天満堂へようこそ 4

浅井 ことは

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風の地

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朝になるとやはり薬が良く効いたのか、熱はすっかり下がっていて、食欲も相変わらずだった。
スープを何回もおかわりし、お腹いっぱいになったところで出発の準備をする。

「奏太くん、僕はもう馬車引かなくていいんだよね?」

「あぁ。この先はブランでは無理だって言ってたし」

「じゃぁ、僕は……」とシュンとするので、仕事がないからと思っているからかなと思い、「無理なことはできないだろ?」と元気づけようとする。

「奏太様、ブランさんはまだ商人に飼われていた事が抜けないのではないでしょうか?」

「だったら、余計にそんなことは考えなくてもいいんだって。確かに頼むことはあっても無理強いはしないし。ブラン、今度言ったらもう一緒に寝てやらないからな?」

「やだよぉ。ごめん……ね?」

「よろしい!だったらまずお前はその口についたジャガイモ何とかしてこいよ」

慌てて桶にくちばしを突っ込んで洗ってる姿は見ていて可愛い。犬もおとなしいし、いい加減名前ぐらいつけてあげないといけないのだろうか?

「奏太様出発しますが」

「うん、ブラン行くよ!中に入って」

ピョンと飛び乗り、広いからかちょうど鶏ぐらいの大きさになって、真ん中の火が炊いてあるところで丸くなる。デカいお萩等と考えていると、すぐに犬車が動き出した。

小さな鉄のようなものでできている鍋に炭を入れていく。魔界では木炭等が一般的に良く使われているとのことだったので町を出る前に買っておいたものだ。
それでも幌が張ってあり、風通りもいいから使えるのだと言う。他の荷車では火の粉が飛ぶので使えないらしい。
中から、小鍋をノアに渡し足元においてもらう。

火に当たり暖を取るが、ブランにくっついている方がもっと暖かいのではないかと思ってしまう。

「ブランは寒いのは平気っていってたけど、寒さが違うってなんかわかる気がする」

「今いるところが冬の場ににてるんだ。だけどこれ以上寒くなったら動けなくなっちゃう。代わりに物凄く熱いところもダメなんだ。だから夏の場には行ったこと無いんだよ」

「じゃぁ夏の場は馬なのかな?」

「うん、それかケリー種の中でも夏の場で産まれるものが春の真ん中辺りから秋の入り口まで働くんだ」

「そうなんだ。寂しくない?俺と来て」

「寂しくないよ?毎日楽しいもん」

「そっか、なら良いんだけど」

たまに後ろを確認しながら話しているが、眠気はやはりやって来る。

「なぁブラン、俺物凄く眠いんだ。代わりにさ、たまに後ろの方の見張り頼んでいい?」

「クキョッ!」

そう言い、ベッドになっている布団をめくってくれる。

「ありがと。ノアにも言っておくから」

「ぼ、僕頑張る!」

布をずらしノアに声をかけてから眠る。
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