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第5章 探偵編
1 ケリーの母性本能
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朝の光がレースカーテンを透かし、ダマスク柄の模様をほのかに浮かばせる。
清潔に保たれた室内に、寛ぐためだけに設計されたインテリアが置かれている。
グレイホワイトのカウチ。
角のない美しい曲線を描いた丸いテーブル。
白で統一された寝心地のよさそうなキングベッド。
皺がついたベットシーツ。
ベッドの下に散らばった衣服。
真っ白な掛け布団とシーツの間から、かすかに見えるブロンドヘア。
「むにゃ、むにゃ……」
寝癖のついたブロンドヘアの頭が出てきた。
ケリーであった。
頭をかくと、部屋をキョロキョロと見まわす。
あら? ここは?
たしか、ラグジュアリーホテルのスィートルームだった。
ふと、ベッドの温もりが名残り惜しいのか、もう一度寝転んだ。
すると、違和感を感じて身をよじった。
あれ?
とりあえず枕元にあった下着だけつけて起き上がるとバスルームへ向った。
しかし、誰もいない。
トイレか?
いや、いない。
昨夜一緒に泊ったはずのミサオは跡形もなく消えていた。
ちょうど洗面台の鏡の前に立ったケリーの顔が写る。
果たして自分の顔は一体どんなになっているのだろうか。
ケリーは鏡に写った自分の顔をまじまじと見つめる。
そこには、化粧を落としていない昨夜のままのケリーが写っていた。
「ああ、やっちゃった……」
ケリーはそうつぶやくと、クレンジングオイルを手に取りメイクを落とし、ついでに洗顔を始めた。
綺麗サッパリにタオルドライまですると、やっと昨夜のことを改めて思い返すことができた。
一時の過ち、そうね、そんな言葉がちょうどいい。
ケリーは昨夜のことを振り返る。
抱きしめたミサオは震えていた。
しかし、声はしっかりしたもので、
「大丈夫、大丈夫……」
と言って歩き出す。
黙ってケリーはその後を追った。
たどり着いたのはここのホテルだった。予約はすでに取ってあるらしい。
部屋に入るなり、二人は導かれるようにベッドルームに入っていく。
そのあとのことは、どうだったかしら?
いやん、恥ずかしい……。
だけど、もちろん覚えている。
昨夜のことを振り返る。
ケリーはベッドに腰を下ろした。
「どうしたの?」
と、上目づかいに問いかける。
「……」
なかなか返事をしないミサオにケリーは痺れを切らす。
「エッチしてもいいですか?」
「そ、そ、それは……」
「ダメですか?」
「うーーーーーーん」
ケリーは完全に困ってしまって、
「あ~ん、どうしよ。あ~ん」
と、艶のある声をだして悩む。
なんかいいアイデアはないの?
どうしたケリー?
頑張れケリー?
ミサオは、自問自答するケリーをほかって立ち上がる。
厚手のカーテンを開けて高層ビルからの夜景を眺めた。
ミサオは本能を覚醒していた。
子孫を残さなければならないことに。
だが、ケリーをここに連れてきたのは他にも理由がある。
それは、ソフィアにフラれて傷ついた心を癒したい気持ちの表れだった。
利用されたケリーだが、ミサオは大切な人なのでほっとけなかった。
すると、ケリーは何かひらめいたのか。
調子よく手を叩いた。
「よし! エッチはダメだけど、一緒に寝ましょう!」
「え?」
「さあさあ、服なんか脱いで脱いで」
ケリーはベッドから飛び起きた。
服を脱がされていくミサオは呆気に取られる。
二人は一糸まとわぬ姿で柔らいキングベッドへと潜り込んでいった。
ミサオは、まるで子どもになったように丸くなり、ケリーの中にある優しさと温かみのある母性に包まれていった……。
一線は超えていない。
そんな言葉がちょうどよかった。
そして翌朝……。
洗顔し完全に目を覚ましたケリーは、カーディガンのポケットに入っているスマホを取り出した。
メールをチェックすると、ミサオからメールが受信されていた。
おはよう。ケリー、昨日はありがとう。
あれから色々考えたんだけど、僕は予定通り日本に帰ることにするよ。
でも、その前にやることができました。
ケリーも見たでしょう?
ソフィアの不思議な現象のことです。
俺はソフィアのことが好きでした。
でも、ソフィアのことは本当は何も知らなかったのです。
いや、フラれた今となっては知らないままの方がいいのかも知れません。
だけど、幸いにも僕には日本に帰るまで少し時間があります。
ソフィアにもう一度会いたいというのが本音ですけど(笑)
ちょっとソフィアを探してみたいと思います。
夕方までには帰ります。
あと、展望レストランで朝食を食べていってください。
すべて会計は済ませてあるので、僕の名前を受付で言えば通れます。
それと、異国の朝食コーナーに日本の卵焼きがありましたよ!
ぜひ参考にしてみてください(笑)
では、良い一日を!
ケリーはクスッと笑うと指先でスマホをタッチした。
画面には可愛らしいOKスタンプが打ち込まれていた。
清潔に保たれた室内に、寛ぐためだけに設計されたインテリアが置かれている。
グレイホワイトのカウチ。
角のない美しい曲線を描いた丸いテーブル。
白で統一された寝心地のよさそうなキングベッド。
皺がついたベットシーツ。
ベッドの下に散らばった衣服。
真っ白な掛け布団とシーツの間から、かすかに見えるブロンドヘア。
「むにゃ、むにゃ……」
寝癖のついたブロンドヘアの頭が出てきた。
ケリーであった。
頭をかくと、部屋をキョロキョロと見まわす。
あら? ここは?
たしか、ラグジュアリーホテルのスィートルームだった。
ふと、ベッドの温もりが名残り惜しいのか、もう一度寝転んだ。
すると、違和感を感じて身をよじった。
あれ?
とりあえず枕元にあった下着だけつけて起き上がるとバスルームへ向った。
しかし、誰もいない。
トイレか?
いや、いない。
昨夜一緒に泊ったはずのミサオは跡形もなく消えていた。
ちょうど洗面台の鏡の前に立ったケリーの顔が写る。
果たして自分の顔は一体どんなになっているのだろうか。
ケリーは鏡に写った自分の顔をまじまじと見つめる。
そこには、化粧を落としていない昨夜のままのケリーが写っていた。
「ああ、やっちゃった……」
ケリーはそうつぶやくと、クレンジングオイルを手に取りメイクを落とし、ついでに洗顔を始めた。
綺麗サッパリにタオルドライまですると、やっと昨夜のことを改めて思い返すことができた。
一時の過ち、そうね、そんな言葉がちょうどいい。
ケリーは昨夜のことを振り返る。
抱きしめたミサオは震えていた。
しかし、声はしっかりしたもので、
「大丈夫、大丈夫……」
と言って歩き出す。
黙ってケリーはその後を追った。
たどり着いたのはここのホテルだった。予約はすでに取ってあるらしい。
部屋に入るなり、二人は導かれるようにベッドルームに入っていく。
そのあとのことは、どうだったかしら?
いやん、恥ずかしい……。
だけど、もちろん覚えている。
昨夜のことを振り返る。
ケリーはベッドに腰を下ろした。
「どうしたの?」
と、上目づかいに問いかける。
「……」
なかなか返事をしないミサオにケリーは痺れを切らす。
「エッチしてもいいですか?」
「そ、そ、それは……」
「ダメですか?」
「うーーーーーーん」
ケリーは完全に困ってしまって、
「あ~ん、どうしよ。あ~ん」
と、艶のある声をだして悩む。
なんかいいアイデアはないの?
どうしたケリー?
頑張れケリー?
ミサオは、自問自答するケリーをほかって立ち上がる。
厚手のカーテンを開けて高層ビルからの夜景を眺めた。
ミサオは本能を覚醒していた。
子孫を残さなければならないことに。
だが、ケリーをここに連れてきたのは他にも理由がある。
それは、ソフィアにフラれて傷ついた心を癒したい気持ちの表れだった。
利用されたケリーだが、ミサオは大切な人なのでほっとけなかった。
すると、ケリーは何かひらめいたのか。
調子よく手を叩いた。
「よし! エッチはダメだけど、一緒に寝ましょう!」
「え?」
「さあさあ、服なんか脱いで脱いで」
ケリーはベッドから飛び起きた。
服を脱がされていくミサオは呆気に取られる。
二人は一糸まとわぬ姿で柔らいキングベッドへと潜り込んでいった。
ミサオは、まるで子どもになったように丸くなり、ケリーの中にある優しさと温かみのある母性に包まれていった……。
一線は超えていない。
そんな言葉がちょうどよかった。
そして翌朝……。
洗顔し完全に目を覚ましたケリーは、カーディガンのポケットに入っているスマホを取り出した。
メールをチェックすると、ミサオからメールが受信されていた。
おはよう。ケリー、昨日はありがとう。
あれから色々考えたんだけど、僕は予定通り日本に帰ることにするよ。
でも、その前にやることができました。
ケリーも見たでしょう?
ソフィアの不思議な現象のことです。
俺はソフィアのことが好きでした。
でも、ソフィアのことは本当は何も知らなかったのです。
いや、フラれた今となっては知らないままの方がいいのかも知れません。
だけど、幸いにも僕には日本に帰るまで少し時間があります。
ソフィアにもう一度会いたいというのが本音ですけど(笑)
ちょっとソフィアを探してみたいと思います。
夕方までには帰ります。
あと、展望レストランで朝食を食べていってください。
すべて会計は済ませてあるので、僕の名前を受付で言えば通れます。
それと、異国の朝食コーナーに日本の卵焼きがありましたよ!
ぜひ参考にしてみてください(笑)
では、良い一日を!
ケリーはクスッと笑うと指先でスマホをタッチした。
画面には可愛らしいOKスタンプが打ち込まれていた。
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