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第一部 春

23 ロック・コンステラの日記

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 えっと……くそう、何を書いたらいいのかわからん。
 とりあえず、日記帳の裏に自分の名前でも書いておくか。
 
 ロック・コンステラっと……。
 
 ペラペラと頁をめくっても真っ白だ。あたりまえか。まだ何も書いてないもんな。わはは。まぁ、テキトーに書こう。
 
 今日はかったるい始業式があった。
 内容は、んー、ほとんど寝ていたから覚えていない。別にいっか、大事なことはあとでソレイユかマリに聞けばいい。

 それにしても、人の話ってさ、なんであんなに長く感じるんだろうな。難しい話なんてさ、催眠効果もあるから不思議だぜ。
 
 で、今日は何があったけ……。
 
 そうだ。厄介な女がきたんだ。メリッサとかいう親同士がかってに決めた婚約者だ。俺の親父は聖騎士団長で、なんか色んな縁談が舞い込んでくるんだとか、でも、そんなもん断ればいいのにな。内政がどうのとか、コンステラ家の未来に関わるんだとか言うが、なんで好きでもない女と結婚しなくちゃならないんだ? 意味不明だぜ、まったく。
 
 そんな結婚をして、美味しいのかそれ? 
 
 結婚するなら、父と母のような感じがいいな。お互い通じ合っている。そんな女と一緒にいたい。

 騎士の親父は危険がつきまとっているから、母はいつも心配そうにしてる。親父の帰りが遅いときなんか、家のなかでおろおろしてる。
 
 大丈夫だよ。落ち着けよ。
 
 そうやって、俺はいつも母に言うけど、母は別に心配なんかしてないと言い返してくる。はあ? どう見ても心配してるだろって、俺はツッコミをいれる。すると、弟と妹が笑うから面白い。

 やっぱり楽しく生きることが一番だよな。

 俺は長男で歳の離れた八歳の弟と五歳の妹がいるが、遠征にいったりする父親は留守が長いこともあって、親父がいないときは、俺が代わりに家族を守ってる。

 そんな親父は、自分はいつ死んでもおかしくない騎士団長だから、なんとか自分が死ぬまえに俺を結婚させようとしてくる。まあ、親父の考えていることなんて、そんなところだろうな。
 
 あれ? 俺って意外と日記書けるかもしれん。っていうか、日記ではなくて、俺物語みたいになってるけど、こんなんでいいのか? 

 ま、いっか、人に見せるものでもないし。
 
 話を戻すとあれだ。俺はメリッサを婚約破棄してやった。
 
 だが、簡単にうん、と首を縦に振らなかった。女っていろいろなタイプがいる。泣いて逃げる子もいれば、ビンタしてくる子もいた。メリッサは、なんで? なんで? と言ってくるシツコイ女だった。こういう女には、ほかに好きな子がいるって言うのが一番手っ取り早い。
 
 でも、メリッサは、その女は誰だ? とまたシツコイから面倒くさい。しかたなく、近くにいた女子を捕まえて、芝居させた。そしたら、やっとメリッサは納得して消えていった。やれやれ、女から好かれるのってマジで大変だぜ、まったく。
 
 やっぱり俺は、いいなぁって思う女のことを見守っているほうがいい。ぐいぐい来る女は苦手だ。どうも合わない。

 そう考えると、芝居してくれた転校生、名前はたしかルナだったかな。あの子はいい。顔もかわいかったし、性格もさっぱりしていた。

 さらに、いじめられても自分でなんとかするとか言っていた。めっちゃ、俺好みだぜ! だって、そんなこと言われたら、逆に見守りたくなるからな。
 
 よし、決めた!
 
 俺はあの子を守る。
 
 ソレイユはルナのことを訊いたら、田舎から転校して来た子だから都会に慣れるまで大変だろうなと言っていた。よし、こんど一緒に王都を案内してやろう。一見、治安の良さそうな王都だが、光あるところに闇はある。つまり、影では盗賊がいたりして危険な場所もあるからな。女の一人歩きはやめておいたほうがいい。
 
 あと、どうでもいいことだが、シエルが入学してきやがった。
 
 どうせ、狙いはマリだろうな。あのエロガキはあいかわらずだった。いきなりマリに抱きついて、おっぱいを触るつもりだった。まったく危険なやつだ。マリは高嶺の花だってソレイユと話しただろうが! 

 でも、おそらく、中坊のシエルにはわからなかったみたいだな。またこんど縄で縛って調教しておこう。マリを好きになるのは自由だが、絶対に手に入れることはできないってことを教えてやらないといかん。マリはみんなのマリで、高嶺の花だからだ。そう決めただろ……。
 
 ん? あ、やばい! 
 
 俺はなんてことを日記に書いてるんだ。うぉぉぉ、恥ずい。これは絶対に見せられないな。この日記帳はどこかに隠しておこう。
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