7 / 73
・
しおりを挟む
そろそろ約束の13時だと思い、ポットで湯を沸かしお茶とジュースの用意をしておく。
本当はやかんで沸かしたいのだが、神社に行っていたので予定が狂ってしまっている。
玄関先に立ち、門を開けて車が入れるようにしておく。
下宿人は免許は持っているが車は持ってはいない。1台車があるので、それをみんなで使っている状態だ。
使うのも、下宿に関係ある時にしか使わないので、それ程いい車でもないが、ワゴンにしてあるので、荷物もたくさん乗るし、病気の時でも寝かせて連れていくことが出来る。
門から右奥が家なので、左側の端に車が止めてあり、1台自転車も置いてある。
紺色の軽自動車が入ってきたので、入口前に止めてもらい出迎えると、子供が二人に増えている。
「電話した早乙女と申します」
「下宿屋の主、冬弥と申します。中へどうぞ」と招き入れる。
お茶とジュースを二つ出し、話を聞くと、下の子供を置いてくることが出来なかったのでとの事だった。
「あの、受験結果はまだ出ていないんですが、この近くの公立も受けることになっていまして……」と長い説明を笑顔で聞き、子供の様子を見る。
「家は基本、子供たちに何でもやらせています。ここの客間の横の板間が食堂。朝は学校があるので片付けは私が。ですが、お茶碗や汁椀に箸など自分で用意し、洗うまでが食事としています。
共有部分は大学生も含め交代で掃除当番があり、各部屋の掃除と洗濯は自分で。乾燥機もありますが、梅雨時期くらいしか使いません。それに建物も古いので……これが家賃の安い理由の一つです。
後、親御さんと同じようにルールを守らなければ叱りますし、手伝いを頼むこともあります。私もすべて出来る訳では無いので、お休みとして、日曜の夕方はカレーやハヤシライスを作っておくので、昼と夜は子供達で食事を取ってもらい、お休みをいただいております。それでも宜しいでしょうか?」
「はい。今部屋は空いてますか?」
「まだ掃除が済んでいませんが、空いた部屋が一つ。こちらです」と案内する。
「南向きなので、日当たりはいいです。学習机もありますので。入ってすぐがミニキッチンとトイレ。4畳ですが、ほとんどの子がここで休みの日は食事などしているようです。奥の8畳に机と押し入れがあります」
「思っていたよりも広いですね。部屋も綺麗だし」
「布団の子もいますが、箪笥やベッド等置いてもらって構いません。それと、この下宿ではみんなが他人ではなく、家族として暮らしています。勉強なども大学生が見てくれたりします」
「雪ちゃん、ここに決めたら?」
「うん……」
「お小遣いなどは家庭から。土曜や日曜の食費など少し生活費がいりますが、金額はそれぞれ家庭によって違います。なので一年生の子はアルバイトをする子が少ないので、毎月のお小遣いと生活費を少し仕送りされている家が多いですね」
「分かりました。でも、来週には引越しでして……」
「構いませんよ。この部屋でしたら用意できますが」
「お願いします。卒業式は迎えに来ますが、学校はもう休んでも構わないそうなので」
「えーっと、雪翔君はいいのかい?」
「はい。宜しくお願いします。自転車とかは……」
「歩いても2.30分だし、坂道が嫌だとみんな乗らないんだよねぇ。もってきてもいいけど」
「やめておきます……」
そのまま契約が済み、日割りのぶんと一緒に敷金礼金も受け取り、印を押す。
引越しは家族の引越しと同じ日なので一人で来る事になったが、親は心配していないらしい。
子供達に手を振り、来週を楽しみに自室へ一度戻り着替え、影を戻す。
軽トラックが荷物を運んできてくれたので、中まで運んでもらうが、今風邪が流行っているから、気をつけなよと、酒屋から貰ったからと請求書と共に、スポーツドリンクを貰う。
「月末に集金に来るって言ってたから」と日用品店の主人から請求書を受け取りお礼を言って中に入り分けてしまっていく。
昨日までが豪華だったので今日から普通の食事だと、材料を見て献立を考える。
夜は出ていかなければいけないので、米を研ぎ、鍋に湯を沸かし、米のとぎ汁で大根を炊く。
その間にブリの粗を適度な大きさに切り、鍋でさっと湯通ししてから冷水で締め、炊けた大根とブリを入れて茹で、灰汁を取ってから、醤油、みりん、酒、出汁で味をつけて炊く。
もう一品中鉢用にと、小松菜と厚揚げをさっと湯通しして、白だし醤油で味付けし、器にいれてラップをかけておく。
あとは味噌汁と漬物があればいいだろうと、土間のテーブルに料理を置き、メモを残す。
_____
本日は急用の為、温めて食べてください。
酒屋さんからスポーツドリンクを頂いたので、飲みすぎないように!
冷蔵庫の中の漬物も忘れずに。
冬弥
_____
これで、今から仮眠して夜にでかければ問題ないだろう。
本当はやかんで沸かしたいのだが、神社に行っていたので予定が狂ってしまっている。
玄関先に立ち、門を開けて車が入れるようにしておく。
下宿人は免許は持っているが車は持ってはいない。1台車があるので、それをみんなで使っている状態だ。
使うのも、下宿に関係ある時にしか使わないので、それ程いい車でもないが、ワゴンにしてあるので、荷物もたくさん乗るし、病気の時でも寝かせて連れていくことが出来る。
門から右奥が家なので、左側の端に車が止めてあり、1台自転車も置いてある。
紺色の軽自動車が入ってきたので、入口前に止めてもらい出迎えると、子供が二人に増えている。
「電話した早乙女と申します」
「下宿屋の主、冬弥と申します。中へどうぞ」と招き入れる。
お茶とジュースを二つ出し、話を聞くと、下の子供を置いてくることが出来なかったのでとの事だった。
「あの、受験結果はまだ出ていないんですが、この近くの公立も受けることになっていまして……」と長い説明を笑顔で聞き、子供の様子を見る。
「家は基本、子供たちに何でもやらせています。ここの客間の横の板間が食堂。朝は学校があるので片付けは私が。ですが、お茶碗や汁椀に箸など自分で用意し、洗うまでが食事としています。
共有部分は大学生も含め交代で掃除当番があり、各部屋の掃除と洗濯は自分で。乾燥機もありますが、梅雨時期くらいしか使いません。それに建物も古いので……これが家賃の安い理由の一つです。
後、親御さんと同じようにルールを守らなければ叱りますし、手伝いを頼むこともあります。私もすべて出来る訳では無いので、お休みとして、日曜の夕方はカレーやハヤシライスを作っておくので、昼と夜は子供達で食事を取ってもらい、お休みをいただいております。それでも宜しいでしょうか?」
「はい。今部屋は空いてますか?」
「まだ掃除が済んでいませんが、空いた部屋が一つ。こちらです」と案内する。
「南向きなので、日当たりはいいです。学習机もありますので。入ってすぐがミニキッチンとトイレ。4畳ですが、ほとんどの子がここで休みの日は食事などしているようです。奥の8畳に机と押し入れがあります」
「思っていたよりも広いですね。部屋も綺麗だし」
「布団の子もいますが、箪笥やベッド等置いてもらって構いません。それと、この下宿ではみんなが他人ではなく、家族として暮らしています。勉強なども大学生が見てくれたりします」
「雪ちゃん、ここに決めたら?」
「うん……」
「お小遣いなどは家庭から。土曜や日曜の食費など少し生活費がいりますが、金額はそれぞれ家庭によって違います。なので一年生の子はアルバイトをする子が少ないので、毎月のお小遣いと生活費を少し仕送りされている家が多いですね」
「分かりました。でも、来週には引越しでして……」
「構いませんよ。この部屋でしたら用意できますが」
「お願いします。卒業式は迎えに来ますが、学校はもう休んでも構わないそうなので」
「えーっと、雪翔君はいいのかい?」
「はい。宜しくお願いします。自転車とかは……」
「歩いても2.30分だし、坂道が嫌だとみんな乗らないんだよねぇ。もってきてもいいけど」
「やめておきます……」
そのまま契約が済み、日割りのぶんと一緒に敷金礼金も受け取り、印を押す。
引越しは家族の引越しと同じ日なので一人で来る事になったが、親は心配していないらしい。
子供達に手を振り、来週を楽しみに自室へ一度戻り着替え、影を戻す。
軽トラックが荷物を運んできてくれたので、中まで運んでもらうが、今風邪が流行っているから、気をつけなよと、酒屋から貰ったからと請求書と共に、スポーツドリンクを貰う。
「月末に集金に来るって言ってたから」と日用品店の主人から請求書を受け取りお礼を言って中に入り分けてしまっていく。
昨日までが豪華だったので今日から普通の食事だと、材料を見て献立を考える。
夜は出ていかなければいけないので、米を研ぎ、鍋に湯を沸かし、米のとぎ汁で大根を炊く。
その間にブリの粗を適度な大きさに切り、鍋でさっと湯通ししてから冷水で締め、炊けた大根とブリを入れて茹で、灰汁を取ってから、醤油、みりん、酒、出汁で味をつけて炊く。
もう一品中鉢用にと、小松菜と厚揚げをさっと湯通しして、白だし醤油で味付けし、器にいれてラップをかけておく。
あとは味噌汁と漬物があればいいだろうと、土間のテーブルに料理を置き、メモを残す。
_____
本日は急用の為、温めて食べてください。
酒屋さんからスポーツドリンクを頂いたので、飲みすぎないように!
冷蔵庫の中の漬物も忘れずに。
冬弥
_____
これで、今から仮眠して夜にでかければ問題ないだろう。
0
お気に入りに追加
224
あなたにおすすめの小説
毒小町、宮中にめぐり逢ふ
鈴木しぐれ
キャラ文芸
🌸完結しました🌸生まれつき体に毒を持つ、藤原氏の娘、菫子(すみこ)。毒に詳しいという理由で、宮中に出仕することとなり、帝の命を狙う毒の特定と、その首謀者を突き止めよ、と命じられる。
生まれつき毒が効かない体質の橘(たちばなの)俊元(としもと)と共に解決に挑む。
しかし、その調査の最中にも毒を巡る事件が次々と起こる。それは菫子自身の秘密にも関係していて、ある真実を知ることに……。
甘灯の思いつき短編集
甘灯
キャラ文芸
作者の思いつきで書き上げている短編集です。 (現在16作品を掲載しております)
※本編は現実世界が舞台になっていることがありますが、あくまで架空のお話です。フィクションとして楽しんでくださると幸いです。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
傍へで果報はまどろんで ―真白の忌み仔とやさしい夜の住人たち―
色数
キャラ文芸
「ああそうだ、――死んでしまえばいい」と、思ったのだ。
時は江戸。
開国の音高く世が騒乱に巻き込まれる少し前。
その異様な仔どもは生まれてしまった。
老人のような白髪に空を溶かしこんだ蒼の瞳。
バケモノと謗られ傷つけられて。
果ては誰にも顧みられず、幽閉されて独り育った。
願った幸福へ辿りつきかたを、仔どもは己の死以外に知らなかった。
――だのに。
腹を裂いた仔どもの現実をひるがえして、くるりと現れたそこは【江戸裏】
正真正銘のバケモノたちの住まう夜の町。
魂となってさまよう仔どもはそこで風鈴細工を生業とする盲目のサトリに拾われる。
風鈴の音響く常夜の町で、死にたがりの仔どもが出逢ったこれは得がたい救いのはなし。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
鬼の御宿の嫁入り狐
梅野小吹
キャラ文芸
【書籍化します!】【第6回キャラ文芸大賞/あやかし賞 受賞作】
鬼の一族が棲まう隠れ里には、三つの尾を持つ妖狐の少女が暮らしている。
彼女──縁(より)は、腹部に火傷を負った状態で倒れているところを旅籠屋の次男・琥珀(こはく)によって助けられ、彼が縁を「自分の嫁にする」と宣言したことがきっかけで、羅刹と呼ばれる鬼の一家と共に暮らすようになった。
優しい一家に愛されてすくすくと大きくなった彼女は、天真爛漫な愛らしい乙女へと成長したものの、年頃になるにつれて共に育った琥珀や家族との種族差に疎外感を覚えるようになっていく。
「私だけ、どうして、鬼じゃないんだろう……」
劣等感を抱き、自分が鬼の家族にとって本当に必要な存在なのかと不安を覚える縁。
そんな憂いを抱える中、彼女の元に現れたのは、縁を〝花嫁〟と呼ぶ美しい妖狐の青年で……?
育ててくれた鬼の家族。
自分と同じ妖狐の一族。
腹部に残る火傷痕。
人々が語る『狐の嫁入り』──。
空の隙間から雨が降る時、小さな体に傷を宿して、鬼に嫁入りした少女の話。
傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。
石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。
そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。
新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。
初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、別サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる