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風の地
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朝はゆっくりでいいとの話だったので、遅めに起きてゆっくりと朝食を食べる。
「奏太様、護衛の名目で行くのでこのマントを羽織ってください」
「うん。ブラン、中に入る?」
「クキョッ!」と一鳴きし、さっと服の中に入ってしまう。
「もう行くの?」
「はい。護衛なので旗は外し、巡業の旗を付けていきます。他にも護衛はいますので、アグナさんの乗る馬車の真ん中につかせてもらいますので安全です。それと、一日早く出発することになって申し訳ありません」
「それはいいのですが、ニコルさん、護衛と言ってもそれほど危ない道のりなのでしょうか?」
「いえ。踊り子はまず戦うことはしないので、必ず護衛を付けるのです。今回はチラシがそこら中に貼ってあったので、大勢で行ったほうが狙われにくいのでちょうど良かったと思いまして」
「魔獣とか出たら戦えばいいんだよね?」
「そうですが、奏太様の事を気に入ったみたいなので、きっと我儘言ってくると思いますが……」
「俺が人間界から来てるって知ってるの?」
「今、奏太様は有名なのでその位の情報は有ると思います」
出発から2日。
特に問題もなく、いくつかの村や町を通り、明日にはやっと目的の街につく事となり、野営の準備をする。
初日からアグナさんの荷台に乗せられ、お茶を入れたり、マッサージをさせられたり、人間界の話をさせられたりと過ごしていたが、何故か人間界のカレーが美味しかったからか、カレーばかり作らされる。
最終的にルーが少なくなってきたので、スープにして渡すと、それはそれで気に入ったのか、お代わりを沢山してくるが、驚いたのはその食欲だった。
早食いの大食い……
なのに、スタイルは全然変わらず綺麗なままだ。
ことある事にブランで遊んでいたので、ブランもゲッソリとしている……
「奏太、野営の準備が終わったら、あの肉と芋のものが食べたい」
「肉じゃがですか?」
「一度しか言わない。全く……ルーカスならばもっと気が利くと言うのに!」
「すいません……」
肉じゃがを作る時に塊の肉を薄く切るのは大変なのに、早くしろとせっつかれ、できたら出来たでもっと温めてこいと言われ……
風の地から氷の地に入ってすぐ、気温もかなり変わり、温めてもすぐに冷めてしまうためどうすることも出来ず、ノアが助け舟を出そうとすれば引き離されてしまい、言うことをなるべく聞くしか無かった。
「ニコルさん……アグナさんていつもあんな感じなの?」
「はい、私も何度こき使われたことか……ですが、ルーカス様のお気に入りなので逆らいようもなく、いつも適当にあしらっていましたが、疲れましたか?」
「結月さんが二人いるみたい……」
「明日の朝には目的地につくと思います。着いたら宿に入ってゆっくり休みましょう」
「そうして……俺限界」
「奏太様、護衛の名目で行くのでこのマントを羽織ってください」
「うん。ブラン、中に入る?」
「クキョッ!」と一鳴きし、さっと服の中に入ってしまう。
「もう行くの?」
「はい。護衛なので旗は外し、巡業の旗を付けていきます。他にも護衛はいますので、アグナさんの乗る馬車の真ん中につかせてもらいますので安全です。それと、一日早く出発することになって申し訳ありません」
「それはいいのですが、ニコルさん、護衛と言ってもそれほど危ない道のりなのでしょうか?」
「いえ。踊り子はまず戦うことはしないので、必ず護衛を付けるのです。今回はチラシがそこら中に貼ってあったので、大勢で行ったほうが狙われにくいのでちょうど良かったと思いまして」
「魔獣とか出たら戦えばいいんだよね?」
「そうですが、奏太様の事を気に入ったみたいなので、きっと我儘言ってくると思いますが……」
「俺が人間界から来てるって知ってるの?」
「今、奏太様は有名なのでその位の情報は有ると思います」
出発から2日。
特に問題もなく、いくつかの村や町を通り、明日にはやっと目的の街につく事となり、野営の準備をする。
初日からアグナさんの荷台に乗せられ、お茶を入れたり、マッサージをさせられたり、人間界の話をさせられたりと過ごしていたが、何故か人間界のカレーが美味しかったからか、カレーばかり作らされる。
最終的にルーが少なくなってきたので、スープにして渡すと、それはそれで気に入ったのか、お代わりを沢山してくるが、驚いたのはその食欲だった。
早食いの大食い……
なのに、スタイルは全然変わらず綺麗なままだ。
ことある事にブランで遊んでいたので、ブランもゲッソリとしている……
「奏太、野営の準備が終わったら、あの肉と芋のものが食べたい」
「肉じゃがですか?」
「一度しか言わない。全く……ルーカスならばもっと気が利くと言うのに!」
「すいません……」
肉じゃがを作る時に塊の肉を薄く切るのは大変なのに、早くしろとせっつかれ、できたら出来たでもっと温めてこいと言われ……
風の地から氷の地に入ってすぐ、気温もかなり変わり、温めてもすぐに冷めてしまうためどうすることも出来ず、ノアが助け舟を出そうとすれば引き離されてしまい、言うことをなるべく聞くしか無かった。
「ニコルさん……アグナさんていつもあんな感じなの?」
「はい、私も何度こき使われたことか……ですが、ルーカス様のお気に入りなので逆らいようもなく、いつも適当にあしらっていましたが、疲れましたか?」
「結月さんが二人いるみたい……」
「明日の朝には目的地につくと思います。着いたら宿に入ってゆっくり休みましょう」
「そうして……俺限界」
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