下宿屋 東風荘

浅井 ことは

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居候

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今までのことを話して、ついでに音々の話もする。本当はこちらを頼るつもりだったが噂が流れていてうちに来たと少し大げさに言っておく。

「はぁ……借りができてしまったな。千年祭と社の件は手伝う。俺は嫁はいらんから押し付けるなよ?」

「そちらも頼みたかったんですけどねぇ?」と秋彪を見るとブンブンと首を横に振っている。

「まずは、休んでください。影の方は術は解けているようなので問題は無いでしょう。ここ一体の結界はまだこのままにしておきます。うちの狐お貸ししましょうか?」

「いい。この請求書も破っていいか?」

「あとが怖いので払ったらどうです?」

「分かったよ。掃除はいつだ?」

「あなたが回復してからでいいですけど、早いほうがいいでしょうねぇ」

「一日でいい」

「分かりました。では明日の夜に迎えに来ます」

下宿へと戻り、音々に明日の事を話し社へと姿を消して行く。

「ついに冬弥も嫁を貰う気になったみたいだね」

「琥珀……これは間にある社狐の音々です。明日はお二人にも行ってもらおうかと思いましてねぇ」

「雑魚掃除ぐらい自分でしたらよかろう?」

「那智も秋彪も来るんです。うちだけ主力がいなくてどうします?」

「仕方ないね」

「こちらの方はどうなってますか?」

「平和なもんだ。毎日宮司が酒をくれるので飽きはせんよ」

「明日は他の狐を置いていきますのでお願いしますね。夜まで好きにしてください」

その後影から雪翔の働く姿を見、鳥居の確認をする。

ほんの少しだけ見えてきているが、千年祭までどのような大きさで出てくるのかわからない。
その鳥居を飛べば雑魚妖怪なども力を増すと言う。それらを蹴散らしながら飛ぶことは難しい。

「どうしましょうかねぇ」と雪翔を見る。

社から離れたところで姿を現し、鳥居を見上げる。
形や大きさは他の神社と対して変わりはないように感じるが、階段でも作れれば駆け上がりながら進むことが出来るなと考える。

「冬弥さん」

「終わりましたか?」

「はい。もうお昼なので。何してるんですか?」

「いえね、この鳥居を飛ぶんですけど、見えますか?うっすらと鳥居の上にさらに鳥居があるのが」

「何となくですけど」

「これがどのぐらい大きな物なのかがわからないんです。そこで天にも届くような階段が欲しいんですけどねぇ」と雪翔を見る。

「階段?」

「作ってください」

「無理ですよ。どうやればいいのかわからないし」

「毎日ここで少しずつ階段をイメージして空高くまでになるようにしてもらいたいんです」

「はぁ」

「思いが強ければ強いほどいいと聞きます。それにあの宮司。いい気を放ってるんですよねぇ」
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