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第一章 ドラゴンの呪い

8  バニー『ドキドキ! 魔力測定』

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「さあ、バニーよ、魔力の測定をするがよい……」
「はい、学長」

 不思議です。
 バニーが、こうやって手をかざすと、水晶玉はきらきらと輝きます。
 魔導の周波数を検知し、その特性によって輝く色を変えている。
 そう推測できますが、バニーの色は、虹色なのですね。不思議……。
 まわりの生徒たちが、こちらを見て、

「わー! すっげぇ」
「え? チビ助バニーってこんなに魔力があったの?」
「いつもバトルフィールドのすみっこで立っているだけのバニーがぁ!?」
「ねえ、この輝きって……女神レベルじゃない?」
「まじかよ……」

 などと言っていますが、バニーは見せ物ではありません。
 あまり、こちらを見ないでほしい。
 はい、お察しの通り、バニーの母は女神です。
 母は人間と恋をしました。いけない恋です。
 そして、この腐敗した世界に、バニーは落とされました。
 女神と人間のハーフ。
 それは、この王都ペンライトにとって、決していいことではありません。
 女神の力は遺伝する。絶大な力が商売になる。争いにつながる。
 そう、バニーは思っているのです。
 だから隠さなくてはならない、と思っているのですが……。

 ──あ、やっちゃった。

 あまりにも美しい虹の輝きに、つい本気を出してしまいました。
 いけない、いけない。

「あのぉ、学長……すいません」
「おお! バニー、すごいではないか……こんな力を秘めておったとは!」
「いえ、これは違うんです」
「ふぉえ? バニー、なにを言っておるんじゃ?」
「学長ぉ、やっぱり、この魔力測定なしにしてもらえませんか?」
「ふぉえ?」
「バニーは不合格でかまいません」
「ふぉえ?」
「キララ様と同じく、不合格にしてください」

 いや、無理じゃ、と学長は首を振ります。
 えええ? こんなのなしなし、目立ちたくなんてありませ~ん。

「そこをなんとかなりませんか? 学長ぉ」
「ん~、この水晶玉はのぉ、ギルド館や王立図書館などとつながっておるからなぁ」
「え? それってまさか……」
「うむ、就職に有利なように、全生徒の魔力は各地に配信する。それが我が校のモットーじゃ」
「……つまり、このまま行くとバニーは?」
「うむ、聖騎士団からお仕事体験の案内がくるじゃろうなぁ」
「きゃあああ!」
「おおお、びっくりしたぁ! 腰が抜けるかと思ったわい」

 と、学長は驚いていますが、驚いているのはこちらのほうです。
 まずいです。非常にまずいです。
 バニーが聖騎士になっては、まずいです!
 聖騎士になれるのは、魔法学校フロースでだけ。
 そう、バニーのたった一人の親友、キララちゃんの憧れの職業。
 それが『聖騎士』なのですから……。

「あああ! 学長ぉ、バニーを不合格にしてください」
「……だめじゃ」
「不合格にしてください」
「……だめじゃ」
「不合格に……」
「バニーよ、キララのことを思っているようじゃが、あんずるな」
「え?」
「キララは必ず魔力を取り戻して帰ってくる」
「……あ」

 うむ、とうなずいた学長は、ひげもじゃを指で触りました。
 心配でたまりません。
 学校で一番強かったキララちゃん。
 彼女の魔力がなくなるなんて、おかしいです。
 いったいキララちゃんに、何があったのでしょうか。
 何者かが罠に嵌めた? でも、いったい誰が?

 ──キララちゃん……。
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