10 / 73
下宿人
.
しおりを挟む
外に出て見送ってから、時計をみるともうすぐ朝の5時だった。
朝餉の用意には早いと思いながらも、土間へ行き久し振りに釜でご飯を炊くことに。
昨夜の食器なども片付けられており、全部綺麗に無くなっていたので、糠床から那須、胡瓜、大根を出して切って器に入れて蓋をする。
コンロの方で揚げを甘く煮、冷ましてから残りご飯にヒジキを混ぜて詰めていく。
ひじき稲荷の出来上がりだが、数は足りるだろうかと重箱に詰めていく。
勿論、秋彪様なのだが。
味噌汁は、大根と揚げにワカメ。今日は白味噌で少し甘めだが、いつも赤味噌も合せ味噌も使い飽きないようにはしている。
月末の家賃まで少しばかり日もあるので、暫くは簡単なもので我慢してもらおう……
六時をすぎると誰か起き始めるので、だし巻きに鮭を焼いて平皿に乗せていく。
それらを机に並べ、米を見てから火をかき出し、海苔や佃煮など全部並べてから、先に自分専用のお膳を用意しテレビを付けて食事を摂る。
__前にお伝えした神社取り壊しの件ですが、町の町民も古墳があることを知らず、神社には宮司もいない状態で荒れ果ててはいるものの、取り壊しはなくなり、新たな宮司を迎え神社の修復作業とともに、古墳の調査が行われることとなりました。
次のニュースです。
東冬町の__
何とか回避できたようで良かったと、お代わりをして味噌汁を飲んでいると、海都と隆弘が揃って起きてきた。
「あれ?早くない?」
「昨日はすいませんでしたねぇ。急な用事でして」
「それはいいんだけど、最近出かけるの多くない?」
「しばらく忙しくなりそうで皆さんには迷惑をかけますが、夕餉の支度はしますので」
「あんまり忙しかったらいいですよ?俺達も多少は作れるんで」
「野菜炒めとラーメンですか?」
「それを言われたら言い返す言葉もないけど、みんなでやれば何かしら出来ると……洗い物はみんな得意になりましたけど」
「では、少しの間できない時はお願いしましょうかねぇ」
「それとさ、俺明日学校休みなんだけど」
「なにかありましたっけ?プリントは私が保護者代わりに貰ってますが」
「入試だよ。二次試験の」
「なら、明日は手伝いでもしてもらいましょうか……」
「やるやる!何するの?」
「薪割りを」
ガクッと海都が肩を落とし、ポンポンと肩を叩き頑張れ!次の日は筋肉痛だと隆弘が笑っている。
みんな起きてごはんの準備を始めたので、揃ったところで口を開く。
「食べながらでいいので聞いてくださいね。来週末に、今度高校一年になる子がこの下宿に来ます。
親御さんの都合で引越しとなるので、早めに来ますが、みなさん仲良くしてあげてくださいね?」
「どんな子?」
「そうですねぇ、おとなしい感じの子でした。でも、海都のいい弟になりそうですね」
「その子ってうちの大学付属?」と聞かれ、合格発表が引越しの次の日だと思い出す。
「一先ず、私がついて見に行きますが……ご馳走はなしですよ?」
「なんで?歓迎会とかいつもしてるじゃん!」
「では、合格ならば歓迎会を兼ねてしましょう。もし駄目でも公立も受けるそうなので、勉強の邪魔はしては行けませんよ?後は、卒業祝い兼送別会のみです」
「よし、受かれよそいつ!」
「海都、お前ジュース飲みたいだけだろ?漫画ばっか買ってるから金がなくなるんだよ。うちの居酒屋でバイトするか?」
「母ちゃんがさ、三月の成績しだいだって!みんなに教えてもらわないと数学が本当にやばいんだよ俺」
「理数系は堀内さんか……」
「いいですよ?いる日だけになりますけど。ボード見てくださいね?」
「ありがとう!後化学もお願い!」
「冬弥さん、出来が悪かったらバイト料もらっていいでしょうか?」
「お小遣から取ってやってください。漫画禁止とかでジュース買えますよね?」
「そんなぁ……」
「頑張るしかないですねぇ。さっ、食事の終わった子から学校の支度をしなさい。そろそろ時間になりますよ?」
大学生は余裕があるようだが、高校生2人はヤバイとばかりに食器を持って流しにつけに行く。
鞄を持って「行ってきまぁーす」と元気に出ていくので見送り、みんなの予定の書いてあるボードの確認をしてから、洗い場へと膳を持っていき洗う。
ご馳走様でしたと大学生達も流しにつけに来たので、夕飯はどうします?と聞く。
二人はアルバイト。院生は荷物整理で大学へ行くだけだと言い、居酒屋でアルバイトしている菊池賢治だけ夕飯が要らないという。
天気が良いので洗濯物をし、空き部屋の掃除を始める。
「冬弥様、誰も居なくなったので手伝いを。残してきたものもだんだんと帰ってきています」
「なら、交代で秋彪のところに行ってくれないかい?稲荷が置いてあるから持って行っておくれ」
「分かりました。しかし、そうすると手伝えるものが……」
「この位はできるからいいよ。今は秋彪の回復の方が大事だからね」
洗い物を済ませてから畳をあげて窓から出し、叩いて埃を落として天日干しにする。
上げた畳の下の板を確認して掃除を済ませ、流しやトイレなども掃除・消毒して行く。
押し入れを開ける前に、8畳の畳も開けてから、すばやく拭き掃除を終わらせ、外の畳を中へ立て掛け、新しく8枚を外に出し叩く。
夕方まで干して中に入れて立てておけば、あとは換気でいいだろうと窓をすべて開けたまま部屋を後にする。
「冬弥様、使いが済みました。秋彪様は元気になられています。ほかの狐達もです」
「ご苦労だったねぇ」
「秋彪様からの伝言ですが、稲荷の中に変なものを入れるな。でも美味かった!今宵は来なくて大丈夫だ。との事です」
「そう……でも、そんなわけにはいかないよねぇ?今からみんな休んで、夜には3匹秋彪の所に行っておくれ。バレるだろうけど、追い出しはしないだろうよ」
「ですが、こちらの神社が手薄になってしまいます」
「ここは私一人でも十分。お前達を危険な目には合わせたくないですからねぇ」
「せめて、一尾お連れくださいませ!」
「好きにするといいですが、回復の子達は疲れてるだろうから、今日は出ちゃダメですよ?」
朝餉の用意には早いと思いながらも、土間へ行き久し振りに釜でご飯を炊くことに。
昨夜の食器なども片付けられており、全部綺麗に無くなっていたので、糠床から那須、胡瓜、大根を出して切って器に入れて蓋をする。
コンロの方で揚げを甘く煮、冷ましてから残りご飯にヒジキを混ぜて詰めていく。
ひじき稲荷の出来上がりだが、数は足りるだろうかと重箱に詰めていく。
勿論、秋彪様なのだが。
味噌汁は、大根と揚げにワカメ。今日は白味噌で少し甘めだが、いつも赤味噌も合せ味噌も使い飽きないようにはしている。
月末の家賃まで少しばかり日もあるので、暫くは簡単なもので我慢してもらおう……
六時をすぎると誰か起き始めるので、だし巻きに鮭を焼いて平皿に乗せていく。
それらを机に並べ、米を見てから火をかき出し、海苔や佃煮など全部並べてから、先に自分専用のお膳を用意しテレビを付けて食事を摂る。
__前にお伝えした神社取り壊しの件ですが、町の町民も古墳があることを知らず、神社には宮司もいない状態で荒れ果ててはいるものの、取り壊しはなくなり、新たな宮司を迎え神社の修復作業とともに、古墳の調査が行われることとなりました。
次のニュースです。
東冬町の__
何とか回避できたようで良かったと、お代わりをして味噌汁を飲んでいると、海都と隆弘が揃って起きてきた。
「あれ?早くない?」
「昨日はすいませんでしたねぇ。急な用事でして」
「それはいいんだけど、最近出かけるの多くない?」
「しばらく忙しくなりそうで皆さんには迷惑をかけますが、夕餉の支度はしますので」
「あんまり忙しかったらいいですよ?俺達も多少は作れるんで」
「野菜炒めとラーメンですか?」
「それを言われたら言い返す言葉もないけど、みんなでやれば何かしら出来ると……洗い物はみんな得意になりましたけど」
「では、少しの間できない時はお願いしましょうかねぇ」
「それとさ、俺明日学校休みなんだけど」
「なにかありましたっけ?プリントは私が保護者代わりに貰ってますが」
「入試だよ。二次試験の」
「なら、明日は手伝いでもしてもらいましょうか……」
「やるやる!何するの?」
「薪割りを」
ガクッと海都が肩を落とし、ポンポンと肩を叩き頑張れ!次の日は筋肉痛だと隆弘が笑っている。
みんな起きてごはんの準備を始めたので、揃ったところで口を開く。
「食べながらでいいので聞いてくださいね。来週末に、今度高校一年になる子がこの下宿に来ます。
親御さんの都合で引越しとなるので、早めに来ますが、みなさん仲良くしてあげてくださいね?」
「どんな子?」
「そうですねぇ、おとなしい感じの子でした。でも、海都のいい弟になりそうですね」
「その子ってうちの大学付属?」と聞かれ、合格発表が引越しの次の日だと思い出す。
「一先ず、私がついて見に行きますが……ご馳走はなしですよ?」
「なんで?歓迎会とかいつもしてるじゃん!」
「では、合格ならば歓迎会を兼ねてしましょう。もし駄目でも公立も受けるそうなので、勉強の邪魔はしては行けませんよ?後は、卒業祝い兼送別会のみです」
「よし、受かれよそいつ!」
「海都、お前ジュース飲みたいだけだろ?漫画ばっか買ってるから金がなくなるんだよ。うちの居酒屋でバイトするか?」
「母ちゃんがさ、三月の成績しだいだって!みんなに教えてもらわないと数学が本当にやばいんだよ俺」
「理数系は堀内さんか……」
「いいですよ?いる日だけになりますけど。ボード見てくださいね?」
「ありがとう!後化学もお願い!」
「冬弥さん、出来が悪かったらバイト料もらっていいでしょうか?」
「お小遣から取ってやってください。漫画禁止とかでジュース買えますよね?」
「そんなぁ……」
「頑張るしかないですねぇ。さっ、食事の終わった子から学校の支度をしなさい。そろそろ時間になりますよ?」
大学生は余裕があるようだが、高校生2人はヤバイとばかりに食器を持って流しにつけに行く。
鞄を持って「行ってきまぁーす」と元気に出ていくので見送り、みんなの予定の書いてあるボードの確認をしてから、洗い場へと膳を持っていき洗う。
ご馳走様でしたと大学生達も流しにつけに来たので、夕飯はどうします?と聞く。
二人はアルバイト。院生は荷物整理で大学へ行くだけだと言い、居酒屋でアルバイトしている菊池賢治だけ夕飯が要らないという。
天気が良いので洗濯物をし、空き部屋の掃除を始める。
「冬弥様、誰も居なくなったので手伝いを。残してきたものもだんだんと帰ってきています」
「なら、交代で秋彪のところに行ってくれないかい?稲荷が置いてあるから持って行っておくれ」
「分かりました。しかし、そうすると手伝えるものが……」
「この位はできるからいいよ。今は秋彪の回復の方が大事だからね」
洗い物を済ませてから畳をあげて窓から出し、叩いて埃を落として天日干しにする。
上げた畳の下の板を確認して掃除を済ませ、流しやトイレなども掃除・消毒して行く。
押し入れを開ける前に、8畳の畳も開けてから、すばやく拭き掃除を終わらせ、外の畳を中へ立て掛け、新しく8枚を外に出し叩く。
夕方まで干して中に入れて立てておけば、あとは換気でいいだろうと窓をすべて開けたまま部屋を後にする。
「冬弥様、使いが済みました。秋彪様は元気になられています。ほかの狐達もです」
「ご苦労だったねぇ」
「秋彪様からの伝言ですが、稲荷の中に変なものを入れるな。でも美味かった!今宵は来なくて大丈夫だ。との事です」
「そう……でも、そんなわけにはいかないよねぇ?今からみんな休んで、夜には3匹秋彪の所に行っておくれ。バレるだろうけど、追い出しはしないだろうよ」
「ですが、こちらの神社が手薄になってしまいます」
「ここは私一人でも十分。お前達を危険な目には合わせたくないですからねぇ」
「せめて、一尾お連れくださいませ!」
「好きにするといいですが、回復の子達は疲れてるだろうから、今日は出ちゃダメですよ?」
0
お気に入りに追加
224
あなたにおすすめの小説
下宿屋 東風荘 5
浅井 ことは
キャラ文芸
☆.。.:*°☆.。.:*°☆.。.:*°☆.。.:*゜☆.。.:*゚☆
下宿屋を営む天狐の養子となった雪翔。
車椅子生活を送りながらも、みんなに助けられながらリハビリを続け、少しだけ掴まりながら歩けるようにまでなった。
そんな雪翔と新しい下宿屋で再開した幼馴染の航平。
彼にも何かの能力が?
そんな幼馴染に狐の養子になったことを気づかれ、一緒に狐の国に行くが、そこで思わぬハプニングが__
雪翔にのんびり学生生活は戻ってくるのか!?
☆.。.:*°☆.。.:*°☆.。.:*°☆.。.:*☆.。.:*゚☆
イラストの無断使用は固くお断りさせて頂いております。
下宿屋 東風荘 2
浅井 ことは
キャラ文芸
※※※※※
下宿屋を営み、趣味は料理と酒と言う変わり者の主。
毎日の夕餉を楽しみに下宿屋を営むも、千年祭の祭りで無事に鳥居を飛んだ冬弥。
しかし、飛んで仙になるだけだと思っていた冬弥はさらなる試練を受けるべく、空高く舞い上がったまま消えてしまった。
下宿屋は一体どうなるのか!
そして必ず戻ってくると信じて待っている、残された雪翔の高校生活は___
※※※※※
下宿屋東風荘 第二弾。
下宿屋 東風荘 3
浅井 ことは
キャラ文芸
※※※※※
下宿屋を営み、趣味は料理と酒と言う変わり者の主。
毎日の夕餉を楽しみに下宿屋を営むも、千年祭の祭りで無事に鳥居を飛んだ冬弥。
そして雪翔を息子に迎えこれからの生活を夢見るも、天狐となった冬弥は修行でなかなか下宿に戻れず。
その間に息子の雪翔は高校生になりはしたが、離れていたために苦労している息子を助けることも出来ず、後悔ばかりしていたが、やっとの事で再会を果たし、新しく下宿屋を建て替えるが___
※※※※※
下宿屋 東風荘 6
浅井 ことは
キャラ文芸
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*°☆.。.:*・°☆*:..
楽しい旅行のあと、陰陽師を名乗る男から奇襲を受けた下宿屋 東風荘。
それぞれの社のお狐達が守ってくれる中、幼馴染航平もお狐様の養子となり、新たに新学期を迎えるが______
雪翔に平穏な日々はいつ訪れるのか……
☆.。.:*°☆.。.:*°☆.。.:*°☆.。.:*☆.。.:*゚☆
表紙の無断使用は固くお断りさせて頂いております。
軍艦少女は死に至る夢を見る~戦時下の大日本帝国から始まる艦船擬人化物語~
takahiro
キャラ文芸
『船魄』(せんぱく)とは、軍艦を自らの意のままに操る少女達である。船魄によって操られる艦艇、艦載機の能力は人間のそれを圧倒し、彼女達の前に人間は殲滅されるだけの存在なのだ。1944年10月に覚醒した最初の船魄、翔鶴型空母二番艦『瑞鶴』は、日本本土進攻を企てるアメリカ海軍と激闘を繰り広げ、ついに勝利を掴んだ。
しかし戦後、瑞鶴は帝国海軍を脱走し行方をくらませた。1955年、アメリカのキューバ侵攻に端を発する日米の軍事衝突の最中、瑞鶴は再び姿を現わし、帝国海軍と交戦状態に入った。瑞鶴の目的はともかくとして、船魄達を解放する戦いが始まったのである。瑞鶴が解放した重巡『妙高』『高雄』、いつの間にかいる空母『グラーフ・ツェッペリン』は『月虹』を名乗って、国家に属さない軍事力として活動を始める。だが、瑞鶴は大義やら何やらには興味がないので、利用できるものは何でも利用する。カリブ海の覇権を狙う日本・ドイツ・ソ連・アメリカの間をのらりくらりと行き交いながら、月虹は生存の道を探っていく。
登場する艦艇はなんと57隻!(2024/12/18時点)(人間のキャラは他に多数)(まだまだ増える)。人類に反旗を翻した軍艦達による、異色の艦船擬人化物語が、ここに始まる。
――――――――――
●本作のメインテーマは、あくまで(途中まで)史実の地球を舞台とし、そこに船魄(せんぱく)という異物を投入したらどうなるのか、です。いわゆる艦船擬人化ものですが、特に軍艦や歴史の知識がなくとも楽しめるようにしてあります。もちろん知識があった方が楽しめることは違いないですが。
●なお軍人がたくさん出て来ますが、船魄同士の関係に踏み込むことはありません。つまり船魄達の人間関係としては百合しかありませんので、ご安心もしくはご承知おきを。かなりGLなので、もちろんがっつり性描写はないですが、苦手な方はダメかもしれません。
●全ての船魄に挿絵ありですが、AI加筆なので雰囲気程度にお楽しみください。
●少女たちの愛憎と謀略が絡まり合う、新感覚、リアル志向の艦船擬人化小説を是非お楽しみください。またお気に入りや感想などよろしくお願いします。
毎日一話投稿します。
山蛭様といっしょ。
ちづ
キャラ文芸
ダーク和風ファンタジー異類婚姻譚です。
和風吸血鬼(ヒル)と虐げられた村娘の話。短編ですので、もしよかったら。
不気味な恋を目指しております。
気持ちは少女漫画ですが、
残酷描写、ヒル等の虫の描写がありますので、苦手な方又は15歳未満の方はご注意ください。
表紙はかんたん表紙メーカーさんで作らせて頂きました。https://sscard.monokakitools.net/covermaker.html
百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
貧乏神の嫁入り
石田空
キャラ文芸
先祖が貧乏神のせいで、どれだけ事業を起こしても失敗ばかりしている中村家。
この年もめでたく御店を売りに出すことになり、長屋生活が終わらないと嘆いているいろりの元に、一発逆転の縁談の話が舞い込んだ。
風水師として名を馳せる鎮目家に、ぜひともと呼ばれたのだ。
貧乏神の末裔だけど受け入れてもらえるかしらと思いながらウキウキで嫁入りしたら……鎮目家の虚弱体質な跡取りのもとに嫁入りしろという。
貧乏神なのに、虚弱体質な旦那様の元に嫁いで大丈夫?
いろりと桃矢のおかしなおかしな夫婦愛。
*カクヨム、エブリスタにも掲載中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる