天満堂へようこそ 4

浅井 ことは

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魔界

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町の中に入り、買取屋の所ではブランと外で待つ。基本的には幻界ともそれほど変わらないようだが、顔立ちが違うからか街の人たちの視線が痛い。

ガチャっと扉が開き2人が出てくるので、売れたか聞くと、皮袋を見せられた。

「何?勝負でもしてたの?」

「ええ。どちらの方が上手く捌いて売れるかと……何とか勝てました」

「大人気ないなぁ……宿はどうする?」

「まずはこちらへ……」

連れていかれたのは町の中心の広場だった。
指さされたところには立て札がかかっており、自分のことが書いてあった。

またもやなぜ読めるのかは不明だと思いながら、気にしないようにして札を読むが、対して大袈裟なことが書いてあるわけではなく、自己紹介のようなものだった。

この立て札のせいで見られていたんだとわかり、人間界から来たからでないとの理由に少し安心する。

宿屋を探し、町中を歩いてみて回るが、殆どが黒のコインのマーク。中心に2軒緑2つの宿屋を見つけ、ブランが泊まりやすい宿に入る。

「いらっしゃ……あ、ニコル様……」

「部屋空いてますか?」

「はい。3名様で?」

「外にケリー種が居ます。世話はできますか?」

「もちろんですとも。3名様何泊で?」

「1泊でお願いします」

「お1人1500魔通でお願いしたいのですが……」

ニコルが4500魔通貨支払い、ブランを外に連れていく。何かあったら呼んでといい、部屋に入ると大部屋だった。

「俺、ブランが見えるから窓際でもいい?」

良いと言われたのでそこに荷物を置き、窓をあけてブランを呼ぶと嬉しそうにこちらをみて羽を動かしている。

「ブラン、いい子にしてるんだぞ?」

「うん。わかった……どこか行くの?」

「まだ分からないけど、行く時は声かけるから」

そう言って窓を閉め、ニコルに話を聞くと、朝食の後に宿屋を出てから買い物をして町を出るといわれた。

「姫様に連絡しませんと」

そう言ってまたスクリーンの様なものを出し、連絡を取る。

「なんだ、宿屋か」

「さっき着きました。道順に関しましては………………」

ノアとニコルが説明していて、結月もなにか考えていたようだが、風の地という名を聞いてスクリーンを見る。

「奏太、どうかしたか?」

「え?いや、土地の話では名前出てなかったから……でも、何か聞き覚えがある気がして……」

「でもお前、魔界は初めてだろう?」

「そうなんだけどさ……谷みたいなのがあって、なんて言ったらいいんだろう。一つの街が蜘蛛の巣のようになってて、その道と道の間に隙間があって……隙間の下は崖って頭に浮かんで……」

「トゥルー街です」

「ニコル、有るのか?」

「あります。立ち寄ろうと思っていたところで、ここからその街をぬけて氷の地へ。氷の地から少し進路をずらし、城へと思っていたので」

「奏太、他になにか思い出すか?」

「風と、つらら……」

「お前達、明日も宿にいろ。少し調べる」
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