下宿屋 東風荘

浅井 ことは

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居候

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「助けられるんなら助けたいけど……あんなに楽しそうにされてたら……」

「では待ちましょうか。夜までは終わらないでしょうし」

「葉孤、酒をおくれ」

「お待ちください」

木の上の影に陣取り、盃を三つ出して酒壺から注ぎ飲みながら待つ。

「はぁ、なんで俺が監視役なんだよ。もう見飽きたよ……って、これ!」

「なんです?私たちには興味無いものなので」

「違うって。社が手薄になった!悪狐達出てくる」

「ではそいつらから……これは、中の狐ですね。どこかへ移動させられるのかも知れませんねぇ」

「私が行こう。雑魚どもならば影のみで十分。珠の確認もしてくる」

「任せました」

那智が出ていき、誰もいなくなった社の中に偵察に水狐を送る。

「何もおりません」と返事が来たので、そちらに酒をもって移動し、結界を張って野孤の侵入を阻む。

「いつ気づかれるかわかりませんしねぇ。まぁ、秋彪はそれでも見ててください」

「あのさ、悪狐倒してるの影の狐じゃん。那智ってここの狐助けるんだよな?」

「その予定ですが?」

「なんで捕まってる狐の方の悪狐に手出さないの?」

「様子見でしょう?それに、野狐が出てくるまで動きませんよ彼は」

「見てるだけかよ!」

「私もそうしますけど?」

「だから、なんで?」

「手が汚れたら臭いじゃないですか。それに、見てください。外に出たからかここの狐が力を出し始めてますねぇ。結界から出たからでしょうけど」

「でも影があんまり動かないぞ?」

「弱りもするでしょう。 しゅの気配は感じます?」

「少しな。ここの結界でよくわかんないけど」

「まだまだ子供ですねぇ」

そう言いながらも外を見ながら酒を少しずつ飲む。那智が動かないのはここの社狐が七尾であることも関係しているようだが、多分野狐共が出てくるのを待っているだけでは無いようだ。

「我々は小さな神社の狐とはあまり関わっていませんでしたが、これを機に千年祭までに交流を持つのもいいかもしれませんねぇ」

「あ!次は那智の番だからか!」

「ええ、それもあります。秋彪と那智だけでも十分ですがもう少し仲間を増やしてもいいと思うんです」

「付き合いあるのか?」

「あと二つ小さな神社があるでしょう?そこの狐を知らないわけじゃありません」

「千年だもんな」

「伊達に年は取ってませんよ?ただ、大人しい狐たちなので、手を貸してくれるかどうかはわからないですけど」

「俺は見たことないけど、那智も知ってんの?」

「知ってるはずですよ?那智も馴れ合わない性格なので顔を知っている位だと思いますがねぇ」

そんな話をしていると、野狐に混じって音々も出て来た。

ちらりとこちらを見るが、野狐に押さえつけられているところを見ると、盾にされるのか社狐の奪還に使われるのか……
どちらにしても、手を出すと那智が怒りそうだったので見ているだけにしておく。
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