天満堂へようこそ 4

浅井 ことは

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氷の地

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「もう!怯えてるじゃん……」

雛の姿になり、なぜだか一番安全だと感じたのか、ノアのポケットに入って出てこなくなってしまった。

「今日1日そのペンダントはつけてろ。明日は外した時の状況とつけた時の変化がみたい」

「分かった。ルーカスさん大丈夫かな?」

「マー坊はお前も見たと思うが、王だけあって強い。負けることは無いが、その後が大変だからな……将軍に就いた者たちをどうするのかは見ものだが」

「またそんな事言って……心配なら見てくれば?」

「幻界ではこちらに干渉出来ないことになってるから、何も出来ない」

「そういえば姫様はどうしてこちらに?」

「ああ、連絡しようと思って何度か試したんだが、上手く繋がらなかったからこちらに来た。ついでに、お前達が来るであろうこの街であんな小さい万能薬が飛ぶように売れたからな……儲けは少ないが……まぁ、旅の資金にはなるだろう?」

「連絡つかないから来たでいいのに……」

「それはそうと、ルーカス様やニコルさんがまだなのでしたら、食事だけでも今から用意してもらいますか?」

「そうだな。少し早いが頼んできてくれ」

ノアは部屋を出ていき、結月は魔法陣の書かれた紙を出して、どこかと連絡を取っている。

目の前に現れたスクリーンに写るのはニコルだった。

「如何されました?」

「すまんが、王宮図書の古代文字辞書も借りてきてくれ。手がかりはあったか?」

「はい。王に会えましたので、姫様の言っていたことを伝えましたら、図書に保管してある名簿を見せてもらえることとなりました。写し終わりましたので戻ろうと思っていた所で……」

「だったら、そのまま歩け」

「え?」

と結月を見ると、水晶を持っているから問題は無いと言われ、スクリーンに目をやる。

「今いる棚は禁書ではないな?」

「はい。重要書類ではありましたので、一つ部屋を借りて写しましたが」

「あぁ。なら部屋を出てすぐ右。奥から3番目上から2段目にあるはずだ。持出し禁止ではないからそのまま持って帰ってきてくれ」

「わかりました」

プツンと映像が途切れ、結月を見る。

「なんだ?」

「本棚の位置までわかるの?」

「昔から出入りしてて、すべて読んで頭の中に入ってる。もちろん禁書もだ。危険なものは読んで焼いてやったが……それがどうかしたか?」

「普通覚えられないでしょ?」

「歩く禁書だからな」

「何それ」

「私は全ての世界の本を読んできた。王宮にあるものはもちろん、前に私が1年帰ってこなかった間も、居た場所は禁書の世界だった。街の本屋にもたまに紛れて置いてあるが、偽物か本物か分からずに買い取って読んで焼いた。何百年もそれを続けてついたあだ名が歩く禁書だ」
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