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氷の地
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「ごめんブラン、盾が持ちそうにないから、もう一回飛んで荷台に戻って。丸焼きにはさせないから」
「分かったー。後ろにノアさんとニコルさんがいるよ」
「うん。気を付けろよ」
クキョーーーッと一鳴きしバサッと飛んでいくのがわかる。
下に降りてみると狼と言ってもかなり大きい。熊くらいあるんじゃないかと考えていると、グルルルルと真後ろから声がしたので振り向きざまに斬る。
毎日ではなかったが、基本の剣の扱いを教えて貰っていて良かった……
こちらが攻撃したので敵と判断したのだろう。起き上がってきた数体が勢いよくこちらに向かってくるので、また鎌鼬を放ち、前にもできた竜巻を起こす。
何度も振っていたからか思っていた以上に大きくなり、そこに兵が居たので、「兵隊さん逃げてー」と叫ぶ。
訓練を積んだ兵だからか、反応も機敏で動きにも無駄はなく、流石精鋭と言っていただけのことはある。
粗方片付いた所で戦意のなくなった狼は逃げ、残りを兵に任せて荷台に戻る時、一人の兵に声を掛けられた。
「流石は王子様でございます」
「王子はやめてよ。でも避けてくれてよかった。俺まだ感覚がわからなくて」
「私は一小隊の隊長を任せていただいてます。本来であれば我々で……」
「い、いいよ。みんな戦ってたから。でも、俺はどちらかと言うと中距離かなって思ってるから……」
「何話してんだ?もう終わって、結月が材料集めに行ったぞ?」
「はぁ!?何してんの?」
「何ってお前もしかして、無理やり出されたんだろ?」
「うん……」
「今の能力を見たかったって所だな」
「だからって、突き落とさないよね普通」
「だって結月だぞ?あいつなら、あんな狼共ひと睨みで終わらせてる……」
「まじ?」
「まじ!戻った方がいいぞ。ニコルもノアも材料集めに行ったから」
分かったと逃げる様に荷台に戻り、雛まで小さくなってブルブルと震えているブランを抱っこする。
「ま、丸焼きだって……」
「だからってここまで小さくならなくても……それにケリー種は食べれないって言ってたし大丈夫だって!」
「ほんと?」
「本当。帰ってきたら俺が怒ってやるから、温まってろよ」
そう言ってから、湯を沸かしてコーヒーの準備をする。
戻ってきた結月は気が聞くじゃないか!とカップに入れて飲み、御満悦だった。
「なんでブランに丸焼きとか言うの?」
「飛べると言っただろう?戦況から見て真ん中から叩く方が効率がいいし、お前の能力も聞いていたから見たくてな」
「だったら素直にいえばいいのに」
「悪かったって。でも凡そノアの言っていた意味がわかったしな」
「後で詳しく聞くから!もう、代わってよ。あれするとものすごく眠くてさ」
「毎回か?」
「うん。でも今日は久しぶりだったし、荷台とかも囲んでたからいつもより沢山使った気がする」
「そうか……とにかく寝ておけ。起きる頃には風のど真ん中だ」
「分かった……だから退いて?」
「分かったー。後ろにノアさんとニコルさんがいるよ」
「うん。気を付けろよ」
クキョーーーッと一鳴きしバサッと飛んでいくのがわかる。
下に降りてみると狼と言ってもかなり大きい。熊くらいあるんじゃないかと考えていると、グルルルルと真後ろから声がしたので振り向きざまに斬る。
毎日ではなかったが、基本の剣の扱いを教えて貰っていて良かった……
こちらが攻撃したので敵と判断したのだろう。起き上がってきた数体が勢いよくこちらに向かってくるので、また鎌鼬を放ち、前にもできた竜巻を起こす。
何度も振っていたからか思っていた以上に大きくなり、そこに兵が居たので、「兵隊さん逃げてー」と叫ぶ。
訓練を積んだ兵だからか、反応も機敏で動きにも無駄はなく、流石精鋭と言っていただけのことはある。
粗方片付いた所で戦意のなくなった狼は逃げ、残りを兵に任せて荷台に戻る時、一人の兵に声を掛けられた。
「流石は王子様でございます」
「王子はやめてよ。でも避けてくれてよかった。俺まだ感覚がわからなくて」
「私は一小隊の隊長を任せていただいてます。本来であれば我々で……」
「い、いいよ。みんな戦ってたから。でも、俺はどちらかと言うと中距離かなって思ってるから……」
「何話してんだ?もう終わって、結月が材料集めに行ったぞ?」
「はぁ!?何してんの?」
「何ってお前もしかして、無理やり出されたんだろ?」
「うん……」
「今の能力を見たかったって所だな」
「だからって、突き落とさないよね普通」
「だって結月だぞ?あいつなら、あんな狼共ひと睨みで終わらせてる……」
「まじ?」
「まじ!戻った方がいいぞ。ニコルもノアも材料集めに行ったから」
分かったと逃げる様に荷台に戻り、雛まで小さくなってブルブルと震えているブランを抱っこする。
「ま、丸焼きだって……」
「だからってここまで小さくならなくても……それにケリー種は食べれないって言ってたし大丈夫だって!」
「ほんと?」
「本当。帰ってきたら俺が怒ってやるから、温まってろよ」
そう言ってから、湯を沸かしてコーヒーの準備をする。
戻ってきた結月は気が聞くじゃないか!とカップに入れて飲み、御満悦だった。
「なんでブランに丸焼きとか言うの?」
「飛べると言っただろう?戦況から見て真ん中から叩く方が効率がいいし、お前の能力も聞いていたから見たくてな」
「だったら素直にいえばいいのに」
「悪かったって。でも凡そノアの言っていた意味がわかったしな」
「後で詳しく聞くから!もう、代わってよ。あれするとものすごく眠くてさ」
「毎回か?」
「うん。でも今日は久しぶりだったし、荷台とかも囲んでたからいつもより沢山使った気がする」
「そうか……とにかく寝ておけ。起きる頃には風のど真ん中だ」
「分かった……だから退いて?」
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