天満堂へようこそ 4

浅井 ことは

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地下洞窟

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どこにも居ないと思い、周りをキョロキョロと見るが、結月とルーカスはかなり警戒しているように見える。

「ねえ……」

「しっ!」

「おい、どうするんだよ?」

「少しずつ進もう。一気に片付けたいが、あまり刺激して暴れられても困る」

「どんな魔法使うの?」

「周りと同化出来るから、気配で位置を確認する必要がある。魔法を使うってことは、知能があるってことは聞いてるな?」

「うん、ノアから聞いた」

「同化もすれば炎も吐くが、ただの炎じゃないんだ。この洞窟を崩すのなんて簡単だから……」

「ルーカスさん、炎でどうやって崩すのさ」

「その炎はマグマに近いからお前の盾がいるってわけだ。とにかく進む。奏太は真ん中を歩け」

先頭に結月、後ろにルーカスだから安心だが、相手の姿が見えないんじゃどうすればいいのかも分からない。

さらに進むと何か下水道の様な臭いがしてきた。

「臭っ!」

「近くにいるな……奏太、お前は嗅覚も耳もいい。常に集中して私たちを守れ。無理に攻撃はしなくていい」

「うん」

「ずっとこちらも姿を隠していたいが、匂いで気づかれるのも時間の問題だから解くぞ」

「いつでもいいぞ」

魔法が解けたからかさらに臭いはきつくなり、臭いの無くなる魔法が欲しいと思った。

耳を済ましていると上のほうからハァハァと息遣いが聞こえてくる。

背筋がスッと凍るように冷たくなり、本能的にやばいと思い盾を言われた通りにドーム型にして張る。

その瞬間、炎を吐かれて盾の上から噴火したマグマのようなものが流れ落ちてくる。
守れたのでよかったが、このままで盾を張り続けるだけでいいのだろうか?

「暑いな……ルーカス頼んだぞ」

「俺かよ!」

そう言って盾からルーカスが飛び出していく。

ルーカスが飛び出して言った先は上かと思ったら真後ろだった。

「なんで?」

「考えてる暇はない。全体に盾を張れ」

「う、うん」

ぼやっと影のようなものは見えるようになってきたが、全体がどのようなものなのかがまだ全くはっきりとしない。

剣と剣がぶつかり合うような音はするが、洞窟内なので響いて特定が難しい。
結月はルーカスが戦っている間にと思ったのか、数カ所にいくつか魔法陣を展開している。

「もう少し惹き付けてくれよ……」

そうしてできた魔法陣は地面から壁、天井に至るまで埋め尽くすほど書かれていた。

「どうやって……」

「魔法で書いたに決まってるだろう?ルーカス、戻れ!」

「はいよっ!」

ルーカスが盾の中に入ったのはいいが、魔法陣が発動する気配はない。

「バレてるんじゃないの?」

「お前には見えてるだろうが、やつには見えていない。ルーカスでもすべては見えていないはずだ」
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