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地下洞窟
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「取り方ってものがあるじゃん!いきなり抜くとか可哀想だから!」
「す、すまん……。それにしてもこの羽は上質だ」
「ケリー種の羽が貴重ってこと?」
「臆病な生き物だから、なかなか手に入らん。生え変わりの時期があまりないし、抜けることもほとんどないから、3.4歳だと痛み始めて来るんだが、ツヤツヤだ。後少し……」
そう言われて雛ほどに小さくなり服の中に隠れてしまう。
「顔が怖い!目つきも怪しい!」
「酷いな……」
「欲しかったらもっと仲良くしてよ。そしたらブランもくれると思うし」
だよな!と隠れているポケットを見ると、ブランはうるうるしながらウンウンと頷いている。
「ちょっとブランをしばらく預からせてくれ」
「やだ!」
「ヤダとはなんだ!ポケット見せろ!」
狭い荷台では逃げる場所もなく、結局ブランは奪われ、結月の手中に収まってしまった。
「クキョォォォ」
「ブラン、いい子にしてろよ?何かされたらつついていいから」
「分かった。ツツク!」
「やめろよ?つついたらケリー鍋にするからな!」
そんな言い合いをしていたら、御者台から兵のひとりが休憩で止まると言ってきた。
「奏太、多分このまま進むと着くのは夜遅くだ。出発は明日だと言ってこい」
「誰に?」
「ニコルかルーカス、どっちでもいい」
「自分で言えよな!頭で話しかけたらいいじゃん」
「普段は魔力はとっておくものだ。基本はな!」
犬車が止まってすぐ、前の荷台まで行き伝える。
「あぁ、夜だからだろうな」
「魔物が強い時間だっけ?」
「それもあるが、まだ親父から連絡が無いんだよ」
「え?」
「まだ、魔王様は将軍と戦っていると思われます。ですし、終わっていても体力がなければ門が開けません」
「王が開くの?」
「王宮の王座からは王しか開けれませんので。また帰れないことになるのは嫌でしょう?」
「うん……」
「ならば焦らず待つことですよ」
ニコルに諭され、焦る気持ちを抑える。わかってはいるが、幻界と魔界でずっと旅してきているのにもかなり疲れた。
ノアが野営の準備をしているのを見つけ手伝いにいく。
「ブランさんは?」
「取られた!羽が欲しいみたい」
「それもあるでしょうが、姫様なりに仲良くなりたいのでは?」
「だといいけど、すぐに鍋にするとか言うからさ。それよりも、水は汲んでいかなくていいの?」
「まだ沢山あるので良いでしょう。それに明日にはつきますし……」と言ったノアの目線の先には、大きな鍋を出してふんだんに水を使い、ヒーッヒッヒッヒ!と奇声を上げながら鍋を掻き回している結月が居る。
「水……汲んでこようか……」
「そ、そうですね」
樽を持って川に向かう途中も、洞窟だからかなり奇声が響く。
兵は初めて聞く者もいるので、何かの魔物か?とあたりを見回しているものさえいる始末だ。
「みんなが可哀想……。魔女の人が……正確には魔女じゃないらしいんだけど、お婆さんが大鍋を混ぜてるのを見てハマったらしいんだ。俺はもう慣れたけど、ここまで響くと怖いよね」
「流石に私も……何を作ってるんでしょう?」
「す、すまん……。それにしてもこの羽は上質だ」
「ケリー種の羽が貴重ってこと?」
「臆病な生き物だから、なかなか手に入らん。生え変わりの時期があまりないし、抜けることもほとんどないから、3.4歳だと痛み始めて来るんだが、ツヤツヤだ。後少し……」
そう言われて雛ほどに小さくなり服の中に隠れてしまう。
「顔が怖い!目つきも怪しい!」
「酷いな……」
「欲しかったらもっと仲良くしてよ。そしたらブランもくれると思うし」
だよな!と隠れているポケットを見ると、ブランはうるうるしながらウンウンと頷いている。
「ちょっとブランをしばらく預からせてくれ」
「やだ!」
「ヤダとはなんだ!ポケット見せろ!」
狭い荷台では逃げる場所もなく、結局ブランは奪われ、結月の手中に収まってしまった。
「クキョォォォ」
「ブラン、いい子にしてろよ?何かされたらつついていいから」
「分かった。ツツク!」
「やめろよ?つついたらケリー鍋にするからな!」
そんな言い合いをしていたら、御者台から兵のひとりが休憩で止まると言ってきた。
「奏太、多分このまま進むと着くのは夜遅くだ。出発は明日だと言ってこい」
「誰に?」
「ニコルかルーカス、どっちでもいい」
「自分で言えよな!頭で話しかけたらいいじゃん」
「普段は魔力はとっておくものだ。基本はな!」
犬車が止まってすぐ、前の荷台まで行き伝える。
「あぁ、夜だからだろうな」
「魔物が強い時間だっけ?」
「それもあるが、まだ親父から連絡が無いんだよ」
「え?」
「まだ、魔王様は将軍と戦っていると思われます。ですし、終わっていても体力がなければ門が開けません」
「王が開くの?」
「王宮の王座からは王しか開けれませんので。また帰れないことになるのは嫌でしょう?」
「うん……」
「ならば焦らず待つことですよ」
ニコルに諭され、焦る気持ちを抑える。わかってはいるが、幻界と魔界でずっと旅してきているのにもかなり疲れた。
ノアが野営の準備をしているのを見つけ手伝いにいく。
「ブランさんは?」
「取られた!羽が欲しいみたい」
「それもあるでしょうが、姫様なりに仲良くなりたいのでは?」
「だといいけど、すぐに鍋にするとか言うからさ。それよりも、水は汲んでいかなくていいの?」
「まだ沢山あるので良いでしょう。それに明日にはつきますし……」と言ったノアの目線の先には、大きな鍋を出してふんだんに水を使い、ヒーッヒッヒッヒ!と奇声を上げながら鍋を掻き回している結月が居る。
「水……汲んでこようか……」
「そ、そうですね」
樽を持って川に向かう途中も、洞窟だからかなり奇声が響く。
兵は初めて聞く者もいるので、何かの魔物か?とあたりを見回しているものさえいる始末だ。
「みんなが可哀想……。魔女の人が……正確には魔女じゃないらしいんだけど、お婆さんが大鍋を混ぜてるのを見てハマったらしいんだ。俺はもう慣れたけど、ここまで響くと怖いよね」
「流石に私も……何を作ってるんでしょう?」
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