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四社
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人数が少ないこともあり、簡単にハンバーグにしようと玉ねぎをみじん切りにし、ふやかしたパン粉と混ぜてひき肉を入れ塩コショウをして軽く混ぜる。
手の暖かさで肉に火が通るので水で手を冷たくして混ぜてから形を整えフライパンで蒸し焼きにする。
いつもと違いスパゲティサラダとハンバーグ。コンソメスープを夕食に作り、隆弘の分だけラップして置いておく。
「手抜きですよねぇ」
「そうですか?」
「あ、大根おろししておいて下さい」
「はい」
そのあとハウスへと行き、大葉を人数分詰んでから、洗ってハンバーグの上において、その上に大根おろしを乗せる。
後は和風ドレッシングをかけたら、おろしハンバーグの出来上がりだ。
たまには飲まない日も作っているので、今日は摘みはいいだろう。
まだ時間があったので栞と銭湯へと行き、中待合でフルーツ牛乳を飲んで待つ。
たまに飲むと美味しいと思うのだが、これを一気飲みする彼らのお腹はどうなっているのだろうとつくづく思う。
夕食を済ませそれぞれが部屋に行ったのを見てから、水狐に代わりを頼み、姿を消して栞と冬の神社へと行く。
「ん?何か用か?」
「寛いでますねぇ。そこらじゅう臭いですよ?」
「ここは何なんだ?次から次へと悪いモノも悪狐もウジャウジャ出て来るけど」
「私の所とここは頭と尾なので狙われやすいんですよ」
「あー、そうだったな」
「新しい宮司が来たようですね?」
「取り敢えず通いだが。いないよりはマシだろ?」
「そうですけど。あまり散らかさないでくださいよ?」
「気をつけてはいるんだが」
「それと、これ……」
虹色に輝く珠を手のひらに乗せて玲の目の前に出す。
ふわっと浮いたと思ったら、すぅーっと体の中に入って行ってしまった。
「冬弥様、あれは……」
「ええ、私が預かっていました。もし玲が本当にここに選ばれてなかったら、珠も体には入りません」
「疑ってたのか?」
「いえ。ただ簡単に返せるものではないと思ってはいました。まだ早いとも。ですが、ちゃんと社を守っているあなたを見ていたら、爺さんやその先代の魂のこもった珠は早めに渡さないとと思いましてねぇ」
「中で俺のと混ざり合う感じがする……」
「ならばあなたはちゃんと選ばれた狐ということになります」
改めておめでとうと言い、本題に入る。
「実は、そろそろ祭りの飾り付けが行われます。そうするとどうしても私は社から離れずらくなり、行動が制限されてしまいます」
「千年か?」
「ええ。700を過ぎたあたりから感じ始めますよ?」
「で?なにか手伝えと?」
「まぁ。栞さんの社に交代で影は送ってますが、結界と影だけでは不安なのでたまに様子を見に行ってほしいんですよ。暇でしょう?夜以外」
「夜でもこの程度なら影に任せれるがな?」
「なら、見回りお願いできます?」
「良いけどさ、ほかの土地でも千年祭やるところもあるだろ?なんでこの土地ばっか狙われるんだ?」
「それなんですが、今回の千年祭はここだけなんですよねぇ……たまに繰り上げで一年早くする神社も増えてきてますけど。なのでいろんなものが活性化していて困ってます」
「困った顔してないけどな?」
「してますよ?ほら……」
「あー、もういい。男のそんな顔は見ても面白くない」
「そうですか?ちょっと、おねだり風にしてみたのですが」
「いや、だから男の顔見てもなぁ」
「まぁ、いいです。那智と秋彪はちゃんと動いてくれると思うので心配はしてないんですが、まだあなたの能力がわからないので今日来たんですけどねぇ」
「俺はもっぱら攻撃の方だな。特化してるといえば空中戦は得意だが」
「珍しいですね」
「昔からよく飛んでたからかもな」
「では、私が飛ぶ際は補助をお願いします。前はなんとかなりますが、後ろまで気が回らないので」
「了解した。それより、結局あの女狐はどうなったんだ?秋の話しじゃいまいちわからなくて、会ったら聞こうと思ってたんだ」
知りえたことを簡潔に話して、しばらく警備もつくので安全だと思うといい、一旦社を後にする。
「これで終わりですか?」
「珠を渡したかったので。それに、彼は約束は違えない男でしょう」
「そんな感じはしますね」
「栞さん。あなたも祭りの時は後方に下がっててくださいね?」
「はい。できる限りの事はします」
翌朝、朝の卵焼きを多く作りすぎ、味噌汁に焼き魚までいつもと同じように作ってしまい、しまったと手をおでこに当てる。
海都が居ないことに慣れていないので、ついいつも通りに作ってしまい、申し訳ないが……とお昼の食事に食べてもらうことにした。
「大丈夫ですか?」
「ええ。つい居ないと忘れてしまって。それに今日辺りから飾り付けが始まりそうですね……少し感覚がおかしくなってきているので間違いはないと思いますが」
「そんなに影響が?」
「かなりきます。境内の方が騒がしくなってる音とか、響きますね」
「あとは私がしますから、横になってください」
「そうも行きません。まだ布団も干さないといけませんし、買い物も……」
クラッと立ちくらみがするのを影から狐が出てきて支え、自宅の布団まで運ばれる。
「今日は任せてください。商店街へのお買い物なら私でもできますし、冷蔵庫の中の残り物で夕飯の支度をしてもいいですし」
「ですが、栞さんはお客人です」
「分かってます。名ばかりの見合い相手ということも。ですが、まずは冬弥様が落ち着いて無ければ、飛べる鳥居も飛べなくなってしまいます」
「栞さん……」
「取り敢えず寝ていてください。えっと、朱狐さんをお借りします。中のことを教えてもらいたいので」
「朱狐でいいんですか?」
「はい。とても頑張る子ですよね?一緒にすればきっと出来ると思います。あわてんぼうなだけだと思うので」
「朱狐……」
「はい」
「栞さんのことをお願いします」
「任せてください。それと桜狐が冬弥様と同じような影響を受けております」
「妖力が落ち着けば問題ないと思いますよ?」
「昼餉は持ってきますので、休んでてくださいね?誰か見張っててくださると嬉しいんですけど」
影からいくつも手が伸びたので、こら!と怒りはするが、みんなが手を挙げてしまったなら文句を言っても聞いてはくれないだろう。
「分かりました。大人しくしてます……」
「じゃあ、朱狐さん片付けと布団干しいきましょうか」
二人して出ていき、すぐに皿でも割る音がするのだろうと思っていたが、静かなもので、聞こえてくるのは社からの綱を引く掛け声。
目を瞑り、天気もいいので外で神輿の修理と掃除でもするのだろうと、耳をそばだてて聞いているうちにどうやらぐっすりと眠ってしまっていたようだ。
枕元に、卵焼きとおにぎりが置いてあり、メモに『起きたら食べてください』と書いてある。
上に肩掛けをかけておにぎりを食べ、お茶を入れようと立った瞬間足がもつれる。
「危ないではないか!」
「漆……」
「寝ておれ」
「アタシがするよ。漆が入れたら苦くて飲めたもんじゃない」
「琥珀も……社の方は?」
「水狐達に変わってもらった。儂等も少し影響が強くて頭に響く。来てみたら冬弥までも寝込んでいるとはだらしない」
お茶を受け取り、だらしないとは酷い言い草だと文句を言う。
「冬弥。また鳥居は大きくなっている。時たまあの子供が階段を作っては伸ばしたり縮めたりしておるが」
「何の辺まで伸びてます?」
「あれは人間の力じゃぁないよ。漆でさえ尾が逆だってたからねぇ」
「お前、黙っておるからと儂の饅頭余分に食ったくせにばらすな!」
「そこまでにしておいて下さい。意味がわからないのですが」
手の暖かさで肉に火が通るので水で手を冷たくして混ぜてから形を整えフライパンで蒸し焼きにする。
いつもと違いスパゲティサラダとハンバーグ。コンソメスープを夕食に作り、隆弘の分だけラップして置いておく。
「手抜きですよねぇ」
「そうですか?」
「あ、大根おろししておいて下さい」
「はい」
そのあとハウスへと行き、大葉を人数分詰んでから、洗ってハンバーグの上において、その上に大根おろしを乗せる。
後は和風ドレッシングをかけたら、おろしハンバーグの出来上がりだ。
たまには飲まない日も作っているので、今日は摘みはいいだろう。
まだ時間があったので栞と銭湯へと行き、中待合でフルーツ牛乳を飲んで待つ。
たまに飲むと美味しいと思うのだが、これを一気飲みする彼らのお腹はどうなっているのだろうとつくづく思う。
夕食を済ませそれぞれが部屋に行ったのを見てから、水狐に代わりを頼み、姿を消して栞と冬の神社へと行く。
「ん?何か用か?」
「寛いでますねぇ。そこらじゅう臭いですよ?」
「ここは何なんだ?次から次へと悪いモノも悪狐もウジャウジャ出て来るけど」
「私の所とここは頭と尾なので狙われやすいんですよ」
「あー、そうだったな」
「新しい宮司が来たようですね?」
「取り敢えず通いだが。いないよりはマシだろ?」
「そうですけど。あまり散らかさないでくださいよ?」
「気をつけてはいるんだが」
「それと、これ……」
虹色に輝く珠を手のひらに乗せて玲の目の前に出す。
ふわっと浮いたと思ったら、すぅーっと体の中に入って行ってしまった。
「冬弥様、あれは……」
「ええ、私が預かっていました。もし玲が本当にここに選ばれてなかったら、珠も体には入りません」
「疑ってたのか?」
「いえ。ただ簡単に返せるものではないと思ってはいました。まだ早いとも。ですが、ちゃんと社を守っているあなたを見ていたら、爺さんやその先代の魂のこもった珠は早めに渡さないとと思いましてねぇ」
「中で俺のと混ざり合う感じがする……」
「ならばあなたはちゃんと選ばれた狐ということになります」
改めておめでとうと言い、本題に入る。
「実は、そろそろ祭りの飾り付けが行われます。そうするとどうしても私は社から離れずらくなり、行動が制限されてしまいます」
「千年か?」
「ええ。700を過ぎたあたりから感じ始めますよ?」
「で?なにか手伝えと?」
「まぁ。栞さんの社に交代で影は送ってますが、結界と影だけでは不安なのでたまに様子を見に行ってほしいんですよ。暇でしょう?夜以外」
「夜でもこの程度なら影に任せれるがな?」
「なら、見回りお願いできます?」
「良いけどさ、ほかの土地でも千年祭やるところもあるだろ?なんでこの土地ばっか狙われるんだ?」
「それなんですが、今回の千年祭はここだけなんですよねぇ……たまに繰り上げで一年早くする神社も増えてきてますけど。なのでいろんなものが活性化していて困ってます」
「困った顔してないけどな?」
「してますよ?ほら……」
「あー、もういい。男のそんな顔は見ても面白くない」
「そうですか?ちょっと、おねだり風にしてみたのですが」
「いや、だから男の顔見てもなぁ」
「まぁ、いいです。那智と秋彪はちゃんと動いてくれると思うので心配はしてないんですが、まだあなたの能力がわからないので今日来たんですけどねぇ」
「俺はもっぱら攻撃の方だな。特化してるといえば空中戦は得意だが」
「珍しいですね」
「昔からよく飛んでたからかもな」
「では、私が飛ぶ際は補助をお願いします。前はなんとかなりますが、後ろまで気が回らないので」
「了解した。それより、結局あの女狐はどうなったんだ?秋の話しじゃいまいちわからなくて、会ったら聞こうと思ってたんだ」
知りえたことを簡潔に話して、しばらく警備もつくので安全だと思うといい、一旦社を後にする。
「これで終わりですか?」
「珠を渡したかったので。それに、彼は約束は違えない男でしょう」
「そんな感じはしますね」
「栞さん。あなたも祭りの時は後方に下がっててくださいね?」
「はい。できる限りの事はします」
翌朝、朝の卵焼きを多く作りすぎ、味噌汁に焼き魚までいつもと同じように作ってしまい、しまったと手をおでこに当てる。
海都が居ないことに慣れていないので、ついいつも通りに作ってしまい、申し訳ないが……とお昼の食事に食べてもらうことにした。
「大丈夫ですか?」
「ええ。つい居ないと忘れてしまって。それに今日辺りから飾り付けが始まりそうですね……少し感覚がおかしくなってきているので間違いはないと思いますが」
「そんなに影響が?」
「かなりきます。境内の方が騒がしくなってる音とか、響きますね」
「あとは私がしますから、横になってください」
「そうも行きません。まだ布団も干さないといけませんし、買い物も……」
クラッと立ちくらみがするのを影から狐が出てきて支え、自宅の布団まで運ばれる。
「今日は任せてください。商店街へのお買い物なら私でもできますし、冷蔵庫の中の残り物で夕飯の支度をしてもいいですし」
「ですが、栞さんはお客人です」
「分かってます。名ばかりの見合い相手ということも。ですが、まずは冬弥様が落ち着いて無ければ、飛べる鳥居も飛べなくなってしまいます」
「栞さん……」
「取り敢えず寝ていてください。えっと、朱狐さんをお借りします。中のことを教えてもらいたいので」
「朱狐でいいんですか?」
「はい。とても頑張る子ですよね?一緒にすればきっと出来ると思います。あわてんぼうなだけだと思うので」
「朱狐……」
「はい」
「栞さんのことをお願いします」
「任せてください。それと桜狐が冬弥様と同じような影響を受けております」
「妖力が落ち着けば問題ないと思いますよ?」
「昼餉は持ってきますので、休んでてくださいね?誰か見張っててくださると嬉しいんですけど」
影からいくつも手が伸びたので、こら!と怒りはするが、みんなが手を挙げてしまったなら文句を言っても聞いてはくれないだろう。
「分かりました。大人しくしてます……」
「じゃあ、朱狐さん片付けと布団干しいきましょうか」
二人して出ていき、すぐに皿でも割る音がするのだろうと思っていたが、静かなもので、聞こえてくるのは社からの綱を引く掛け声。
目を瞑り、天気もいいので外で神輿の修理と掃除でもするのだろうと、耳をそばだてて聞いているうちにどうやらぐっすりと眠ってしまっていたようだ。
枕元に、卵焼きとおにぎりが置いてあり、メモに『起きたら食べてください』と書いてある。
上に肩掛けをかけておにぎりを食べ、お茶を入れようと立った瞬間足がもつれる。
「危ないではないか!」
「漆……」
「寝ておれ」
「アタシがするよ。漆が入れたら苦くて飲めたもんじゃない」
「琥珀も……社の方は?」
「水狐達に変わってもらった。儂等も少し影響が強くて頭に響く。来てみたら冬弥までも寝込んでいるとはだらしない」
お茶を受け取り、だらしないとは酷い言い草だと文句を言う。
「冬弥。また鳥居は大きくなっている。時たまあの子供が階段を作っては伸ばしたり縮めたりしておるが」
「何の辺まで伸びてます?」
「あれは人間の力じゃぁないよ。漆でさえ尾が逆だってたからねぇ」
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