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第一部 春
22 ソレイユ・フルールの日記
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私の名前はソレイユ・フルール。
フルール王国の次期国王であり、パルテール学園の生徒会長なのだが。
はっきり言って退屈で、マンネリ化した日々だ。
まったくもって刺激的ではない。ぬるま湯に浸かっているような気分。安全すぎる。私は綺麗に飾られた人形のようだ。
魂がまったく揺さぶられない。なんとかしなければ、このままだと私の欲求は、なにも満たされることがないまま大人になっていく。
つまらない。
非常に軟弱だ。
私は純粋に男の欲望に素直になりたい。いつだって刺激的かつスリルを求めている。だが、そんなことは公では言えないし、実行することもできない。
そこで、私は本音を吐き出してストレスを発散させるため、日記を書こうと思う。よって、この日記は誰にも見せられたものではない。
私はロックに、三年生となり最後の学園生活だ、思い出を日記に書くといいよ、なんてアドバイスをしたくせに、私が見せられないものを書いてたら、まったく示しがつかないな。ふふふ。
まぁ、いい。
さて、さっさく書くとしよう。
今日は良いことが二つあった。
一つ、転校生のルナスタシア・リュミエールと知り合えたことだ。彼女はまさに私の理想の女の子だった。王子ではない等身大の私のことを褒めてくれたのだ。私のことを優しいだなんて、いやいや、先生に頼まれたから学園の案内をしていただけなのに、なんだか照れる。
しかも、彼女は私のことを王子と思っていなかった。
唖然とした。
彼女は典型的なゆるふわ天然女子で、サラサラの金髪もいい。ヴァイオレットの瞳なんて初めて見た。おそらく、異国の血が入っているのかも。さらに、顔もスタイルも普通にかわいい。そんな彼女は私のことをソレイユと呼び捨てにした。私は確信した。
いい感じの女の子を見つけた、と。
大きな声では言えないが、実は私はちょっと女の子から罵られてみたい願望がある。例えば、ソレイユのバカとか、ソレイユ、いけないわ、ダメじゃない、何を考えているの? もうこんなにして……なんて言われたい。でも、そんな攻撃的な言葉を私に言ってくれる可能性がある女の子はいない。いや、一人だけいたか……。
良いことの二つめ。
マリと久しぶりに話せた。さっきの話のつづきになるが、一人だけ私のマゾを満たしてくれる可能性を持った女子がいる。それが幼なじみのマリエンヌ・フローレンスだ。
マリは私のことをバカだと、よく叱ってくれる。わたしが王様になりたくないと嘆き、自分の道は自分で決めたい。そう思っていてはいけないのかな、私は? とマリに尋ねたことがある。するとマリは、鋭利なダガーで刺すような視線を、グサリと私に向けて叱ってくれた。
「逃げないで、ソレイユ! 自分の道なんて決まってないくせに」
図星だった。
私は堅苦しい公務にうんざりしていただけに過ぎなかったのだ。しかし、マリに叱られるたびに、王様になってやる。そのうえで自分の道を見つけるんだと決意した。
ああ、また叱ってくれないかな。
だが、そのためには、バカにならないといけない。しかし、それが私には難しいのだ。皮肉なことに甘えたりバカになることが下手なんだ、私は。
時はすぎ、高等部三年になったマリは、美しい女性を超えて、まさに女神だった。彼女は高嶺の花のような存在で、古臭い言葉だと、永遠のマドンナ。今風に言えば、推しの女の子って感じだ。
ロックはマリのことが好きな気持ちを認めないが、あいつの行動パターンを見ていれば一目瞭然だ。いつもあいつはマリのことを見つめている。ホントにわかりやすいやつ。それだけに、いじりがいがあって面白い。
シエルに至ってはもう、あれはなんだろうか? 自分がかわいいことを自覚しているから、タチが悪い。マリに平気で抱きついて甘えてる。くそう、弟キャラってだけで得してるんだよな。でも私にはわかる。シエルの内心は、マリ姉のおっぱいすげぇぇ、ぐへへって感じになってるはずだ。エロガキはこれだから困る。私には絶対そんなことできないから、黙って見ていることしかできない。
そして、いつもロックがシエルの首をつかんでマリに抱きつくのを止めるのだが……。
止めなくてもよい!
と命令しそうになってる自分が心のなかにいて怖いときがある。私という人物は、本当はものすごく変態なのではないか? いやいや、エロいことは男の子ならみんな考えることですよと、黒執事が言っていたから、まあ、大丈夫。おそらく私は健全だろう。たぶん……。
でも、一つだけ自覚しているのは、私は次期国王というレールに乗っている機関車みたいな状態なので、制約が厳しい環境下にある。よって、普通の男子よりはストレスというか、色々なものが溜まっていると思う。本音は伝説の花壇で、マリに愛の告白をしたいけど、婚約者は父上がかってに決めそうな気配もするし……。
ああ、心配だ。
正直、私だって普通に女の子と遊びたいだけなんだけど。ふう、愚痴を書いてはいけないな。日記が長くなってしまう。
とにかく、今日は良いことがあった。明日も良いことがありますように。
フルール王国の次期国王であり、パルテール学園の生徒会長なのだが。
はっきり言って退屈で、マンネリ化した日々だ。
まったくもって刺激的ではない。ぬるま湯に浸かっているような気分。安全すぎる。私は綺麗に飾られた人形のようだ。
魂がまったく揺さぶられない。なんとかしなければ、このままだと私の欲求は、なにも満たされることがないまま大人になっていく。
つまらない。
非常に軟弱だ。
私は純粋に男の欲望に素直になりたい。いつだって刺激的かつスリルを求めている。だが、そんなことは公では言えないし、実行することもできない。
そこで、私は本音を吐き出してストレスを発散させるため、日記を書こうと思う。よって、この日記は誰にも見せられたものではない。
私はロックに、三年生となり最後の学園生活だ、思い出を日記に書くといいよ、なんてアドバイスをしたくせに、私が見せられないものを書いてたら、まったく示しがつかないな。ふふふ。
まぁ、いい。
さて、さっさく書くとしよう。
今日は良いことが二つあった。
一つ、転校生のルナスタシア・リュミエールと知り合えたことだ。彼女はまさに私の理想の女の子だった。王子ではない等身大の私のことを褒めてくれたのだ。私のことを優しいだなんて、いやいや、先生に頼まれたから学園の案内をしていただけなのに、なんだか照れる。
しかも、彼女は私のことを王子と思っていなかった。
唖然とした。
彼女は典型的なゆるふわ天然女子で、サラサラの金髪もいい。ヴァイオレットの瞳なんて初めて見た。おそらく、異国の血が入っているのかも。さらに、顔もスタイルも普通にかわいい。そんな彼女は私のことをソレイユと呼び捨てにした。私は確信した。
いい感じの女の子を見つけた、と。
大きな声では言えないが、実は私はちょっと女の子から罵られてみたい願望がある。例えば、ソレイユのバカとか、ソレイユ、いけないわ、ダメじゃない、何を考えているの? もうこんなにして……なんて言われたい。でも、そんな攻撃的な言葉を私に言ってくれる可能性がある女の子はいない。いや、一人だけいたか……。
良いことの二つめ。
マリと久しぶりに話せた。さっきの話のつづきになるが、一人だけ私のマゾを満たしてくれる可能性を持った女子がいる。それが幼なじみのマリエンヌ・フローレンスだ。
マリは私のことをバカだと、よく叱ってくれる。わたしが王様になりたくないと嘆き、自分の道は自分で決めたい。そう思っていてはいけないのかな、私は? とマリに尋ねたことがある。するとマリは、鋭利なダガーで刺すような視線を、グサリと私に向けて叱ってくれた。
「逃げないで、ソレイユ! 自分の道なんて決まってないくせに」
図星だった。
私は堅苦しい公務にうんざりしていただけに過ぎなかったのだ。しかし、マリに叱られるたびに、王様になってやる。そのうえで自分の道を見つけるんだと決意した。
ああ、また叱ってくれないかな。
だが、そのためには、バカにならないといけない。しかし、それが私には難しいのだ。皮肉なことに甘えたりバカになることが下手なんだ、私は。
時はすぎ、高等部三年になったマリは、美しい女性を超えて、まさに女神だった。彼女は高嶺の花のような存在で、古臭い言葉だと、永遠のマドンナ。今風に言えば、推しの女の子って感じだ。
ロックはマリのことが好きな気持ちを認めないが、あいつの行動パターンを見ていれば一目瞭然だ。いつもあいつはマリのことを見つめている。ホントにわかりやすいやつ。それだけに、いじりがいがあって面白い。
シエルに至ってはもう、あれはなんだろうか? 自分がかわいいことを自覚しているから、タチが悪い。マリに平気で抱きついて甘えてる。くそう、弟キャラってだけで得してるんだよな。でも私にはわかる。シエルの内心は、マリ姉のおっぱいすげぇぇ、ぐへへって感じになってるはずだ。エロガキはこれだから困る。私には絶対そんなことできないから、黙って見ていることしかできない。
そして、いつもロックがシエルの首をつかんでマリに抱きつくのを止めるのだが……。
止めなくてもよい!
と命令しそうになってる自分が心のなかにいて怖いときがある。私という人物は、本当はものすごく変態なのではないか? いやいや、エロいことは男の子ならみんな考えることですよと、黒執事が言っていたから、まあ、大丈夫。おそらく私は健全だろう。たぶん……。
でも、一つだけ自覚しているのは、私は次期国王というレールに乗っている機関車みたいな状態なので、制約が厳しい環境下にある。よって、普通の男子よりはストレスというか、色々なものが溜まっていると思う。本音は伝説の花壇で、マリに愛の告白をしたいけど、婚約者は父上がかってに決めそうな気配もするし……。
ああ、心配だ。
正直、私だって普通に女の子と遊びたいだけなんだけど。ふう、愚痴を書いてはいけないな。日記が長くなってしまう。
とにかく、今日は良いことがあった。明日も良いことがありますように。
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