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第一章 ドラゴンの呪い

3  キララ『キャンディ』

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「おーほほほほほっ」
「この声は、キャンディ!?」

 私とバニーちゃんは、さっと振り向く。
 背の高い女子生徒が、ゆったりと近づいてくる。
 舞踏会にでも行くのか? 制服のスカートは、やけに短い。
 鼻の下をのばす男子生徒たちが、キャンディのすらっとした生足を見ている。
 まったく、男子ってみんなエチエチなんだから……。
 
「おーほほほ、キララさん」
「……キャンディ、何かよう?」
「あらあら、キララさんが魔法を使えなくなって泣いている……と小耳にはさんだものですから心配で見にきたのですわ」
「それはわざわざ、どうも」

 おーほほほ、と笑うキャンディは、ふわりと金髪をかきあげた。
 はぁ、姫の話はまだまだ続きそう。

 ──キャンディ、王都ペンライトの姫。

 働かなくてもいいはずなのに、なぜか魔法学校に通っている。
 どうでもいいことだけど、スタイル抜群で民たち(男性)から人気者。
 魔力もそこそこあり、私とともに勇者パーティに入りたいようなんだけど……。
 まったく人の話を聞かないのよね、このデカ姫は。
 
「で、キララさんはなぜ魔法が使えないのですか?」
「それが、私にもわからない……」
「あら、困りましたわね」
「……うん」
「もう、そんなことでは勇者パーティに入れませんよ、キララさん」
「はぁ?」
「勇者が求めるのは、やはり即戦力! ガンガン魔物を倒して、いざとなったら回復もできる魔法使いが必要なのですわ」
「いや、私は聖騎士になりたいんだけど」
「悲しいでしょうね。勇者パーティに入れないなんて」
「だから、私はっ!」

 すると横から、ぽんっと肩を叩かれた。
 バニーちゃんが、ちょっと冷静になるようにうながす。
 
「ところでキララ様、昨日は魔法を使えたのですか?」
「うん、ばっちり使えた!」

 なるほど、と言ってバニーちゃんは、整った小さな顔に指先をふれた。
 何か考え事をしている様子。推理しているのだろう。
 
「昨日は冒険していましたよね、キララ様。どちらに?」
「うん、ソイーネの森に行ってきた。化粧水に使う薬草が欲しかったの」
「ふむふむ、で、何か変わったことは?」
「うーん、ドラゴンの親子が魔物に襲われてたから助けた……」
「すごい! さすがキララ様っ!」
「えへへ、ベビードラゴンが可愛かったの!」
「きゃぁぁ、あのあの、どのようなドラゴンですかぁ?」

 えっと、と言った私は、昨日の記憶を思い出す。
 そういえば、昨日、私は泣いていたっけ……。
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