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居候
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「音々さん、食が進みませんか?」
「そんな事は……こんなに沢山の人と食べるのが初めてなので」
「そのうち慣れますよ。膳が慣れないなら机でもいいですよ?」
「お膳でいいです。それにしても、あんなに沢山ある料理がこんなに早くなくなるなんて……」
「毎日ですよ?見ていると面白いものです」
「そうですか?」
酒を呑みながら食事を済ませ、各自で洗うようにしているからと音々に告げて自宅へと戻る。
囲炉裏の前で横になりながら残りの酒を飲み、狐達にいくつか用を頼む。
「水狐、秋彪と那智に明日の夜22時と伝えてきてください。あちらの社の前で待ち合わせでいいでしょう」
水狐が消えてから、桜狐に腰をもんでもらい、家事を橙狐に任せ、のんびりと過ごす。
「明日は忙しくなりそうですねぇ。音々さん」
「バレてました?」
「当たり前です。変な誤解を招きたくないので、夜は大人しくしていてほしいのですが」
「明日の事なんですけど、社を取り返したら私は出ていかなくてはなりませんよね?」
「そうですねぇ。私はこの敷地の社の狐なので離れているわけでは無いのでいいんですけど、音々さんはまだ長く離れるわけには行かないでしょう?」
「それはそうですけど……」
「お昼に戻っていればいいでしょう。まだ治り切って無い様ですので、治るまでは下宿でいいですよ。明日小松菜二束です。忘れないでくださいね?」
「ちゃんと覚えてます!ただ、野狐や悪狐は何度も社を襲うと聞いたので」
「その様ですねぇ。我々が結界を張るので入れないようにはしておきますけど」
「怖いんです」
「怖がっていたらいつまでも戻れませんよ?」
「分かってますけど……」
「とにかく、休んでください。まずは治すことが先決です。あなたも、千年祭で飛ぶのでしょう?」
「はい、まだまだ低いですけど自分の社の鳥居を飛びます」
「ならば尚更治してください。あなたの社も大事な場所ですので、守護の狐がいなくなると困るんです」
一通り話を済ませ、明日は任せてくれたらいいと伝えて部屋へと帰す。
ゆっくりと睡眠をとり、土間へと行くと小松菜がちゃんと二束茎を水につけて置いてある。
表の玄関を開けると「おはようございます」と音々が掃き掃除をしていた。
「雪翔君は宮司さんの朝のお手伝いに行きましたけど」
「朝食には帰ってくると思いますよ。その後また手伝いに行くんですけど。私は朝餉の支度をしてきます。終ったらお茶でも飲んでてください」
「私もお手伝いを……」
「運ぶのを手伝ってくれたらいいですから」
それだけ言って台所へと戻り、いつもの様に米を研ぎセットしてから、味噌汁や卵焼きを作っていく。
小松菜を揚げと一緒に炒め、軽く醤油をふり小鉢に盛る。
平皿には卵焼きとウインナー、納豆も人数分出して音々と机に並べ、二つのお膳を火鉢を挟んで二つ置く。
「そんな事は……こんなに沢山の人と食べるのが初めてなので」
「そのうち慣れますよ。膳が慣れないなら机でもいいですよ?」
「お膳でいいです。それにしても、あんなに沢山ある料理がこんなに早くなくなるなんて……」
「毎日ですよ?見ていると面白いものです」
「そうですか?」
酒を呑みながら食事を済ませ、各自で洗うようにしているからと音々に告げて自宅へと戻る。
囲炉裏の前で横になりながら残りの酒を飲み、狐達にいくつか用を頼む。
「水狐、秋彪と那智に明日の夜22時と伝えてきてください。あちらの社の前で待ち合わせでいいでしょう」
水狐が消えてから、桜狐に腰をもんでもらい、家事を橙狐に任せ、のんびりと過ごす。
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「バレてました?」
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「そうですねぇ。私はこの敷地の社の狐なので離れているわけでは無いのでいいんですけど、音々さんはまだ長く離れるわけには行かないでしょう?」
「それはそうですけど……」
「お昼に戻っていればいいでしょう。まだ治り切って無い様ですので、治るまでは下宿でいいですよ。明日小松菜二束です。忘れないでくださいね?」
「ちゃんと覚えてます!ただ、野狐や悪狐は何度も社を襲うと聞いたので」
「その様ですねぇ。我々が結界を張るので入れないようにはしておきますけど」
「怖いんです」
「怖がっていたらいつまでも戻れませんよ?」
「分かってますけど……」
「とにかく、休んでください。まずは治すことが先決です。あなたも、千年祭で飛ぶのでしょう?」
「はい、まだまだ低いですけど自分の社の鳥居を飛びます」
「ならば尚更治してください。あなたの社も大事な場所ですので、守護の狐がいなくなると困るんです」
一通り話を済ませ、明日は任せてくれたらいいと伝えて部屋へと帰す。
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表の玄関を開けると「おはようございます」と音々が掃き掃除をしていた。
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「私もお手伝いを……」
「運ぶのを手伝ってくれたらいいですから」
それだけ言って台所へと戻り、いつもの様に米を研ぎセットしてから、味噌汁や卵焼きを作っていく。
小松菜を揚げと一緒に炒め、軽く醤油をふり小鉢に盛る。
平皿には卵焼きとウインナー、納豆も人数分出して音々と机に並べ、二つのお膳を火鉢を挟んで二つ置く。
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