天満堂へようこそ 4

浅井 ことは

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地下洞窟

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「やっとご飯食べれたよ。それで?」

「あぁ、ルーカスが前に乗ってるから私が話すが、今ゴタゴタを起こしている将軍がいるだろう?そいつがいらなくなった兵を魔獣と合体させるのが好きな変態なんだ。手がつけられなくなったやつを、適当に捨てているらしくてな。さっきのヤツもそうだ……蜥蜴のようだったが、他にも様々なものとかけていると聞く」

「キメラみたいな感じ?」

「そうとも言うな。タチが悪いのが、魔法を使えるものでしているんだ。全体は私にもわからないが、やはり炎の山を仕切ってるだけあって、殆どの奴が火を吐く。氷の魔法が使えてよかった」

「結月さんならひとりで一瞬だと思ってた」

「馬鹿を言え。天井が崩れたら、通れるようになるまで時間がかかる。だから壊さない程度にしか攻撃ができなかっただけだが、倒せたんだからまぁ良いじゃないか。
次また出るといけないから少し休んでおけ」

休んでおけと言われたが、ベッドは何故かブランが寝そべっていたので、横にどいてもらって体を休める。

真ん中で焚いている火に小鍋をかけ、何やら薬作りを始めている結月に、変な奇声だけは挙げないでくれと頼み、ブランを湯たんぽがわりにして遊ぶ。

「あのさ、人間界の方って大丈夫かな?」

「ユーリと爺に任せておけばいい。私はお前の看護だと言ってある」

「俺の病気説よくみんな信じたよね?」

「健康そうに見えて、生まれつき体が弱く生活のほとんどがベッドの上だった。最近は調子が良く、成績も優秀だったので復学し卒業はしたが、いつ何が起こるか……と目薬を使って泣き落としたら、引っ掛かった」

「はぁぁ?」

「城に着いたら帰れるはずだ。マー坊も高魔力者だから、大体のことは出来る。でないと魔界の王なんぞ務まらんからな」

「また鏡みたいなの通るの?」

「長方形の魔法陣の刻まれた正規の門だ。幻界は鏡のようだったが、あれも王宮からの正規門だったがな」

「ムーのことも心配だし……」

「完全に治ってるぞ。足の毛も生えたし」

「クキョッ?あの犬のこと?」

「うん、ムーは見ただろ。仲よくしろよ?」

「庭を早く走りたいな……」

「広いからたくさん遊べるよ」

「あ、ブラン。お前の羽を一枚くれんか?」

「クキョッ!」

「何もせんわ!今煎じているものにまぜて、みんなに飲ませるだけだ。そうすれば屋敷のものはお前が仲間だとわかり、声も聞こえるようになる。お前にも人間界にいられるように薬を飲んでもらう。それがこれだ」

詐欺まがいの小さな小瓶に入った薬の色は薄い水色。
今まで見たことがない色の液体だった。

「何それ。毒じゃない?」

「アホかお前は!ムーと同じだ。天幻魔の血が入ってる。後ムーのもな……ムーと同じように成長は止まるが……」

「僕飲みます」

「よし、水に混ぜるから飲んでくれ」

水入れに薬を入れてブランに飲ませる。

飲み干した時に、クッキョーーーーッと叫び声のような悲鳴が聞こえたので、つい結月を睨んでしまう。

「は、羽をとっただけだ……」
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