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プロローグ

2 人は見た目で判断してしまう生き物です

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  俺は喜怒哀楽を表に出すのが下手だ。
  
  眼鏡をかけていて笑わってないと怒っているのかとよく間違われる。
  
  なんてこった。
  
  男子生徒から、
  
 「あいつ根暗だな」
 
  と言われたことがある。
  
  くそー!  でも良いところもあるはずなんだが!
  
  髪は長めでサラッと流れている。
  
  軽くワックスがつけてあって束感がある。
  
  肌もきめ細かく清潔感がある。
  
  童顔な顔の割に肩幅が広く胸板も厚い。
  
  鍛えられた筋肉のせいで制服がちょっとキツい。
  
  自称、脱いだらすごいタイプ。
  
  女子が見たいところはそれだけでは終わらないはずだ。
  
  ポイントが高く評価されるのは手だ。
  
  綺麗で長い指先にうっとりするらしい。
  
  と、その時、
  
  キンコンカンコーン♪

  授業が終わった。
  
「ソレミドー」
  
  俺はチャイムに同調した。
  
  ウーンと、両手を上げて伸びをする生徒。
  
  ガタガタと、もうすでに身仕度を整えて席を立つ生徒。
  
  コツコツと、黒板の英文に関する和訳を必死にノートを取る生徒。
  
  耳を澄ませクラス全員の音を個別に聴いてみる。
  
  助言してくれた女子は誰だろう?
  
  さらに会話を聴き取ろうと集中する。
  
  目を閉じると色々な音が鼓膜の中に入ってくる。
  
  集めた音を分別していらない音をすてる。
  
  ラジオ放送局の周波数を探すように、女子の声に同調する。
  
  女子の声はおおよそ3パターンのミュージックに選局されていた。
  
  嬉々とする笑い声はポップミュージック。
  
  安堵するため息じみた声はジャズミュージック。
  
  上流階級に属している高貴な声はクラシックミュージック。
  
  助言の声は、おそらくクラシックだな……。
  
  その方向を見ると、二人の少女が談笑していた。
  
  助言した子はどちらだろうか?
  
  あの声は……。
  
  二人の会話に意識を集中させる。
  
  だが、雑音が混ざり同調できない。
  
  生徒たちが一斉に帰宅を始める。
  
  教室はごった返す。
  
  少女たちの話し声は生徒たちの雑音で上手く聴き取れない。
  
  あの声は……。
  
  デリケートで繊細な優しい声だった。
  
  ガヤガヤガヤガヤ!
  
  ちっ!  雑音で声が聞き取れず分析できない。
  
  こうなったら見た目で判断しよう。
  
  俺は少女たちの特徴を探ることにした。
  
  一人は背が高く170センチはありそうな少女だった。
  
  頬は薄ピンク色に常に染まっている。
  
  軽くチークをつけているのであろう。
  
  先生にバレない程度に薄い化粧を嗜んでいる。
  
  そんな彼女なら男のことなど気にせずに高いヒールを履いて170センチは超えてくるであろう。
  
  だが、僕の背は178センチある。
  
  負けた気はまったくしない。
  
  さらに彼女のスタイルを観察する。
  
  背の高さの割におっぱいは小さめかな……。
  
  夏用の制服は生地が薄く、水色のブラジャーが透けて見える。
  
  丸みよりもおっぱいの先端がツンと主張している。
  
  背が高くてもおっぱいは相応に大きくなるとは限らないらしい。
  
  女子にも色々と悩みがあるのでだろう。
  
  それにしても、運動神経が良さそうだ。
  
  彼女は長い手足を持て余すように、両手を伸ばし器用にストレッチしている。
  
  癖なのか狙ってるのか?
  
  足を組み替えてはスカートの中にある白い太ももをチラつかせる。
  
  うわ!
  
  スカートの奥が見えそうだ。
  
  ずっと見ているとドキドキしてくる。
  
  ふう……。
  
  気を取り直して彼女を顔を見る。
  
  ボブヘアの片方を耳にかけている。
  
  大きな瞳をつむってニコニコ笑う。
  
  うーん、彼女じゃなさそうだな……。
  
  というのも、間接視野に入ってくるもう一人の少女が気になった。
  
  大人しそうな雰囲気、線の細い目鼻立ち、どことなく古風な雰囲気だ。
  
  まるで神宮参りの太い巨木や赤い鳥居を通ったような気持ちになる。
  
  彼女の背の高さは160センチほどだろう。
  
  華奢な手足とは裏腹にムッチリとしたお尻をしている。

  さらに上を見ていこう。
  
  ポワンと膨らんだ大きなおっぱいがどうだ!
  
  と、いわんばかりに主張していではないか。
  
  おっぱいに視点を集中させると精神的にまずいな……。
  
  ふう……。
  
  気を取り直して彼女を見てみよう。
  
  癖なのかドライアイなのか?
  
  まばたきを繰り返している。
  
  瞳は黒く大きい。まつ毛は人形のように長い。
  
  端正な鼻筋の下に、プックリとした淡いピンクの唇が花のように咲いている。
  
  彼女の唇を眺めていると胸がドキドキするな……。
  
  ふう……。
  
  刺激の少なそうな髪へと視線を移そう。
  
  黒髪はストレートで肩ほどまである。
  
  まるで天使の輪っかのように艶やかに輝いている。
  
  神はディテールに宿るという。
  
  彼女の髪の毛を見ていると、一本一本絡まることなくサラサラとしていて、心が清らかになる。
  
  まさに彼女の髪は神がかっている!  髪だけに!
  
  あ!
  
  美少女二人は鞄を肩に引っ掛けた。
  
  行き先が決まったのか、教室を出てこうとしていた。
  
  あ……。
  
  どうしよう……。
  
  このまま何事もなかったように過ごすか?
  
  それとも話しかけてありがとうと言うべきか?
  
  ……。
  
  よし!
  
  一か八か話しかけてみよう!
  
  急いでリュックに教科書やノートを入れる。
  
  身支度を整えて教室を出た。
  
  二人の姿は廊下にはない。
  
  おそらくもう階段を降りて下駄箱の辺りにいるはずだ。
  
  急いで3階から階段を2段飛びで駆け下りる。
  
  一生懸命に二人の少女を追いかけて……。
  
  いた!  
  
  ちょうど靴に履き変えて膝を曲げてコンコンと地面をノックしていた。
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