上 下
70 / 103
お盆祭り

.

しおりを挟む
祖父も料理が結構上手だ。

祖母には適わないが、男性……特に昔の日本男児と考えると、かなりのレパートリーがある。

冷蔵庫から鮭フレークを取り出した時点で、ほうれん草と鮭の卵焼きだと分かる。

それか、チャーハンなのだが、卵焼き器を出しているのでチャーハンではないだろう。

「婆さんの分も作っておくか。翔平、お前焼くか?」

「無理無理!前もしたけど、結構ぐちゃぐちゃだったし、具が入ってたら余計に巻ける気がしない」

「簡単なのに……だったら漬物切っておいてくれ。味噌汁はあるし、海苔もあるし。魚は諦めろ」

「うん」

ぬか床からきゅうりを出して洗ってから切り、ついでにと白菜の浅漬けも出す。

朝はご飯と味噌汁に漬物でもう満足なのだが、うちは必ず卵料理が一品つく。

「あ、爺ちゃんはんぺん焼いて」

「それは揚げてあるだろう?」

「フライパンで炙った方が美味しいんだもん」

揚げた玉ねぎが練りこんであるはんぺんの袋を持ち、卵を焼いた後でいいからとお願いして、そういえば大国さんも朝ごはん食べていくかな?と二枚入りの揚げはんぺんをもうひと袋出す。

さりげなくソースではなく醤油で食べるのが美味い。

祖父に変わってもらってから少し焦げ目がつくまで炙り、お皿に乗せて四人分用意する。

「あ、飯作ったのか」

「おかえり」

「大国様の気がするから絶対食べてくと思うぞ?」

「あ、そっか……じゃあ、もうひとつ焼かないと」

準備をしようと立ち上がって直ぐに、「飯はいい」と珍しい言葉が聞こえ、つい『え?』と言った顔をして振り向いてしまう。

「俺はもう食った。石長は直ぐに熱は引くだろう。三日過ぎて引かなければ、俺の屋敷に連れていくが、疲れただけだろうし。ってことで俺は帰る」

「ぇぇえええ!」

「何を驚くことがある?」

「だって大国さんがご飯断るなんて大雨でも降るんじゃないかなって思って」

「アホか!神社での朝の務めの時に俺がいない訳には行かないんだ。何かあったら連絡してくれ」

それだけ言って姿が消えたので、とりあえず朝ごはんを食べてしまおうとみんなで食卓につき、洗い物を終えた後に祖母がお粥を作って石長さんのところに持っていき、自分はとにかくノルマをこなすと部屋に行って参考書を開く。

でも、やはり気になって仕方がない。

兄貴に連絡した方がいいのだろうか?

ガチャッと扉の開く音がし、「ノックしてっていつも言ってるじゃん」と迦具土に文句を言うと、「忘れてた」といつもの様に言われ、祖父が呼んでるから降りてこいと言う事だったが、階段の下から呼べば聞こえるといつも言っているのに、律儀に部屋まで伝言を言いに来る。

特に大きな音で音楽を聴くこともないし、たまにイヤフォンをつけて聞く時も長い時間聞いている事もなく、呼ばれる声くらいは聞こえるようにしている。

神様って、意外と律儀。

「爺ちゃん何?」

「あぁ、婆さんの代わりに買い物に行こうと思ってな。そしたらたくさんメモしてくるんで、自転車を引いてもらおうと思って」

「いいよ。すぐ行く?」

「午前中にすましてしまおうか。悪いな、勉強してるのに」

「平気。それに気になって手がつかなかったから」

「あ、婆さんが言ってたんだが、純平には連絡するなよ?」

「それ俺も考えてたんだけど、何で?」

「あいつも仕事があるだろう?休みもなかなか使うわけにいかないだろうし」

「そっか……わかった。でも、大国さんのとこに行くことになったら連絡はするから」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

ハバナイスデイズ~きっと完璧には勝てない~

415
ファンタジー
「ゆりかごから墓場まで。この世にあるものなんでもござれの『岩戸屋』店主、平坂ナギヨシです。冷やかしですか?それとも……ご依頼でしょうか?」 普遍と異変が交差する混沌都市『露希』 。 何でも屋『岩戸屋』を構える三十路の男、平坂ナギヨシは、武市ケンスケ、ニィナと今日も奔走する。 死にたがりの男が織り成すドタバタバトルコメディ。素敵な日々が今始まる……かもしれない。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

付喪神、子どもを拾う。

真鳥カノ
キャラ文芸
旧題:あやかし父さんのおいしい日和 3/13 書籍1巻刊行しました! 8/18 書籍2巻刊行しました!  【第4回キャラ文芸大賞 奨励賞】頂きました!皆様のおかげです!ありがとうございます! おいしいは、嬉しい。 おいしいは、温かい。 おいしいは、いとおしい。 料理人であり”あやかし”の「剣」は、ある日痩せこけて瀕死の人間の少女を拾う。 少女にとって、剣の作るご飯はすべてが宝物のようだった。 剣は、そんな少女にもっとご飯を作ってあげたいと思うようになる。 人間に「おいしい」を届けたいと思うあやかし。 あやかしに「おいしい」を教わる人間。 これは、そんな二人が織りなす、心温まるふれあいの物語。 ※この作品はエブリスタにも掲載しております。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

俺がママになるんだよ!!~母親のJK時代にタイムリープした少年の話~

美作美琴
キャラ文芸
高校生の早乙女有紀(さおとめゆき)は名前にコンプレックスのある高校生男子だ。 母親の真紀はシングルマザーで有紀を育て、彼は父親を知らないまま成長する。 しかし真紀は急逝し、葬儀が終わった晩に眠ってしまった有紀は目覚めるとそこは授業中の教室、しかも姿は真紀になり彼女の高校時代に来てしまった。 「あなたの父さんを探しなさい」という真紀の遺言を実行するため、有紀は母の親友の美沙と共に自分の父親捜しを始めるのだった。 果たして有紀は無事父親を探し出し元の身体に戻ることが出来るのだろうか?

あやかし雑草カフェ社員寮 ~社長、離婚してくださいっ!~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 令和のはじめ。  めでたいはずの10連休を目前に仕事をクビになった、のどか。  同期と呑んだくれていたのだが、目を覚ますと、そこは見知らぬ会社のロビーで。  酔った弾みで、イケメンだが、ちょっと苦手な取引先の社長、成瀬貴弘とうっかり婚姻届を出してしまっていた。  休み明けまでは正式に受理されないと聞いたのどかは、10連休中になんとか婚姻届を撤回してもらおうと頑張る。  職だけでなく、住む場所も失っていたのどかに、貴弘は住まいを提供してくれるが、そこは草ぼうぼうの庭がある一軒家で。  おまけにイケメンのあやかしまで住んでいた。  庭にあふれる雑草を使い、雑草カフェをやろうと思うのどかだったが――。

神送りの夜

千石杏香
ホラー
由緒正しい神社のある港町。そこでは、海から来た神が祀られていた。神は、春分の夜に呼び寄せられ、冬至の夜に送り返された。しかしこの二つの夜、町民は決して外へ出なかった。もし外へ出たら、祟りがあるからだ。 父が亡くなったため、彼女はその町へ帰ってきた。幼い頃に、三年間だけ住んでいた町だった。記憶の中では、町には古くて大きな神社があった。しかし誰に訊いても、そんな神社などないという。 町で暮らしてゆくうち、彼女は不可解な事件に巻き込まれてゆく。

処理中です...