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 青年時代

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 ぎちぎちに縄で緊縛されているヴァンの綱を握っているのは、騎士団長ギルバードだった。彼は眉根を寄せて、チッ、やってられない、と言わんばかりの顔を浮かべている。
 
 騎士の仕事は正義の名の下にある。

 そんな信念をギルバードは持っているはずで、罪人をこのように苦しめるのはいかがなものか? と疑問を抱ているのだろう。
 かたや、ヴァンは両膝をついて土下座しながら、やめてくれ、やめてくれ、と懇願していた。その情けない声は確かにエレンヌの耳には届いているようで、ぽろぽろと彼女の目から涙がこぼれ落ちていた。しかしノワールは何を勘違いしたのか、
 
「おい、エレンヌ! 恋人に淫らな姿を見られても身体は喜んでいるな」

 などと救いようがない言葉を放つ。
 ヴァンは泣きながらつくった拳で床を殴っていた。

「エレンヌ、エレンヌ!」

 と恋人の名前を叫びながら、ひたすら敷かれた大理石を殴る。

「おいおい、手がイカれるぞ、おまえ料理人なんだろ?」

 ノワールの気まぐれな心配に対して、ヴァンは鋭い目線を向けた。
 
「殺す、絶対におまえを殺すからなっ!」

 壁に手をついていたエレンヌを背後から犯していたノワールだったが、ぴたりと腰の動きがとまった。
 
「ほう、我を殺すか……なかなか勇ましいではないか、気にいったぞ」

 ぬるん、とエレンヌは黒光りするそそり立った肉棒から解放された。あ……あ……と呼吸は乱れ、足がガクブルの震えている。あまりにも痙攣したためか、彼女は膝から崩れ落ちた。不敵に笑うノワールはピンクの髪をなでた。優しさのつもりだろうが、皮肉な行動にしか見えない。シオンはだんだん、ムカついてきた。
 
「ほら、エレンヌ、久しぶりに恋人のあそこでも舐めてやるか?」

 エレンヌは潤んだ瞳でヴァンを見つめた。
 しかし身体が動くことはなく、狂ったように首を横に振るばかり。

「舐めろよ、好きなんだろこの男が、んん、恋人ではないのか?」

 ぽろぽろと二人は涙を流している。
 いま、二人はいったい何を思っているのだろうか?
 シオンにはまったくわからないが、物凄く腹が立ってきた。
 
「おい、ギル、そのマヌケ面のズボンを脱がせ……」

 ノワールは騎士団長ギルバートに命令をした。それに対して、え? と赤い甲冑が震えた。
 
「お、王子……何を考えているのですか?」
「いやあ、恋人同士だったのなら、濃厚な性行為が見られると思ってな」
「いやいや、この状況で、ですか?」
「ああ、犯されていた恋人をこいつがどうやって抱くか、この目で観察したい」
「王子、あなたって人は……」
「なんだ? ギル……」

 なんでもありません、とギルバードは答えた。
 王子との主従関係は明白なものである。ノワールは首を小さく振り、目を細めた。 

「もういい、ギル。言いたいことも言えないなんて、おまえという人間はぜんぜん面白くない。正義感のない騎士団長などクビにするからな」
「……!? 王子、どういうことでしょうか?」
「まったく、我がこんなに悪役をやっているのに、誰も反抗しないなんて……つまらんなあ」
「あのぉ、お言葉ですが、王子に逆らったら死刑ですぞ? 誰が逆らえるというのですか?」
「まあな~」
 
 じゃあ、エレンヌ、と続けていった王子は彼女の肩を抱くと、よいしょといって立たせた。
 
「では、エレンヌが脱がせよ」
「え?」
「恋人のあそこを咥えて元気にさせてやれ、得意だろ?」
「王子、あなたは暴君よっ!」
「ありがとうエレンヌ、褒め言葉として受け取っておこう」
「……きゃっ!?」

 ドン、とエレンヌの背中を押したノワールは、ククク、と嗤う。
 
「さあ、やれよ、エレンヌ」
 
 ううう、と嘆くエレンヌの手がヴァンの身体に伸びていく。
 縄で緊縛されているヴァンの身体は震えていた。顔をひきつらせ、感情が揺れているようだ。もはや精神がイカれたのだろう。
 
「おいエレンヌ、やらないと恋人を殺すぞ」

 冷徹な言葉を浴びせられたエレンヌの顔が美しくも鋭い目線をノワールに向けていた。しかし、ゆらりと動く手はヴァンの腰に移り、ベルトにかかる。
 
「よし、いいぞぉ、エレンヌ……しゃぶってやれ」

 ヴァンの股間にぶらさがっている、だらりとしたあれをエレンヌは咥えた。すると、みるみるうちにヴァンの腰がくねり、だらりとしていたものが大きく育っていく。すると、バカみたいな王子ノワールの高笑いが響く。
 
「アハハハ、勃起してやがる……愉快だ」

 エレンヌは美味しそうに硬くなった肉棒を咥えている。
 ううう、とうめくヴァンは泣きながらエレンヌの淫らな姿を見つめ、
 
「エレンヌ、エレンヌ……」

 と恋人の名前を呼びながら、可愛らしいピンクの髪をなでようとするが、縛られた縄のせいで腕の動きが止まる。二人の愛を邪魔するかのように。かたや、ノワールはエレンヌの腰に手を伸ばし、両手で掴んだ。
 
「よし、我のも入れてやろう」

 ずぶり、とノワールの硬い肉棒で突き抜かれたエレンヌは、ああっ、と喘ぐ。ノワールの腰の動きは止まらない。狂ったようピストンを繰り返している。ノワールの顔は笑いながらも、歪んでいた。まるで呪いをかけるように、嗤う。

「アハハハッ!」

 ああっ、ああっと喘ぎまくるエレンヌはまるで生まれたての子羊のように、足を痙攣させながらも、二人の男を受け入れていた。ときおり苦しそうな悲痛な表情を浮かべる彼女だが、ヴァンの肉棒を咥えることもやめないし、爪先立ちで股を開いてノワールの肉棒も受け入れることもやめない。それはまるで一回でも食らいついたら離さない、餌を咥えた雌犬のようだ。
 
 なぜ、そこまでするのだろう?
 
 エレンヌの意味不明な行動を見ていたシオンは、さすがに我慢の限界がきた。お嬢様、と言葉を放った瞬間、ルージュから、ぽんっと肩を叩かれる。
 
「シオン、この狂った世界を終わらせましょう」

 はい、と片腕の執事は答えた。
 右手には銀色のレイピアを握りしめている。強く、強く。
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