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お盆祭り

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「風呂から出たのはいいが、鍵を持ってないのに気付いてまっておった」

「術で入れるだろう?」

「旅館の者ご部屋の前にいたから辞めておいただけじゃ」

「姿が消せるだろう?」

「消したまま仲居がいなくなるのを長々と待つのは嫌じゃ」

「とにかく部屋に……」

みんなで戻り、明日どのようにしていくのかを聞くと、うずめさんの術で行くと言う。

それならば移動は楽でいいが、午前中に行くのではなく、午後から行くという。

「なんで昼からなんですか?」

「三十三間堂と清水寺が見たいからじゃ。清水寺ならば、大国が祀られてるところがあるじゃろう?ほれ、恋のなんとかってやつ。ちぃっとイタズラでもしてこようかのと思って」

「駄目ですってば」

「翔平、今日はお主の受験とやらの神頼みもした。少しは付き合え」

そんな理由だったのか!!!

俺は真剣なのに……

「何か考えでもあるのか?」

「まぁ、祭りは笹の葉に願いを書いた紙切れをはりつけるだけじゃろ?私達がしなくてはならないのは、あやかし退治じゃ。しかも祭神が素戔嗚尊って分かってるか?今回はあやつが暴れぬように見張るのが目的みたいなものじゃからなぁ」

「素戔嗚尊って、天照大神の弟の?」

「それ以外に何がおる?」

天照大神が天の岩戸に隠れた原因が素戔嗚尊と聞かされた時には、話に聞いていたうずめさんの踊りのことを思い出したが、素戔嗚尊もそのことが原因で高天原を追放されたと言う。
その後は知ってる話もあるだろう?と八岐大蛇の話にまでなった。

「あれは、素戔嗚尊が一人の姫に一目惚れしたから倒しに行ったみたいなものじゃし、それでしばらくは大人しかったんだからまぁ良しとしておこう」

「今は?」

「相変わらず、暴れん坊と言うか、手に負えんと言うか……」

スマホで検索して絵を見せると、うずめさんもテチも大笑いし、迦具土に至っては瓜二つと言っている。

「じゃあ!本当にこんなに髭がぼうぼうに生えてて、乱暴者なのか?」と怖いもの知らずの兄が聞くが、それも笑いながら「そうそう」とみんな否定しない。

明日会うのかと思うと憂鬱になるが、見てみたい気持ちのが大きく、さらに検索をかけてどんな人なのか頭に入れておく。

朝、ご飯のお櫃全部うずめさんが食べてしまい、新しくご飯を貰うものの、「宿とはおかずが少ない」と文句を言い、お膳に付いていた温泉卵をご飯の上に乗せて醤油をかけ、書き込む姿は既に女ではない。

「翔平、お茶!」

はいはい。とお茶を入れて自分も食べるのだが、まだ満足してないのかお膳をじーっと見てくる。


「あ、あげませんよ?」

「ケチ」

いやいや、今から色々と回るのならばお昼まで何も食べられないじゃないか。

絡まれるのは大抵俺で、兄は呑気にお味噌汁を飲んだ後にお茶を飲み、満足だーなどと言っている。

夕飯もそうだったが、テチは体の割にそれほど食べず、小さくて細いうずめさんはかなり食べる。

宿を出て歩いていると、「あ、あんな所にちゃやが!」「あそこはうどん蕎麦と書いてある」とかなり食に貪欲……すぎる。

「テチさん、いつもこんな感じなんですか?」

「大体は……踊りで魔を祓う時など特にお腹が空くらしい」

「今力も何も使ってないですよね?」

「翔平、食うのはうずめの趣味だ。何故か太らんがな」

「えー、それは羨ましいけど食べ過ぎじゃない?」

「俺はご飯を美味しく食べる人好きだけどな」

兄貴、それは浮気か?

石長さんにチクるぞ?
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