてみた。
黄緑さんはあっけにとられて固まってしまい、私はあごをツィリムに掴まれ無理矢理ツィリムの方を向かされた。


「気軽にかっこいいとか言うな!」


あっ、やらかした……
さっき、挨拶の失敗の時はまだ笑ってくれてたけど、ツィリムの目がマジだ。
貫通されそうなほど強い視線。

「分かった、ごめんなさい。そんなに深い意味があった訳じゃないから」

「イズミにそのつもりがなくても相手は本気にするからダメ!」

「ごめんなさい」


ここでやっと固まっていた黄緑さんが復活してくれた。

「大丈夫ですよ、異世界から来た方で少しこちらのことがよくわからないでしょうから」

ツィリムの視線が少しだけ和らぎ、あごも解放してもらえた。

「申し遅れました、王宮騎士団第2部隊隊長のエスサーシャ・セラルシオです。
俺はエルフという人種で耳が少し長く尖っているのが特徴なんですよ」

エルフと聞いて妖精を想像したけど、この世界では肌の色が違う程度の違いしかないらしい。

「他にもエルフは魔術が得意な人が多いですね。
隣国のシャーラセルラはエルフが主に住む国で、魔術研究に力を入れています。俺もその国の出身ですね」

へぇー、魔術の国かぁ

「私の故郷には魔術がなかったので、シャーラセルラにも行ってみたいです!」

この国に少し慣れたら他の国にも行ってみたいなぁ……



「セラルシオが気に入ったか?」

副団長さんとの話を終えたカイルが話しかけてきた。

「暇だから話し相手になってもらってたの。元の世界にはエルフさんっていなかったから」



「ケインテット隊長、いつもお世話になっています」

エスサーシャさんはカイルと話し始め、カイルも私を会話に入れる気はなさそうなので、また暇になった。

ご飯を食べながら2人の会話を聞く。

話の内容を聞いている限り、王宮騎士団と王宮魔術師団は両方王宮の警護をしているみたい。
別の組織と言うよりは物理担当と魔術担当くらいの違いみたいで一緒に仕事をする機会が多いっぽい。

エルフは魔術が得意な人が多いって言ってたけど、エスサーシャさんは物理担当の騎士。なんでだろ?




「次取ってこようか?」

ちょうどご飯を食べ終わった私にツィリムが声をかけてくれるけど、バイキング形式なので自分で見に行きたい。
そう言うと少し驚かれたけど、ツィリムは私が変なことを言うのに慣れてきてるから、カイルに聞きに行ってくれた。

エスサーシャさんとの会話を中断してカイルが来てくれた。申し訳ない。

「イズミルが、自分で何でもしたいのはわかるから取りに行こうか」

別に1人で行けるけど、カイルとしては最大の譲歩だろうから一緒に行ってもらう。


綺麗に並んだ様々な料理に心が躍る。
色々な種類が食べられるように小さく切り分けられて綺麗に盛り付けてある料理を少しづつ取っていく。

料理はさっきから食べているから、私が取りに来たメインはデザート!
女子は甘いもの好きだからね!

色とりどりのプチケーキを取り分ける。
この国の文化にまだ慣れてない私はぱっと見ただけじゃ何味かがわからないから、カイルが横からひとつひとつ解説してくれる。

イチゴ、ナッツ、はちみつ……

色んなケーキをお皿に盛り付けて、テンション上がる!


この行動で『カイルセル・ケインテットは変わった女の夫になった』と認識されてしまったっぽいけど、異世界から来たのだからと思ってもらえてるみたいだった。

カイルも気にしてないみたいだし、いいかなぁ……

色々やらかしてしまったけど、この世界のことを勉強しなきゃいけないなってことに気づいたし、楽しいパーティーだった。










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