78 / 103
お盆祭り
.
しおりを挟む
「風呂から出たのはいいが、鍵を持ってないのに気付いてまっておった」
「術で入れるだろう?」
「旅館の者ご部屋の前にいたから辞めておいただけじゃ」
「姿が消せるだろう?」
「消したまま仲居がいなくなるのを長々と待つのは嫌じゃ」
「とにかく部屋に……」
みんなで戻り、明日どのようにしていくのかを聞くと、うずめさんの術で行くと言う。
それならば移動は楽でいいが、午前中に行くのではなく、午後から行くという。
「なんで昼からなんですか?」
「三十三間堂と清水寺が見たいからじゃ。清水寺ならば、大国が祀られてるところがあるじゃろう?ほれ、恋のなんとかってやつ。ちぃっとイタズラでもしてこようかのと思って」
「駄目ですってば」
「翔平、今日はお主の受験とやらの神頼みもした。少しは付き合え」
そんな理由だったのか!!!
俺は真剣なのに……
「何か考えでもあるのか?」
「まぁ、祭りは笹の葉に願いを書いた紙切れをはりつけるだけじゃろ?私達がしなくてはならないのは、あやかし退治じゃ。しかも祭神が素戔嗚尊って分かってるか?今回はあやつが暴れぬように見張るのが目的みたいなものじゃからなぁ」
「素戔嗚尊って、天照大神の弟の?」
「それ以外に何がおる?」
天照大神が天の岩戸に隠れた原因が素戔嗚尊と聞かされた時には、話に聞いていたうずめさんの踊りのことを思い出したが、素戔嗚尊もそのことが原因で高天原を追放されたと言う。
その後は知ってる話もあるだろう?と八岐大蛇の話にまでなった。
「あれは、素戔嗚尊が一人の姫に一目惚れしたから倒しに行ったみたいなものじゃし、それでしばらくは大人しかったんだからまぁ良しとしておこう」
「今は?」
「相変わらず、暴れん坊と言うか、手に負えんと言うか……」
スマホで検索して絵を見せると、うずめさんもテチも大笑いし、迦具土に至っては瓜二つと言っている。
「じゃあ!本当にこんなに髭がぼうぼうに生えてて、乱暴者なのか?」と怖いもの知らずの兄が聞くが、それも笑いながら「そうそう」とみんな否定しない。
明日会うのかと思うと憂鬱になるが、見てみたい気持ちのが大きく、さらに検索をかけてどんな人なのか頭に入れておく。
朝、ご飯のお櫃全部うずめさんが食べてしまい、新しくご飯を貰うものの、「宿とはおかずが少ない」と文句を言い、お膳に付いていた温泉卵をご飯の上に乗せて醤油をかけ、書き込む姿は既に女ではない。
「翔平、お茶!」
はいはい。とお茶を入れて自分も食べるのだが、まだ満足してないのかお膳をじーっと見てくる。
「あ、あげませんよ?」
「ケチ」
いやいや、今から色々と回るのならばお昼まで何も食べられないじゃないか。
絡まれるのは大抵俺で、兄は呑気にお味噌汁を飲んだ後にお茶を飲み、満足だーなどと言っている。
夕飯もそうだったが、テチは体の割にそれほど食べず、小さくて細いうずめさんはかなり食べる。
宿を出て歩いていると、「あ、あんな所にちゃやが!」「あそこはうどん蕎麦と書いてある」とかなり食に貪欲……すぎる。
「テチさん、いつもこんな感じなんですか?」
「大体は……踊りで魔を祓う時など特にお腹が空くらしい」
「今力も何も使ってないですよね?」
「翔平、食うのはうずめの趣味だ。何故か太らんがな」
「えー、それは羨ましいけど食べ過ぎじゃない?」
「俺はご飯を美味しく食べる人好きだけどな」
兄貴、それは浮気か?
石長さんにチクるぞ?
「術で入れるだろう?」
「旅館の者ご部屋の前にいたから辞めておいただけじゃ」
「姿が消せるだろう?」
「消したまま仲居がいなくなるのを長々と待つのは嫌じゃ」
「とにかく部屋に……」
みんなで戻り、明日どのようにしていくのかを聞くと、うずめさんの術で行くと言う。
それならば移動は楽でいいが、午前中に行くのではなく、午後から行くという。
「なんで昼からなんですか?」
「三十三間堂と清水寺が見たいからじゃ。清水寺ならば、大国が祀られてるところがあるじゃろう?ほれ、恋のなんとかってやつ。ちぃっとイタズラでもしてこようかのと思って」
「駄目ですってば」
「翔平、今日はお主の受験とやらの神頼みもした。少しは付き合え」
そんな理由だったのか!!!
俺は真剣なのに……
「何か考えでもあるのか?」
「まぁ、祭りは笹の葉に願いを書いた紙切れをはりつけるだけじゃろ?私達がしなくてはならないのは、あやかし退治じゃ。しかも祭神が素戔嗚尊って分かってるか?今回はあやつが暴れぬように見張るのが目的みたいなものじゃからなぁ」
「素戔嗚尊って、天照大神の弟の?」
「それ以外に何がおる?」
天照大神が天の岩戸に隠れた原因が素戔嗚尊と聞かされた時には、話に聞いていたうずめさんの踊りのことを思い出したが、素戔嗚尊もそのことが原因で高天原を追放されたと言う。
その後は知ってる話もあるだろう?と八岐大蛇の話にまでなった。
「あれは、素戔嗚尊が一人の姫に一目惚れしたから倒しに行ったみたいなものじゃし、それでしばらくは大人しかったんだからまぁ良しとしておこう」
「今は?」
「相変わらず、暴れん坊と言うか、手に負えんと言うか……」
スマホで検索して絵を見せると、うずめさんもテチも大笑いし、迦具土に至っては瓜二つと言っている。
「じゃあ!本当にこんなに髭がぼうぼうに生えてて、乱暴者なのか?」と怖いもの知らずの兄が聞くが、それも笑いながら「そうそう」とみんな否定しない。
明日会うのかと思うと憂鬱になるが、見てみたい気持ちのが大きく、さらに検索をかけてどんな人なのか頭に入れておく。
朝、ご飯のお櫃全部うずめさんが食べてしまい、新しくご飯を貰うものの、「宿とはおかずが少ない」と文句を言い、お膳に付いていた温泉卵をご飯の上に乗せて醤油をかけ、書き込む姿は既に女ではない。
「翔平、お茶!」
はいはい。とお茶を入れて自分も食べるのだが、まだ満足してないのかお膳をじーっと見てくる。
「あ、あげませんよ?」
「ケチ」
いやいや、今から色々と回るのならばお昼まで何も食べられないじゃないか。
絡まれるのは大抵俺で、兄は呑気にお味噌汁を飲んだ後にお茶を飲み、満足だーなどと言っている。
夕飯もそうだったが、テチは体の割にそれほど食べず、小さくて細いうずめさんはかなり食べる。
宿を出て歩いていると、「あ、あんな所にちゃやが!」「あそこはうどん蕎麦と書いてある」とかなり食に貪欲……すぎる。
「テチさん、いつもこんな感じなんですか?」
「大体は……踊りで魔を祓う時など特にお腹が空くらしい」
「今力も何も使ってないですよね?」
「翔平、食うのはうずめの趣味だ。何故か太らんがな」
「えー、それは羨ましいけど食べ過ぎじゃない?」
「俺はご飯を美味しく食べる人好きだけどな」
兄貴、それは浮気か?
石長さんにチクるぞ?
0
お気に入りに追加
93
あなたにおすすめの小説
ハバナイスデイズ~きっと完璧には勝てない~
415
ファンタジー
「ゆりかごから墓場まで。この世にあるものなんでもござれの『岩戸屋』店主、平坂ナギヨシです。冷やかしですか?それとも……ご依頼でしょうか?」
普遍と異変が交差する混沌都市『露希』 。
何でも屋『岩戸屋』を構える三十路の男、平坂ナギヨシは、武市ケンスケ、ニィナと今日も奔走する。
死にたがりの男が織り成すドタバタバトルコメディ。素敵な日々が今始まる……かもしれない。
神送りの夜
千石杏香
ホラー
由緒正しい神社のある港町。そこでは、海から来た神が祀られていた。神は、春分の夜に呼び寄せられ、冬至の夜に送り返された。しかしこの二つの夜、町民は決して外へ出なかった。もし外へ出たら、祟りがあるからだ。
父が亡くなったため、彼女はその町へ帰ってきた。幼い頃に、三年間だけ住んでいた町だった。記憶の中では、町には古くて大きな神社があった。しかし誰に訊いても、そんな神社などないという。
町で暮らしてゆくうち、彼女は不可解な事件に巻き込まれてゆく。
俺がママになるんだよ!!~母親のJK時代にタイムリープした少年の話~
美作美琴
キャラ文芸
高校生の早乙女有紀(さおとめゆき)は名前にコンプレックスのある高校生男子だ。
母親の真紀はシングルマザーで有紀を育て、彼は父親を知らないまま成長する。
しかし真紀は急逝し、葬儀が終わった晩に眠ってしまった有紀は目覚めるとそこは授業中の教室、しかも姿は真紀になり彼女の高校時代に来てしまった。
「あなたの父さんを探しなさい」という真紀の遺言を実行するため、有紀は母の親友の美沙と共に自分の父親捜しを始めるのだった。
果たして有紀は無事父親を探し出し元の身体に戻ることが出来るのだろうか?
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
八百万の学校 其の参
浅井 ことは
キャラ文芸
書籍化作品✨神様の学校 八百万ご指南いたします✨の旧題、八百万(かみさま)の学校。参となります。
十七代当主となった翔平と勝手に双子設定された火之迦具土神と祖父母と一緒に暮らしながら、やっと大学生になったのにも関わらず、大国主命や八意永琳の連れてくる癖のある神様たちに四苦八苦。
生徒として現代のことを教える
果たして今度は如何に──
ドタバタほのぼのコメディとなります。
戦国武将と晩ごはん
戦国さん
キャラ文芸
ある地方都市で暮らす女子高校生・御角 倫(みかど りん)。
彼女の家には、なぜか織田信長を筆頭に、週に一度さまざまな武将が訪れてくる。
織田信長と伊達政宗との出会い。
真田兄弟の時空を超えた絆の強さ。
信長と敗走する明智光秀や関白・豊臣秀吉との邂逅。
時間も時空も超えて訪れる武将たちは、倫が振る舞う美味しい現代飯の虜になっていく。
今日も武将たちと倫の間に起こる日常の『飯』物語。
耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー
汐埼ゆたか
キャラ文芸
准教授の藤波怜(ふじなみ れい)が一人静かに暮らす一軒家。
そこに迷い猫のように住み着いた女の子。
名前はミネ。
どこから来たのか分からない彼女は、“女性”と呼ぶにはあどけなく、“少女”と呼ぶには美しい
ゆるりと始まった二人暮らし。
クールなのに優しい怜と天然で素直なミネ。
そんな二人の間に、目には見えない特別な何かが、静かに、穏やかに降り積もっていくのだった。
*****
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
※他サイト掲載
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる