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氷の地
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登って行った先はルーカスと見つけた隠し扉の前。
迷うこと無く壁に手を置き、扉を開け中に入る。
入ってすぐに小窓を開け、外を眺めている。声をかけようかとも思ったが、奏太も黙っているのでそのまま待つことにした。
しばらく眺めた後、ベッドの前に行き、マットレスを少し持ち上げ何かを取り出した。
「それは?」
「夢で見たんだ……このペンダントは必ずつけていなさいって婆ちゃんに言われてずっと付けてた……」
そう言い首にペンダントを掛けると、あれだけ暴れていた魔力がみるみると収まっていくのがわかる。
「ちょっと見せてくれ……」
首から取るとまた魔力がざわつき出したが、近くにあるからかそれ程暴れている感じはしない。
ペンダントは明らかに天界の物。裏に刻まれている刻印は王宮の刻印。
装飾は薄いグリーンの石が嵌め込んであるだけの質素なものに見えるが、土台は純銀だ。
「この石のお陰で魔力が安定してるみたいだな……つけていると魔力が全く感じられなくなるようになってるんだろう。これだけ時間が経って効力があるのだとすれば、中に魔法陣が彫ってあるのかもしれん」
石を外すとやはり中には魔法陣が刻まれていて、奏太だけに反応するように作られている。
元に戻し、奏太に渡す。
「それ……作ったのは誰かわかるか?」
「婆ちゃんがくれたのは思い出した。ここに来る前に……ここは誰も来ないからってここに住んでたんだ。かなり長くいたと思う……」
「ここの前はどこにいた?」
「風の地の境から来たんだと思う。だからあの街のことが分かったんだ……ここに来て、それから王宮の側のゲートから人間界に……そこからはよく覚えてないんだけど」
「頭痛は?」
「あ、そう言えばなくなってる」
「そのペンダントはお前の身を守る効果。魔力が感知されないようにする効果。人に意識されにくくする効果がある。他にもありそうだが、昔の言葉だから調べないとわからないが……それを付けておけ。もしかしたら、ここに来たのもそれを取りに来る為だったのかも知れんしな」
「まさか……」
「そのまさかだ。人間界に戻れなくなったのは将軍のせいだが、そろそろ決着もつくと言ってたから、王宮から天界へ行って、しばらく休め。そのペンダントがいらない程度には魔力も安定するだろう」
戻ろうと奏太を見ると、タンスの引き出しを出し、底の隠し戸から何かを出している。
「カラクリになってたのか……」
「うん。ここの事は何でだか全部思い出せたんだ。これ……」
そう言って渡してきたものは小さな皮袋と1冊のノート。中を見ると魔通貨とノートには日記のようなことが書かれている。
「俺が持っててもいい?」
「構わん。元々お前のものだからな。でも、その通貨はもう使われていないやつだぞ?」
「そうなの?でも、持ってる」
「そろそろ行こうか」
時計塔を出て広場の噴水の前に立つ。
「あ、ここ……」
「落書きか? 」
「これ、俺が書いたやつだ!」
噴水の周りを囲んでいる石には魔界の言葉が刻まれている。
『←家』
「何だこれは?」
「はぐれた時にここまで来たら家はすぐそこだって目印だったと思うんだけど……」
「落書きならもっと格好良い事書けばいいのに」
「隠れて暮らしてたんだし、人には聞けないからこうやって幾つか書いた記憶があるんだけど」
「生活はどうやってたんだ?婆さんが働いてたのか?」
「この広場に沢山ある物売りに混ざって、色々売ってたと思うんだけど……よく分かんない」
迷うこと無く壁に手を置き、扉を開け中に入る。
入ってすぐに小窓を開け、外を眺めている。声をかけようかとも思ったが、奏太も黙っているのでそのまま待つことにした。
しばらく眺めた後、ベッドの前に行き、マットレスを少し持ち上げ何かを取り出した。
「それは?」
「夢で見たんだ……このペンダントは必ずつけていなさいって婆ちゃんに言われてずっと付けてた……」
そう言い首にペンダントを掛けると、あれだけ暴れていた魔力がみるみると収まっていくのがわかる。
「ちょっと見せてくれ……」
首から取るとまた魔力がざわつき出したが、近くにあるからかそれ程暴れている感じはしない。
ペンダントは明らかに天界の物。裏に刻まれている刻印は王宮の刻印。
装飾は薄いグリーンの石が嵌め込んであるだけの質素なものに見えるが、土台は純銀だ。
「この石のお陰で魔力が安定してるみたいだな……つけていると魔力が全く感じられなくなるようになってるんだろう。これだけ時間が経って効力があるのだとすれば、中に魔法陣が彫ってあるのかもしれん」
石を外すとやはり中には魔法陣が刻まれていて、奏太だけに反応するように作られている。
元に戻し、奏太に渡す。
「それ……作ったのは誰かわかるか?」
「婆ちゃんがくれたのは思い出した。ここに来る前に……ここは誰も来ないからってここに住んでたんだ。かなり長くいたと思う……」
「ここの前はどこにいた?」
「風の地の境から来たんだと思う。だからあの街のことが分かったんだ……ここに来て、それから王宮の側のゲートから人間界に……そこからはよく覚えてないんだけど」
「頭痛は?」
「あ、そう言えばなくなってる」
「そのペンダントはお前の身を守る効果。魔力が感知されないようにする効果。人に意識されにくくする効果がある。他にもありそうだが、昔の言葉だから調べないとわからないが……それを付けておけ。もしかしたら、ここに来たのもそれを取りに来る為だったのかも知れんしな」
「まさか……」
「そのまさかだ。人間界に戻れなくなったのは将軍のせいだが、そろそろ決着もつくと言ってたから、王宮から天界へ行って、しばらく休め。そのペンダントがいらない程度には魔力も安定するだろう」
戻ろうと奏太を見ると、タンスの引き出しを出し、底の隠し戸から何かを出している。
「カラクリになってたのか……」
「うん。ここの事は何でだか全部思い出せたんだ。これ……」
そう言って渡してきたものは小さな皮袋と1冊のノート。中を見ると魔通貨とノートには日記のようなことが書かれている。
「俺が持っててもいい?」
「構わん。元々お前のものだからな。でも、その通貨はもう使われていないやつだぞ?」
「そうなの?でも、持ってる」
「そろそろ行こうか」
時計塔を出て広場の噴水の前に立つ。
「あ、ここ……」
「落書きか? 」
「これ、俺が書いたやつだ!」
噴水の周りを囲んでいる石には魔界の言葉が刻まれている。
『←家』
「何だこれは?」
「はぐれた時にここまで来たら家はすぐそこだって目印だったと思うんだけど……」
「落書きならもっと格好良い事書けばいいのに」
「隠れて暮らしてたんだし、人には聞けないからこうやって幾つか書いた記憶があるんだけど」
「生活はどうやってたんだ?婆さんが働いてたのか?」
「この広場に沢山ある物売りに混ざって、色々売ってたと思うんだけど……よく分かんない」
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