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第2章 ピアノコンクール編

5 ソフィアは眠ったまま演奏していた

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  黄金色に輝く舞台の下で、審査員のアランが驚愕の念を抱いて震えている。
  
  表情は恍惚しており、まるで最愛の人物と再会をしているかのようだ。
  
  両指を絡め、祈りを捧げながら小さな声を漏らす。
  
「おお!  神よ!  彼女はまさしくデヴィッド・モルガンの末裔だ」

  ソフィアは座ったまま目を閉じている。
  
  指は鍵盤の上で猫のように丸く固まっている。
  
  先ほどまでハーモニーという名のうねりをあげていたスタインウェイ・グランドピアノは、封じ込められていた魔力を解放したかのように沈黙していった。

  ソフィアは立ち上がる気配がまるでない。
  
  うなだれて耳元のイヤリングが煌めきながら揺れている。
  
  舞台上にいる男性スタッフは衝撃的なハーモニー受けて放心状態だ。
  
  ふと時間が気になり我にかえる。
  
  腕時計の針を見ると、時刻8:53を指していた。
  
  焦りの表情を浮かべながら、ソフィアへ駆け寄る。
  
  ソフィアを覗き込むと、つぶらな瞳を閉じた眠れる美女となっていた。
  
  まさかキスして起こすわけにもいかず、ソフィア様と声をかける。
  
  だが、ソフィアは目覚めることなく、首はこっくりとうなだれている。
  
  男性スタッフはセクシーなソフィアの肩に触れるのを躊躇するものの、意を決して肩を揺する。
  
  だが、ソフィアはなかなか起きない。
  
  たまらず激しく肩を揺さぶる。
  
  ソフィアは、ハッ!  と目を大きく開けて背筋を伸ばす。
  
  まるで電車で降りる駅を乗り過ごした乗客のように、辺りを見回す。
  
  そして、不敵な笑みを浮かべる。
  
  祈り続けているアランを一瞥すると、ソフィアは暗闇の舞台袖へと姿を消した。
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